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恐らく途中で放置されます
きっと信じたいのだけれど
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さて、ある意味で殿下とお相手とに話をつけたわけですけれど、さらし者なのは変わりありませわね。
遠くの方で中途半端にひそひそと話しているのが聞こえますわ。聞かせたいのか隠し切れていないのかどちらでしょう?
わたくしの方はとにかくお相手扱いされた方の方は訂正した方がいいのでしょうけれど、どの辺りの人から訂正すればいいかしら?
上の方で正式に否定しても裏で広がるだけでしょうし。
普段なら身近なお友達からとなりますけれど、今は簡単にはできませんわ。
「わたくしのお友達」なのか「殿下の婚約者のお友達」なのかで意味がまるで違ってきますもの。
今まではそこまで厳密に考えなくて良かったんですけれど、「殿下の婚約者のお友達」にお相手扱いされた方は殿下の恋人ではないと説明したところでそれこそ影で嫉妬かいじめだと捏造されて、こちらへの攻撃材料にされかねませんわ。そこまで高位でないとはいえ家にまで悪影響が出たらたまりませんもの。
そういう意味では利用価値がなくなったと去って行ってくれる方は寂しいけど楽ですわね。もちろん覚えておきますわ。
その区別が付かないということはわたくしが人付き合いをないがしろにしていたということかしら?
本来なら殿下の婚約者なんてやっていたらその辺の見る目は自然と磨かれるはずなんですけど。
今回も含めて誰も奪いに来ませんでしたもの。
傷物にされるだけされて捨てられるなんて貴族には致命的ですものね。……結果論ですけどこうして婚約破棄されている訳ですし。
けれど立場を利用しようとする方を見抜けないのはこちらの未熟ですわ。
これから更にややこしくなる可能性もありますし、見極めないと。
「ごきげんよう」
「あら、ごきげんよう」
そんな中いつものように挨拶をしてきたのは、初対面で「あなたが殿下の婚約者?」と声をかけてきた方です。
やっと殿下のお守りを押しつけられる……いえ、殿下を愛して下さる方が表れたのかと思ったら、あの評判の殿下と婚約する女性がどんなのか純粋に興味があったとのこと。
……どうしてそれで友人になったのか今少し不思議になって来ましたわ。やたらと彼女が声をかけてきたからですけど。
ちなみに家柄は彼女の方が上です。
そのうち気が合うことも分かりましたし、大切なお友達だと思ってましたわ。
それで彼女はどちらと考えればいいでしょう? これからも大切なお友達でいて下さるのかしら?
少なくとも殿下の婚約者だと知っていて声をかけてきたのは確かでしょう。
けれど今皆がこちらを注目している中で声をかけて下さったのも確かなのですよね。
様子を見るためだったとしても、真っ先に声をかければ記憶に残りやすい。
無関係な人にはこちらの味方と思われるはず。
ならばそれを避けない以上、味方である可能性が――。
いいえ、言い訳ですわね。理屈なんてどうにでもつきますもの、特に主観に近い理屈は。
ただわたくしがお友達であると信じたいだけですわ。
殿下のことを言えませんわね、もっと慎重にならなければいけませんのに。
騙されてもいいと思うには、巻き込まれるものが多すぎますもの。
見極めるまで迂闊な事は言えませんわ。
……本当は殿下の事以外にも報告というか相談というかをしたいのですが。
黙っていたとしても本当に友達ならば理解して下さる事態だとは思いますけど。
想定していたよりもきついですわね。誰かに迂闊に相談できないことも、友達と思っている方を疑うことも。
「大丈夫です?」
彼女が口を開いた途端、ひそひそがピタリと止んだ。
「……何がです?」
たぶん正解はこれでしょう。先に返事して違う事について尋ねていたことにされては困りますし。
それに何についてだったとしても駄目だとは恐らく言えないでしょう。
ただ彼女は何時も心配して下さるので発言に裏があるかどうかが本当に分かりません。
彼女も高位貴族であるなら迂闊な発言にどれだけ足を掬われるか知っています。
けれど高位貴族だからこそ、こんな誰が聞いているか分からないところで出す話題を選ぶだけの分別はあるでしょう。
その気になれば表情一つ変えずそれをする事も出来るでしょうが。
……本当は陛下はこういう方と再婚なさった方がいいんでしょうね。
きっと良く支えてあげられるでしょう。
わたくしは王妃教育を受けている分だけ有利だけれど、ただそれだけ。
婚約破棄でそんな利点は意味を成さなくなりましたし、破棄されたということはそもそも出来ていなかったと言うことですし。
それがなかったとしても、王妃教育ぐらい彼女ならすぐにこなせるようになるでしょう。
いやだ、無駄に疑った上に嫉妬まで。
わたくしは本当に信じたいと思っているのでしょうか。
それとも思った以上に婚約破棄が応えていたのでしょうか。
好きな相手からではなくとも否定されたことには変わりませんものね。
本心をいうならはしばらくは「大丈夫」とは言えないでしょう。
自分で思っていた以上に突発事態に弱かったようです。
陛下の事だけ考えていられた日々は実は幸せだったのかもしれません。
けれどそれは人形相手にごっこ遊びをするような幸せなのでしょう。
---------------------------------
書きため怪しいのと、この辺りの時期に出しとけっていわれるのあったの思い出したので(けどこれ出して大丈夫か?)次回更新は未定です。更新後24時間経っても2000越えなきゃやめていいともいわれてるしね、調子戻らないうちは。
てかそろそろ週一にペース戻そうかなぁ。
遠くの方で中途半端にひそひそと話しているのが聞こえますわ。聞かせたいのか隠し切れていないのかどちらでしょう?
わたくしの方はとにかくお相手扱いされた方の方は訂正した方がいいのでしょうけれど、どの辺りの人から訂正すればいいかしら?
上の方で正式に否定しても裏で広がるだけでしょうし。
普段なら身近なお友達からとなりますけれど、今は簡単にはできませんわ。
「わたくしのお友達」なのか「殿下の婚約者のお友達」なのかで意味がまるで違ってきますもの。
今まではそこまで厳密に考えなくて良かったんですけれど、「殿下の婚約者のお友達」にお相手扱いされた方は殿下の恋人ではないと説明したところでそれこそ影で嫉妬かいじめだと捏造されて、こちらへの攻撃材料にされかねませんわ。そこまで高位でないとはいえ家にまで悪影響が出たらたまりませんもの。
そういう意味では利用価値がなくなったと去って行ってくれる方は寂しいけど楽ですわね。もちろん覚えておきますわ。
その区別が付かないということはわたくしが人付き合いをないがしろにしていたということかしら?
本来なら殿下の婚約者なんてやっていたらその辺の見る目は自然と磨かれるはずなんですけど。
今回も含めて誰も奪いに来ませんでしたもの。
傷物にされるだけされて捨てられるなんて貴族には致命的ですものね。……結果論ですけどこうして婚約破棄されている訳ですし。
けれど立場を利用しようとする方を見抜けないのはこちらの未熟ですわ。
これから更にややこしくなる可能性もありますし、見極めないと。
「ごきげんよう」
「あら、ごきげんよう」
そんな中いつものように挨拶をしてきたのは、初対面で「あなたが殿下の婚約者?」と声をかけてきた方です。
やっと殿下のお守りを押しつけられる……いえ、殿下を愛して下さる方が表れたのかと思ったら、あの評判の殿下と婚約する女性がどんなのか純粋に興味があったとのこと。
……どうしてそれで友人になったのか今少し不思議になって来ましたわ。やたらと彼女が声をかけてきたからですけど。
ちなみに家柄は彼女の方が上です。
そのうち気が合うことも分かりましたし、大切なお友達だと思ってましたわ。
それで彼女はどちらと考えればいいでしょう? これからも大切なお友達でいて下さるのかしら?
少なくとも殿下の婚約者だと知っていて声をかけてきたのは確かでしょう。
けれど今皆がこちらを注目している中で声をかけて下さったのも確かなのですよね。
様子を見るためだったとしても、真っ先に声をかければ記憶に残りやすい。
無関係な人にはこちらの味方と思われるはず。
ならばそれを避けない以上、味方である可能性が――。
いいえ、言い訳ですわね。理屈なんてどうにでもつきますもの、特に主観に近い理屈は。
ただわたくしがお友達であると信じたいだけですわ。
殿下のことを言えませんわね、もっと慎重にならなければいけませんのに。
騙されてもいいと思うには、巻き込まれるものが多すぎますもの。
見極めるまで迂闊な事は言えませんわ。
……本当は殿下の事以外にも報告というか相談というかをしたいのですが。
黙っていたとしても本当に友達ならば理解して下さる事態だとは思いますけど。
想定していたよりもきついですわね。誰かに迂闊に相談できないことも、友達と思っている方を疑うことも。
「大丈夫です?」
彼女が口を開いた途端、ひそひそがピタリと止んだ。
「……何がです?」
たぶん正解はこれでしょう。先に返事して違う事について尋ねていたことにされては困りますし。
それに何についてだったとしても駄目だとは恐らく言えないでしょう。
ただ彼女は何時も心配して下さるので発言に裏があるかどうかが本当に分かりません。
彼女も高位貴族であるなら迂闊な発言にどれだけ足を掬われるか知っています。
けれど高位貴族だからこそ、こんな誰が聞いているか分からないところで出す話題を選ぶだけの分別はあるでしょう。
その気になれば表情一つ変えずそれをする事も出来るでしょうが。
……本当は陛下はこういう方と再婚なさった方がいいんでしょうね。
きっと良く支えてあげられるでしょう。
わたくしは王妃教育を受けている分だけ有利だけれど、ただそれだけ。
婚約破棄でそんな利点は意味を成さなくなりましたし、破棄されたということはそもそも出来ていなかったと言うことですし。
それがなかったとしても、王妃教育ぐらい彼女ならすぐにこなせるようになるでしょう。
いやだ、無駄に疑った上に嫉妬まで。
わたくしは本当に信じたいと思っているのでしょうか。
それとも思った以上に婚約破棄が応えていたのでしょうか。
好きな相手からではなくとも否定されたことには変わりませんものね。
本心をいうならはしばらくは「大丈夫」とは言えないでしょう。
自分で思っていた以上に突発事態に弱かったようです。
陛下の事だけ考えていられた日々は実は幸せだったのかもしれません。
けれどそれは人形相手にごっこ遊びをするような幸せなのでしょう。
---------------------------------
書きため怪しいのと、この辺りの時期に出しとけっていわれるのあったの思い出したので(けどこれ出して大丈夫か?)次回更新は未定です。更新後24時間経っても2000越えなきゃやめていいともいわれてるしね、調子戻らないうちは。
てかそろそろ週一にペース戻そうかなぁ。
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