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すべての始まり
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「わーっ」
彼女が子供らしくベタな歓声を上げる。
「これが海……」
その言葉に同意しながらも、僕は引っかかりを覚えていた。
なぜか、懐かしいと感じた。
さすがに物心つく前のことは覚えていないが、そこで生まれたはずの育った村は内陸にあったし、それ以前に遠い場所から移住していたとしても、そんな感慨の土台が出来る年齢ではないだろう。
彼女と出会ってからは、そこまで彼女の近くを離れたことはなく、若返った直後には元の場所から距離を取るが、その後の移動はゆっくりか、同じ場所にとどまる事すら有った。さすがに不審がられることが増えれば離れるが、多少ならばその日の体調や服装のせいと誤魔化せると分かる程度には慣れた。
つまり、海に来たのは初めてのはずだ。
話を聞いて憧れた記憶すらない。海の存在自体村を出るまで知らなかったほどだ。
なのにどんどんと懐かしさが去来してくる。
ただただ困惑する。
そんなこちらの様子に気づかず彼女ははしゃいで……いなかった。
心配させたかと思ったが、彼女は僕を見ていない。
顔は海の方を向いているが、どこか遠くを、あるいはどこも見ていないようなまなざしは、成長した、いつかの結婚する直前よりも、よほど彼女を大人びて見せた。
いや、どこかでその姿を見たことがある。
体に力が入らず崩れ落ちる。
気づいた彼女がこちらに駆け寄ってくる。
そうしてかけられた言葉が、何か違うものに聞こえた。
波音を子守歌に、夢を見ていた。
僕は海に囲まれた島国で拝み屋をしていて。
親に引き合わされた、けれど愛しく思っている妻夫になる約束している娘もいた。
拝み屋は何もなければ儀式だけをしている場合によっては嘘くさい職業だが、当時村では怨霊が出るとそこそこ忙しい日々を送っていた。
ある日、生贄を捧げようとのことになり、それに許婚が選ばれた。
それを公に覆すことが出来ず、思いあまって一人怨霊に突っ込んでいった。
そして不覚を取った。
当然だろう、なんとか出来ているのなら生贄なんて話が出るはずがない。
最後に会いたいと思ったことを覚えている。
目を覚まして、それで魔法が村にいた他の人より使えるようになったのかと妙な納得をした。
特に周りに基本以上の魔法使いの居ないような村では、才能があっても発露のさせ方すら分からずに終わりそうなものなのに。
種類は違えど、異能を駆使した経験が生きたのだろう。
あれは、自分の前世だと素直に理解した。
こちらで生きた時間が長すぎて、前世に呑まれるような気配もないし、すでに異物を抱えた感覚もない。
あの場所がどこにあるかは分からない。もしかしたら、いやおそらく世界すら違うのかもしれない。
あの後、許婚は結局生贄にされてしまったのだろうか?
拝み屋に関わっていなければ真っ先に生贄に選ばれることもなかっただろうのに。
それでも最後までその存在を望んでしまったのだから罪深い。
だから、こんなことになってしまったのだろう。
彼女が子供らしくベタな歓声を上げる。
「これが海……」
その言葉に同意しながらも、僕は引っかかりを覚えていた。
なぜか、懐かしいと感じた。
さすがに物心つく前のことは覚えていないが、そこで生まれたはずの育った村は内陸にあったし、それ以前に遠い場所から移住していたとしても、そんな感慨の土台が出来る年齢ではないだろう。
彼女と出会ってからは、そこまで彼女の近くを離れたことはなく、若返った直後には元の場所から距離を取るが、その後の移動はゆっくりか、同じ場所にとどまる事すら有った。さすがに不審がられることが増えれば離れるが、多少ならばその日の体調や服装のせいと誤魔化せると分かる程度には慣れた。
つまり、海に来たのは初めてのはずだ。
話を聞いて憧れた記憶すらない。海の存在自体村を出るまで知らなかったほどだ。
なのにどんどんと懐かしさが去来してくる。
ただただ困惑する。
そんなこちらの様子に気づかず彼女ははしゃいで……いなかった。
心配させたかと思ったが、彼女は僕を見ていない。
顔は海の方を向いているが、どこか遠くを、あるいはどこも見ていないようなまなざしは、成長した、いつかの結婚する直前よりも、よほど彼女を大人びて見せた。
いや、どこかでその姿を見たことがある。
体に力が入らず崩れ落ちる。
気づいた彼女がこちらに駆け寄ってくる。
そうしてかけられた言葉が、何か違うものに聞こえた。
波音を子守歌に、夢を見ていた。
僕は海に囲まれた島国で拝み屋をしていて。
親に引き合わされた、けれど愛しく思っている妻夫になる約束している娘もいた。
拝み屋は何もなければ儀式だけをしている場合によっては嘘くさい職業だが、当時村では怨霊が出るとそこそこ忙しい日々を送っていた。
ある日、生贄を捧げようとのことになり、それに許婚が選ばれた。
それを公に覆すことが出来ず、思いあまって一人怨霊に突っ込んでいった。
そして不覚を取った。
当然だろう、なんとか出来ているのなら生贄なんて話が出るはずがない。
最後に会いたいと思ったことを覚えている。
目を覚まして、それで魔法が村にいた他の人より使えるようになったのかと妙な納得をした。
特に周りに基本以上の魔法使いの居ないような村では、才能があっても発露のさせ方すら分からずに終わりそうなものなのに。
種類は違えど、異能を駆使した経験が生きたのだろう。
あれは、自分の前世だと素直に理解した。
こちらで生きた時間が長すぎて、前世に呑まれるような気配もないし、すでに異物を抱えた感覚もない。
あの場所がどこにあるかは分からない。もしかしたら、いやおそらく世界すら違うのかもしれない。
あの後、許婚は結局生贄にされてしまったのだろうか?
拝み屋に関わっていなければ真っ先に生贄に選ばれることもなかっただろうのに。
それでも最後までその存在を望んでしまったのだから罪深い。
だから、こんなことになってしまったのだろう。
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