2 / 2
後編
しおりを挟む
もちろん後には義姉になるものとして、そして将来の陛下を支えるための同志として、どちらかといえば好ましく認識して下さっていることは分かっていましたわ。
けれど、それでは足りない。むしろ他の人の相手としては記憶して欲しくないと思いましたの。
だからといって色仕掛けでもしてこちらを向かせるのは違うでしょう?
まだ色恋ではないとはいえ、あるいは色恋でないからこそ、ご自分の婚約者を大事にしてらっしゃる殿下を評価しております。
その方を捨ててわたくしの方に向いてしまったならば、それはわたくしが好きになった殿下かしら?
ですからこれ以上、あるいは違う形で好かれるわけには参りません。
なのでわたくしは憎まれる事にしましたの。
国をかき回すのは簡単でしたわ。婚約者さまを中枢に実質的に近付ける、ただそれだけ。
些細なわがままが場合によっては些細ではすまないと教えて下さったのは王族の方々ですもの。
次第に婚約者さまを非難する声が高まって行きました。
同時にそれをそそのかしたわたくしの悪評も。
そうそう、その頃は悪女の婚約者に振り回された王子が、真実の愛に出会い悪女を退け、その愛に準ずるために王位を捨てるという物語が流行りましたわ。
これは発禁にはなりませんでした。
この頃からわたくしを切り捨て婚約者さまを何とか助けようという意図があったのでしょう。
陛下は本当に婚約者さまに甘いから。
本来はあなたが彼を切り捨てるべきでしょう?
このような出来事を幾つか経てわたくしは国家反逆罪で捕まることとなりましたの。
そそのかしはしましたが、直接的に手を下してはまだいなかったのですけど。
身に覚えのないことがいくつも上乗せされていっそすがすがしいほどですわ。
きちんと否定はしておいたので、きっと殿下はわたくしの事で思い悩んで下さるでしょう。
その結果冤罪だと露呈する前にと思われたのでしょうね。
あっさりと断頭台に登ることが決定しましたわ。
殿下が反対して下さったかどうか知ることが出来ないのは残念です。
そういう意味では今となっては遠い人です。
けれどもわたくしを忘れることはないと確信しております。
首を切られるのはわたくし一人。婚約者さまは塔で幽閉中だそうです。
幽閉というと罰のようですが、あそこは中の人物を守りやすい場所でもありますから目的はそちらでしょうね。
いずれほとぼりが冷めたなら真実の相手という名の新たな世話係に手を引かれ何処かに向かうのでしょう。
死ぬ時まで婚約者さまに煩わされずにすんで何よりですわ。
婚約者さまを引きずり下ろし、殿下が王位を継ぐことになったことは間違ったことをしたとは思ってません。
巻き込まれた方には悪いとは思いますけれど、わたくしが手を下さなくてもいずれは同じ結果になったか、もっと酷い事になったかのどちらかでしょうから。
そういう意味では貴族として恥じる気持ちはございません。
恥じるとするならば、その行動を感情で行ってしまったことでしょうか?
それを恥と思わなければならなかっただなんてずいぶんと貴族とは窮屈でしたのね。
わたくしはもう巻き添えを恐れた家に縁を切られておりますの。既に貴族ではございません。
最初から貴族でなければ言うことが出来たのでしょうか?
出来れば首切り役人などでなく、日々鍛錬している殿下の剣で殺して頂きたかったのですけれど、そこまではいけませんでしたわ。
わたくしもまだまだですわね、次はありませんけど。
ごぶり、と口からあふれたのは単なる血のはずですけれど。
ずっと言えなかった言葉をやっと形に出来た気がいたしました。
その言葉は――。
---------------------------------
お気に入り数で更新。
けれど、それでは足りない。むしろ他の人の相手としては記憶して欲しくないと思いましたの。
だからといって色仕掛けでもしてこちらを向かせるのは違うでしょう?
まだ色恋ではないとはいえ、あるいは色恋でないからこそ、ご自分の婚約者を大事にしてらっしゃる殿下を評価しております。
その方を捨ててわたくしの方に向いてしまったならば、それはわたくしが好きになった殿下かしら?
ですからこれ以上、あるいは違う形で好かれるわけには参りません。
なのでわたくしは憎まれる事にしましたの。
国をかき回すのは簡単でしたわ。婚約者さまを中枢に実質的に近付ける、ただそれだけ。
些細なわがままが場合によっては些細ではすまないと教えて下さったのは王族の方々ですもの。
次第に婚約者さまを非難する声が高まって行きました。
同時にそれをそそのかしたわたくしの悪評も。
そうそう、その頃は悪女の婚約者に振り回された王子が、真実の愛に出会い悪女を退け、その愛に準ずるために王位を捨てるという物語が流行りましたわ。
これは発禁にはなりませんでした。
この頃からわたくしを切り捨て婚約者さまを何とか助けようという意図があったのでしょう。
陛下は本当に婚約者さまに甘いから。
本来はあなたが彼を切り捨てるべきでしょう?
このような出来事を幾つか経てわたくしは国家反逆罪で捕まることとなりましたの。
そそのかしはしましたが、直接的に手を下してはまだいなかったのですけど。
身に覚えのないことがいくつも上乗せされていっそすがすがしいほどですわ。
きちんと否定はしておいたので、きっと殿下はわたくしの事で思い悩んで下さるでしょう。
その結果冤罪だと露呈する前にと思われたのでしょうね。
あっさりと断頭台に登ることが決定しましたわ。
殿下が反対して下さったかどうか知ることが出来ないのは残念です。
そういう意味では今となっては遠い人です。
けれどもわたくしを忘れることはないと確信しております。
首を切られるのはわたくし一人。婚約者さまは塔で幽閉中だそうです。
幽閉というと罰のようですが、あそこは中の人物を守りやすい場所でもありますから目的はそちらでしょうね。
いずれほとぼりが冷めたなら真実の相手という名の新たな世話係に手を引かれ何処かに向かうのでしょう。
死ぬ時まで婚約者さまに煩わされずにすんで何よりですわ。
婚約者さまを引きずり下ろし、殿下が王位を継ぐことになったことは間違ったことをしたとは思ってません。
巻き込まれた方には悪いとは思いますけれど、わたくしが手を下さなくてもいずれは同じ結果になったか、もっと酷い事になったかのどちらかでしょうから。
そういう意味では貴族として恥じる気持ちはございません。
恥じるとするならば、その行動を感情で行ってしまったことでしょうか?
それを恥と思わなければならなかっただなんてずいぶんと貴族とは窮屈でしたのね。
わたくしはもう巻き添えを恐れた家に縁を切られておりますの。既に貴族ではございません。
最初から貴族でなければ言うことが出来たのでしょうか?
出来れば首切り役人などでなく、日々鍛錬している殿下の剣で殺して頂きたかったのですけれど、そこまではいけませんでしたわ。
わたくしもまだまだですわね、次はありませんけど。
ごぶり、と口からあふれたのは単なる血のはずですけれど。
ずっと言えなかった言葉をやっと形に出来た気がいたしました。
その言葉は――。
---------------------------------
お気に入り数で更新。
0
お気に入りに追加
23
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
私の婚約者を狙ってる令嬢から男をとっかえひっかえしてる売女と罵られました
ゆの
恋愛
「ユーリ様!!そこの女は色んな男をとっかえひっかえしてる売女ですのよ!!騙されないでくださいましっ!!」
国王の誕生日を祝う盛大なパーティの最中に、私の婚約者を狙ってる令嬢に思いっきり罵られました。
なにやら証拠があるようで…?
※投稿前に何度か読み直し、確認してはいるのですが誤字脱字がある場合がございます。その時は優しく教えて頂けると助かります(´˘`*)
※勢いで書き始めましたが。完結まで書き終えてあります。
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。
社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。
対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。
それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。
けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。
…ある大事件が起きるまで。
姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。
両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。
姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。
しかしその少女は噂のような悪女ではなく…
***
タイトルを変更しました。
指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。
あなたを愛するなんて……もう無理です。
水垣するめ
恋愛
主人公エミリア・パーカーは王子のウィリアム・ワトソンと婚約していた。
当初、婚約した時は二人で国を将来支えていこう、と誓いあったほど関係は良好だった。
しかし、学園に通うようになってからウィリアムは豹変する。
度重なる女遊び。
エミリアが幾度注意しても聞き入れる様子はなく、逆にエミリアを侮るようになった。
そして、金遣いが荒くなったウィリアムはついにエミリアの私物に手を付けるようになった。
勝手に鞄の中を漁っては金品を持ち出し、自分の物にしていた。
そしてついにウィリアムはエミリアの大切なものを盗み出した。
エミリアがウィリアムを激しく非難すると、ウィリアムは逆ギレをしてエミリアに暴力を振るった。
エミリアはついにウィリアムに愛想を尽かし、婚約の解消を国王へ申し出る。
するとウィリアムを取り巻く状況はどんどんと変わっていき……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる