叶わぬ夢を見たけれど

こうやさい

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恐らく途中で放置されます

思わぬ展開だったけど 後編

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 もちろん殿下と結婚したいとは欠片も思ってませんわ。
 けれどその方が陛下の役に立つのなら喜んで……とはさすがにもういえませんが結婚するべきなんでしょう。
「いや」
 陛下が軽く首を振って否定する。
「望まない」
「そうですか」
 自分から言い出しておいて情けない話ですが、否定してくださって安堵しました。
 殿下と結婚せずにすんだことも、陛下が為政者として以外の立場を取ったことも。
 後者は微妙な部分はありますが、乙女心とはそういうものですから。

「そもそも殿下が承知なさいませんでしょうし」
 ここで陛下が今までより更に難しい表情になった。
「……息子が渋っていると言ったが」
「はい」
 その後わたくしが話を横にそらせてしまいましたものね。
「たぶん裏には君が言ったような理由もあるのだろうが」
 どれでしょう? やはり複合でしょうか?
「口にした理由は君は自分の婚約者だと」

「はい?」
 思いがけないことを言われ思わず首をかしげます。
「あの、息子というのは先日わたくしに婚約破棄を突きつけた殿下で間違いないでしょうか?」
 別に陛下に隠し子がいるとは思っていませんが思わず聞いてしまいます。
「幸か不幸か息子は一人しかいない」
 頭を抱えたそうな声音で返ってくる。……それわたくしが隠し子を疑うような発言をしたせいではないですよね?
「……婚約破棄されたと思っていたのは勘違いだったのでしょうか?」
 だとしてもわたくしでは殿下の妃にはなれませんわね、ここまで言葉が通じないのでは日常生活どころか儀式に支障が出ますもの。
「……報告を聞く限り誰が見ても暴言だと判断するだろうし、婚約破棄をしたと考えるだろう。万一違ってもそう思った人を責められない状況なので君の方から解消を望んだとしてもしたとしても誰も疑問に思わないだろう」
 公式の場ではないとはいえそこまでおっしゃられるということは、少なくともわたくしの頭だけが悪いと言うことはないんですのね。

「けれど何故そんな事を?」
 少なくともあの時彼女の方をかばった以上気持ちはそちらにあるのでしょうし。
 ……それともあの後お断りを受けたのでしょうか? 彼女に出来るとは思えませんけど。
「恐らく他人のものになると思うと惜しくなったと」
 ……こういう感情をドン引きというのですのね。
 確かに失いかけて気づくなんて良くある話と思っていますが、あそこまでやっておいてそんな事を言い出しても醜いだけですわ。
「それに口で破棄と言ったところで許可が出ないと考えたらしい」
 ……確かに殿下の独断だろうとは思っていましたが、あれだけ大勢の前でやって覆せるはずがないでしょう?
「……そして確かにまだ正式に承認はされていない」
 確か会議があるんでしたわよね。陛下のご結婚もその会議での許可が必要なのでしたっけ?

「会議だが、まず君の婚約を解消しなければ私との婚約は出来ない訳だから、当然息子の話を先にする事になる」
 それはそうなるでしょうね。
「根回しをされる危険性はあるが、無駄に会議が長引いても支障が出るので参加者には事前に資料を渡してある。会議ではそれに齟齬が有った場合の訂正と決議をする。それでもすんなり決まるものではないが」
 確かにそう習いましたわ。
「要するに今回はその齟齬が大きすぎた。息子が婚約を破棄したという前提で作られた資料がなんの役にも立たなくなった。正確には本当に破棄したことにするのかどうかの会議になった」
 さすがにあれは誤魔化しようがないと思いますけれど。
「他の人もいろいろ考えていたのだろうが、今回のことで迂闊に結論を出せなくなったらしい」
 傷が付いた娘をどうすれば陛下と結婚させずにすむかが下手をすれば親子の対立に巻き込ますもの。わたくしだって他人事でしたら意見を保留にしますわ。
 ……それはそれとして恐らく他の女性はそれでも勧められたのでしょうけれど。
 おっしゃらないなら聞かないでおきますわ。

殿
 当事者なのに会議に保護者すら喚ばれないくらいですから本来ならば身分的に難しいけれど、誰も疑問に思わないのなら出来るはず。
 そしてそうすれば殿下との婚約解消は会議にかけられる。
 かかればあそこまで言った殿下は不利になるでしょう。
「もちろんだ」
 ……どこか陛下の機嫌が良くなったように感じましたけれど、気のせいですわよね。
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