ずっと傍にいる

こうやさい

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あるいは終わり

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 上掛けの更に上、待っているうちに寝落ちしたのであろう彼女の頭が乗っている。もしや相当の時間が経っているのだろうか?
 父親がいきなり倒れた驚きとはどれほどのものだろう?
 あの時、先にこちらが死んでしまったときはもっと驚かせただろうか?

 がここにいるのは恐らくあの時望んだからだろう。

 向こうには怨霊も祀れば神になるという概念がある。
 その成った神が、過去に犠牲にしたものを思い出し、あるいは気まぐれに、一部なりとも償おうとすればどうなるだろうか?
 ……幾ら神になったといえど元怨霊に人を生き返らせたりする力はないだろう。
 けれど、輪廻転生は向こうでは普通にある概念で。
 生まれ変わらせて叶えようと考える可能性はある。

 そして生まれ変わった。ただし何の因果が別の世界で。
 元の世界でも無茶だろうのに、世界が違えば、あるいは世界を渡れば狂うものもあろう。
 想定する状況にならないことも。
 力が上手く届かないことも。
 それでも無理矢理叶えてしまえば更に歪む。

 きっと僕は彼女が生まれるより早く、あまりにも早く生まれすぎていた。
 次の転生に願いを持ち越せない、あるいはこちらに生まれてしまえばもう転生出来ないとしたら。
 彼女が生まれるまで、もう一度会えるまで僕を生かすしかないだろう。

 そしてこれはうぬぼれだけれども。
 一度目に彼女が『ずっと傍にいさせて』と望んだように、前世でももっと傍にいたいと望んでくれていたのだろう。
 そして神が償いをしようとしたならば、僕と一緒にいられるようにしようとするだろう。
 こちらの望みとも一致する訳だし。

 本来ならばずっとといえど生まれ変わって出会い直して今度こそ結ばれて、穏やかに時を重ねて終わりを迎える。
 あるいはもう一緒にいたくないと思い始めるまで程度を想定していたのだろうが。
 僕が無駄に時を重ねて、そして異常性を抱えてしまって。
 あまりにも年齢としが離れた、そして追い越していくと思っていた彼女を恋人として受け入れることが出来なくて。
 事情に巻き込むことをはばかれて。
 化け物だと彼女に思われたくなくて。
 そして彼女も化け物だと思われたくなくて。
 無駄に抵抗して、その結果父親としてふるまおうとしたのがいけなかったのだろう。
 傍にはいたいけれども、娘ならばいつか父親の手から離れるものだし、傍にいる時期が一時期ならば少しは気づかれにくい。

 けれどそれではには足りない。

 一度目はあるいは事故みたいなものといえなくないものだったのかもしれない。
 それで足りなくなった時間を補うために、もう生まれ変われない彼女は若返ったのだろう。
 頑なに父親と言い続けたから、一緒にいるために娘として子供の時間をくり返すのだろう。
 そして娘でいるために一般的なよくあることとして……いや、僕が長期間一緒にいられないと思っているからこそ、離れる理由として嫁に行ってしまうのだろう。一人放り出すのはそれはそれで耐えられそうもないわけたし。
 けれど娘としてそのかたちでは願いが完全に満たされる事はない。


 潮風に当てられたせいで見たただの長い夢と、それを元にしたただの妄想なのかもしれない。
 けれどそう思えてならない。

 僕はとっくに愛しているけれど、彼女は今回も僕を父親としか思っていない。
 信じて育てられているのにそんな感情を向けられては、ただ追い詰めるだけだろう。

 それでも傷つけたい訳でもない。

 それとも、そうやって傷つければすべてを終わりに出来るだろうか?
 もしこの状況が彼女次第だとしたら。

 その決心はまだ付きそうにない。
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