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エリンバ王国

落描き

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遥side

    「みなさん、こんにちは。オルディス・ケルンゲルと申します。今日から皆さんの講師を務めさせていただきます。オルディと呼んで下さい」

   城の二階、日が空の中央で輝いてる頃、召喚の間の部屋より少し広い部屋に俺ら変わり者四人組は集められた。休憩も終わり今から俺らはこの世界を学ぶらしい。
目の前には穏やかに笑っている男の先生。この人が勉強を教える人だそうだ。ちっ、んだよ、女じゃないのかよ。

 女の人じゃないことに少し悪態を吐きながら目の前の先生の容姿を目で確認する。
青色に少しグレーがかった艶っとした綺麗な長めの髪を一つ結びにして右肩の前に出している。顔はにっくきイケメンサマである。これは酷い。目付きは鋭いのに笑ったらそれが垂れるっていうね。睫毛長いな、鼻も高め。嬉しくない設定だなぁ。身長は俺らよりも高い。はい、完璧完璧。
「………なんだろう、遥くん。僕は君にバカにされてる気がするのだが」
「勘違いですよぉー。そんなこと俺がするわけないじゃないですかー(棒)」
したんじゃないよ、考えていただけだよ。

+++++++
「じゃあ、今日はこの世界について知ってもらおうか。そんなに難しくないから大丈夫だよ」
俺らに笑いかけながら俺らの前にある黒板に向かいチョークを使ってこの世界について書いていく先生。変わり者四人組はその姿をまじまじと見ながらも黒板の内容を頭の中に入れていく。スゴいな、この世界。黒板やチョークが普通にあるんだ。あー、でも黒板やチョークも多分前の召喚された人が教えたやつなんだろうなぁ、一応感謝しとこー。
   ていうか、何気にこの四人で勉強するの初めてだな。中学校の時は三クラスあってクラスが全員バラバラで、一緒だったのはなっさんと阿部ちゃんの二人だけだった。
    なっさんと阿部ちゃんが一組。
    久保ちゃんが二組で、俺が三組だったな。
まぁ、んなことどうでもいいんだけど。
「で、この黒板に書いてある通り、この世界はダルンという名前の世界で七人の神様の加護の元に成り立ってい「なっさん絵描いたらダメだって!この世界については真面目にやっとこうよ!」……えーと、阿部くん?田中くん?何をしているの?」
「や、え、えと……」
「何もしてませーん!!」
授業が一旦止められ、先生は変わらない笑顔で阿部ちゃんとなっさんの方へ顔を向ける。阿部ちゃんは先生の方を見るが直ぐに反らし、なっさんは笑顔を先生に向けて大きな声で元気に返事をする。先生は不思議に思いながらも話を続ける。
俺からは久保ちゃんで阿部ちゃんとなっさんの姿はあまりよく見えないが、多分これは……
「なっさん……落描きしちゃだめだってば」
「別に先生気づいてないしいーじゃん」
「だめだってば」
   先生に渡された紙とペン(前の召喚者さんが(ry)を使って田中さんが落描きしてますね。

   先生が黒板に向き合った途端に小声で話始める二人。久保さんは我関せずを貫いて、一人だけメモをとり続けている。
あぁ、座ってる順番は
田中 阿部 久保 俺
と、なっているから久保ちゃんも分かっている筈なんだけどなぁ。関わったら駄目だと思っているんだろうなぁ。

「ネコ耳描けた」
「獣人だー!この世界にもいるのかなぁ?一回は会ってみたいなぁ、可愛いし」
「ちょ、色ぬりたい。色鉛筆とかないの?」
「さすがにそれは無いんじゃないの?」
「いいや、これとっとこう。あ、待って。これ頑張って黒だけでぬってみるわ!」
「おー……頑張れ」

……阿部ちゃんがのまれてしまった。あの人のまれやすいからなぁ、なんだろ、この授業、真面目にやってるやつが一人しかいないな。あ、俺?落描きしてますね。いや、勉強とかつまらないって。金が貰えるなら別だけどもね?貰えないなら意味なくない?
「阿部ちゃん、先生の話を真面目に聞こうよ」
「見て、久保ちゃん。この絵スゴくね?この世界もこんな可愛い獣人がいればいいなぁ」
「可愛いー。相変わらずなっさん絵がめっちゃ上手いねー」
   注意しようとしていた久保ちゃんまでもがのまれていく。はい、結局これで誰一人として聞いていないことになるね!なんだろう先生が凄く可愛そうだ。
   まぁな、前の世界では勉強するのが当たり前だったからな。今は学生じゃなくて勇者だし勉強しなくてもいいもんね。

   暖かい(鬱陶しい)夏の光を窓越しに浴びながら俺らは絵を描いていった。

++++++
「はい、ここまで。今日の授業は終わりです。よく覚えていてくださいね?」

「「「「……はい」」」」

先生から目を全力で反らして小さく返事をする四人。あれからずっと落描きしていたせいでなに一つ話を聞いていなかった。


この世界について知らなくたって生きていけるさ!
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