4 / 5
-4-
しおりを挟む
「魔法?」
頭が回らないせいもあって、それしか思いつかない。
「そうだよ」
あっさりと肯定された。
……たぶん、この辺りのヤツらが使えるようになったら散々もったいぶるだろう事を軽く言うのだから、確かに地元の人間ではないのだろう。
ペットボトルはオレが飲んだ。なじみのある味がした。
けれど魔法を使ったのは彼女だった。
……オレが使い方を分からないだけということはきっとない。
遊んでいるつもりだった。
真剣に探していたけど、真剣に探すという遊びをやっているつもりだった。
なので結果はどうでもいいと。
思っていたよりショックを受けている事に気づく。
オレ、魔法使いたかったんだな。
「大丈夫?」
だまりこくったせいか心配された。
確かにスポドリ一本で治るレベルは過ぎてるかもしれない。
「ペットボトルの中身が魔法を使えるようになる薬だって内輪でだけど噂になってるけど」
それでも確認せずにはいられなかった。
「ウソ!? なんで?」
欠片も心当たりがないのか、本気で驚いてるように見える。
「中身を飲んだ後に魔法使ってなかった?」
オレが見たわけじゃないけどな、今回も。
「あー」
心当たりはあるらしい。
「あたし暑さを感じにくいの。感じないだけで暑い事は確かだから、体に負荷はあるのよ」
属性とかいうヤツだろうか? 研究途中らしいけど。
「それで、喉か乾いたら暑いんだろうなって事で、魔法で、こう」
周囲を冷やしたと。
そりゃ下敷き持ってればそれで涼むように、魔法が使えればそれを使うよな。
そういうところにいる人なのだろう。
「ペットボトル振ってたのは?」
ついでなので聞く。
「……小さな頃魔法少女物のアニメにはまってね」
魔法の事よりよっぽどいいにくそうだ。
「……その影響が未だにあって、何かを振ると発動が楽になるの」
本当にペットボトルはそこまで関係ないな。
あーあ、オレも棒でも振ってれば良かっただろうか。
気が抜けたせいかめまいがする。これ以上立っていると倒れそうだ。
「大丈夫? 一人で帰れる?」
今なら多分ギリ帰れる。
けれどここで別れたら彼女とはもう会えないかもしれない。
そりゃ、来年にはオレも中学生だけど、なんか学年の隔たり厳しいっていうし。
その一年差はたぶん接点を奪う、今も、これからも。
そもそも彼女が来年卒業していないとも限らないし、いつまでこっちにいるかも分からない。
だからといって連絡先を聞くわけにもいかないだろう。初対面では怪しすぎる。
そしてそうする余裕も残っていない。
「――一人で、帰る」
「あ、うん、気をつけてね」
ふらふらと歩き出す。
ひときわ、涼しい風が吹いた。
連絡先や話を聞いていないことよりもドリンク代を払っていない事に気づく。
てか、今手持ちがないことにして、払うために連絡先教えてって言えば良かった。
教えてくれるなら良し、断られたとしてもオレは一応誠意を見せたことになる。
慌てて振り返るけれど、彼女はもういなかった。
風も、残っていなかった。
頭が回らないせいもあって、それしか思いつかない。
「そうだよ」
あっさりと肯定された。
……たぶん、この辺りのヤツらが使えるようになったら散々もったいぶるだろう事を軽く言うのだから、確かに地元の人間ではないのだろう。
ペットボトルはオレが飲んだ。なじみのある味がした。
けれど魔法を使ったのは彼女だった。
……オレが使い方を分からないだけということはきっとない。
遊んでいるつもりだった。
真剣に探していたけど、真剣に探すという遊びをやっているつもりだった。
なので結果はどうでもいいと。
思っていたよりショックを受けている事に気づく。
オレ、魔法使いたかったんだな。
「大丈夫?」
だまりこくったせいか心配された。
確かにスポドリ一本で治るレベルは過ぎてるかもしれない。
「ペットボトルの中身が魔法を使えるようになる薬だって内輪でだけど噂になってるけど」
それでも確認せずにはいられなかった。
「ウソ!? なんで?」
欠片も心当たりがないのか、本気で驚いてるように見える。
「中身を飲んだ後に魔法使ってなかった?」
オレが見たわけじゃないけどな、今回も。
「あー」
心当たりはあるらしい。
「あたし暑さを感じにくいの。感じないだけで暑い事は確かだから、体に負荷はあるのよ」
属性とかいうヤツだろうか? 研究途中らしいけど。
「それで、喉か乾いたら暑いんだろうなって事で、魔法で、こう」
周囲を冷やしたと。
そりゃ下敷き持ってればそれで涼むように、魔法が使えればそれを使うよな。
そういうところにいる人なのだろう。
「ペットボトル振ってたのは?」
ついでなので聞く。
「……小さな頃魔法少女物のアニメにはまってね」
魔法の事よりよっぽどいいにくそうだ。
「……その影響が未だにあって、何かを振ると発動が楽になるの」
本当にペットボトルはそこまで関係ないな。
あーあ、オレも棒でも振ってれば良かっただろうか。
気が抜けたせいかめまいがする。これ以上立っていると倒れそうだ。
「大丈夫? 一人で帰れる?」
今なら多分ギリ帰れる。
けれどここで別れたら彼女とはもう会えないかもしれない。
そりゃ、来年にはオレも中学生だけど、なんか学年の隔たり厳しいっていうし。
その一年差はたぶん接点を奪う、今も、これからも。
そもそも彼女が来年卒業していないとも限らないし、いつまでこっちにいるかも分からない。
だからといって連絡先を聞くわけにもいかないだろう。初対面では怪しすぎる。
そしてそうする余裕も残っていない。
「――一人で、帰る」
「あ、うん、気をつけてね」
ふらふらと歩き出す。
ひときわ、涼しい風が吹いた。
連絡先や話を聞いていないことよりもドリンク代を払っていない事に気づく。
てか、今手持ちがないことにして、払うために連絡先教えてって言えば良かった。
教えてくれるなら良し、断られたとしてもオレは一応誠意を見せたことになる。
慌てて振り返るけれど、彼女はもういなかった。
風も、残っていなかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ぼくの家族は…内緒だよ!!
まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。
それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。
そんなぼくの話、聞いてくれる?
☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
おなら、おもっきり出したいよね
魚口ホワホワ
児童書・童話
ぼくの名前は、出男(でるお)、おじいちゃんが、世界に出て行く男になるようにと、つけられたみたい。
でも、ぼくの場合は、違うもの出ちゃうのさ、それは『おなら』すぐしたくなっちゃんだ。
そんなある日、『おならの妖精ププ』に出会い、おならの意味や大切さを教えてもらったのさ。
やっぱり、おならは、おもっきり出したいよね。
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。
桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。
それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。
でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。
そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる