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どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな
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ただいまわたくしは修道院におります。
というのも、どうも「ざまぁ」とやらをされてしまったようなのです。
「ざまぁ」というのは、誰かの悪行が表沙汰になり報いを受けその様子を見て溜飲がさがる感情を表現した言葉を更に省略したものだとどこかで聞いたことがあるのですけれど、他にも意味があるのかしら?
けれど冤罪とはいえ断罪をされたのだからあっているのかしら?
「ざまぁ」とやらをされる前日のことです。
数年前の父の再婚で出来た義妹に「あんたなんか明日『ざまぁ』されるんだから!!」と叫ばれまして。
以前から義妹とは意思の疎通がうまく出来ず、距離を取っておりました。歩み寄る努力をしなかったという意味では、その怠慢は確かに罪だったかもしれませんわね。
とにかくまた意味が分からないことを言っていると思い、流しました。
そして迎えたその日は学園の卒業式。わたくしは在校生ですけれど、婚約者である殿下とお兄さまは今日で学園を卒業なさいます。
おごそかに進行する式の最中、卒業生代表として壇上に昇った殿下は、いろいろ無視してわたくしを壇上に呼び出されまして。
そこになぜか義妹と国の重鎮の子息さま方もやって参りました。
式を中断して何をなさる気かと思わず遠い目をしましたら視界の端にお兄さまが頭を抱えている姿が見えました。
身内が二人もこの状況で壇上にいればそうなりますわね。わたくしも出来れば一緒に頭を抱える方に回りたかったです。
その間に義妹は殿下の斜め後ろに、子息さま方はその義妹を中心に緩く弧を描く位置に立ちわたくしをにらんでいます。
殿下曰く、わたくしは義妹を酷くいじめていたそうです。
証拠や目撃者はございますかと尋ねましたが、家でやられたと義妹が証言している、なので学園での目撃者はいないの一点張りで、周りに聞きすらいたしません。これはよくも悪くも余計な事は言うなという意味ですわよね?
そもそも家庭内のことだというならなぜわざわざ学園で他人にこんな風につるし上げをされる必要があるのかしら?
お兄さまに証言して貰いたい気持ちとそれでもこれ以上巻き込まないほうがいいかと悩む気持ちとの間で葛藤していたところ、考えを読まれたらしく、身内の証言は事実とは認められないとおっしゃられまして。
でしたら義妹の証言だけを信用するのもおかしいと思うのですけど。
政略とはいえ婚約者たろうとして努力をしていたつもりでしたが、やっぱり無理でしたわね。好意も尊敬もない以上どれだけ表面を整えようとも薄っぺらかったのでしょう。
なので義妹に対するのと同じように聞き流していましたら、あれよあれよという間にわたくしが他にもいろいろ悪いことになり、殿下はわたくしとの婚約を破棄して義妹と婚約する、そしてわたくしは学園から追放して貴族令嬢を閉じ込めるためにあると暗黙で知られている修道院に送るとおっしゃいまして。
殿下が義妹と婚約すると言った瞬間、周りの子息さま方の視線が一斉にわたくしから離れ殿下の方を向いたのは圧巻でしたわ。
こうして式は滅茶苦茶になり、無関係な者には後日に式をやり直すと通達され、その日は関係者だけ残されて王宮に連れて行かれました。
……わたくしは殿下の言葉を盾にとって、さっさと修道院に逃げましたけれど。だって残ってもうっとうしいことになるのは目に見えていましたもの。
苦労するであろうお兄さまには負い目を感じますけれど、わたくしがいようといまいと義妹がいる以上、どちらにしろ逃れるのは無理でしょうから諦めてくださいませ。
こうして「ざまぁ」されて修道院に送られた「悪役令嬢」とやらが出来上がりました。
「悪役令嬢」も妹が言っていた言葉です。別に演じたつもりはないのですけれど?
半ば自ら向かった場所とはいえ修道院はつら……きびし……さみし……。
すみませんお兄さま、辛くも厳しくもさみしくもない場所でした。
確かに戒律やら規律やらはありますし、したことがない奉仕活動などは戸惑いましたが。
大変さの方向は違いますけれど王妃教育の方がずっときついんですもの、やる気も起こりませんでしたし。
厳しい規律は、つまり基準があるという事ですから、わたくしが考えなくていいということ。
わたくしに忖度して何も言わない方の意見をくみ取る必要もないですし、何を言っても規律を破ることはさせてもらえませんから発言に今までほど気を遣う必要もありませんの。
何よりここは貴族の血を引く女性が本当に犯罪を犯して送られる場所でも、邪魔になったからと罪がなくとも追いやられる場所でもありますから。
常識的な方はお約束として前歴は問わない、他人の立場や状況を知っていても言わないことになっていまして、そもそも忖度自体されません。
なのでお友達は自分で性格や行動を見てなりたいかどうか選べますの。
わたくし、家目当てではないお友達が出来たのは初めてではないかしら。
中にはそれでも俗世に、結婚に未練のある方もいらっしゃいますけれど。
少なくともわたくしはもう結婚には夢は持てませんもの。
ですので休暇を楽しんでいるような気分です。
なのにどうして義妹が送られて来てしまうのかしら?
いえ、「ざまぁ」されたんでしょうね程度の予想はつきますけれど。
だからといってわたくしを呼び戻そうとしないで下さいませ。
わたくしはこの生活が気に入っておりますの。
なので皆様、どうぞわたくしへの「ざまぁ」を続けてくださいな。
というのも、どうも「ざまぁ」とやらをされてしまったようなのです。
「ざまぁ」というのは、誰かの悪行が表沙汰になり報いを受けその様子を見て溜飲がさがる感情を表現した言葉を更に省略したものだとどこかで聞いたことがあるのですけれど、他にも意味があるのかしら?
けれど冤罪とはいえ断罪をされたのだからあっているのかしら?
「ざまぁ」とやらをされる前日のことです。
数年前の父の再婚で出来た義妹に「あんたなんか明日『ざまぁ』されるんだから!!」と叫ばれまして。
以前から義妹とは意思の疎通がうまく出来ず、距離を取っておりました。歩み寄る努力をしなかったという意味では、その怠慢は確かに罪だったかもしれませんわね。
とにかくまた意味が分からないことを言っていると思い、流しました。
そして迎えたその日は学園の卒業式。わたくしは在校生ですけれど、婚約者である殿下とお兄さまは今日で学園を卒業なさいます。
おごそかに進行する式の最中、卒業生代表として壇上に昇った殿下は、いろいろ無視してわたくしを壇上に呼び出されまして。
そこになぜか義妹と国の重鎮の子息さま方もやって参りました。
式を中断して何をなさる気かと思わず遠い目をしましたら視界の端にお兄さまが頭を抱えている姿が見えました。
身内が二人もこの状況で壇上にいればそうなりますわね。わたくしも出来れば一緒に頭を抱える方に回りたかったです。
その間に義妹は殿下の斜め後ろに、子息さま方はその義妹を中心に緩く弧を描く位置に立ちわたくしをにらんでいます。
殿下曰く、わたくしは義妹を酷くいじめていたそうです。
証拠や目撃者はございますかと尋ねましたが、家でやられたと義妹が証言している、なので学園での目撃者はいないの一点張りで、周りに聞きすらいたしません。これはよくも悪くも余計な事は言うなという意味ですわよね?
そもそも家庭内のことだというならなぜわざわざ学園で他人にこんな風につるし上げをされる必要があるのかしら?
お兄さまに証言して貰いたい気持ちとそれでもこれ以上巻き込まないほうがいいかと悩む気持ちとの間で葛藤していたところ、考えを読まれたらしく、身内の証言は事実とは認められないとおっしゃられまして。
でしたら義妹の証言だけを信用するのもおかしいと思うのですけど。
政略とはいえ婚約者たろうとして努力をしていたつもりでしたが、やっぱり無理でしたわね。好意も尊敬もない以上どれだけ表面を整えようとも薄っぺらかったのでしょう。
なので義妹に対するのと同じように聞き流していましたら、あれよあれよという間にわたくしが他にもいろいろ悪いことになり、殿下はわたくしとの婚約を破棄して義妹と婚約する、そしてわたくしは学園から追放して貴族令嬢を閉じ込めるためにあると暗黙で知られている修道院に送るとおっしゃいまして。
殿下が義妹と婚約すると言った瞬間、周りの子息さま方の視線が一斉にわたくしから離れ殿下の方を向いたのは圧巻でしたわ。
こうして式は滅茶苦茶になり、無関係な者には後日に式をやり直すと通達され、その日は関係者だけ残されて王宮に連れて行かれました。
……わたくしは殿下の言葉を盾にとって、さっさと修道院に逃げましたけれど。だって残ってもうっとうしいことになるのは目に見えていましたもの。
苦労するであろうお兄さまには負い目を感じますけれど、わたくしがいようといまいと義妹がいる以上、どちらにしろ逃れるのは無理でしょうから諦めてくださいませ。
こうして「ざまぁ」されて修道院に送られた「悪役令嬢」とやらが出来上がりました。
「悪役令嬢」も妹が言っていた言葉です。別に演じたつもりはないのですけれど?
半ば自ら向かった場所とはいえ修道院はつら……きびし……さみし……。
すみませんお兄さま、辛くも厳しくもさみしくもない場所でした。
確かに戒律やら規律やらはありますし、したことがない奉仕活動などは戸惑いましたが。
大変さの方向は違いますけれど王妃教育の方がずっときついんですもの、やる気も起こりませんでしたし。
厳しい規律は、つまり基準があるという事ですから、わたくしが考えなくていいということ。
わたくしに忖度して何も言わない方の意見をくみ取る必要もないですし、何を言っても規律を破ることはさせてもらえませんから発言に今までほど気を遣う必要もありませんの。
何よりここは貴族の血を引く女性が本当に犯罪を犯して送られる場所でも、邪魔になったからと罪がなくとも追いやられる場所でもありますから。
常識的な方はお約束として前歴は問わない、他人の立場や状況を知っていても言わないことになっていまして、そもそも忖度自体されません。
なのでお友達は自分で性格や行動を見てなりたいかどうか選べますの。
わたくし、家目当てではないお友達が出来たのは初めてではないかしら。
中にはそれでも俗世に、結婚に未練のある方もいらっしゃいますけれど。
少なくともわたくしはもう結婚には夢は持てませんもの。
ですので休暇を楽しんでいるような気分です。
なのにどうして義妹が送られて来てしまうのかしら?
いえ、「ざまぁ」されたんでしょうね程度の予想はつきますけれど。
だからといってわたくしを呼び戻そうとしないで下さいませ。
わたくしはこの生活が気に入っておりますの。
なので皆様、どうぞわたくしへの「ざまぁ」を続けてくださいな。
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