ずっと傍にいる

こうやさい

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言いたかった言葉

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「大きくなったらお父さんと結婚する」

 いつか聞いたような言葉を彼女が言う。
 初めての訳でなし、本当に子供がいうことに過ぎないので軽くながすべきなのだが、反射的に言葉に詰まる。
「お父さん?」
 不思議そうに見つめられる。
 以前もこんな表情をされた気がする。その時はどうしたのだったろうか?
 確かはぐらかした気がする。
 ならば今回も……。

「――そうだね」
 けれど、ようやく出たのは同意とも相づちとも取れる言葉で。
「やったぁ」
 それを彼女は単純に喜ぶ。その態度が何も分かっていないと示している。

 ……その程度のことなのだ。
 詰まる方がどうかしている。
 実の父娘でもするような話だし、その時どれだけ本気だったとしても、時が経てば忘れるか思い出話になるような話だ。
 どんな言葉を言ったとしても、周りが歳を取らないことを気味悪がり始めれば、あるいは彼女が不審がり始めれば。
 そして彼女が結婚してしまえば。
 どのみち終わってしまう事だ。
 なのに、それを過剰に受け取ってしまっていた。

 それに叶わない夢があると知るにはまだ若すぎる。
 なのにそれが出来なかった過去に、今更ながら罪悪感を持つ。

「ずっと、一緒にいよう」

 ……けれどそれでも冗談として発した言葉は。
 自分が言いたかったもののような気がした。
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