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番外
彼女にとっての完結サギ 前編
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場所がファミレスじゃなく電話越しなのでとりあえず番外。変えるかもしれない。
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『何か面白い作品ない?』
……好きな子に夏休みに送るメッセージとしてどうなのかとは自分でも思う。
けど顔を合わせなくなると案外と共通の話題がないことに気づいてしまって。
大学行ってるときにちょっとファミレスで駄弁る分にはオンノベ以外にもそれでも共通の話題はあるんだよ、学部は違えど共通の授業はあるし、共通の設備多いし、共通の知り合いは……そういや知らないな。
待ち合わせはしないけど、かち合うのってそういう授業が終わった後が多いから……いや、ちょっと様子見て判断してるけど。
…………ストーカー言うな。
つまり、大学が休みになるとそういう共通の話題がまるっとなくなるわけで。
最初と多分休みが終わる直前はこの前の事とこの先の事で話すことも出来るだろうが、今は中だるみというか時期が悪い。しみじみ語り合うほど時は経っていないし、急いで伝えたり話を聞かなきゃならない用があるわけでもない。
こっちでやったたわいのない事をわざわざ連絡して話すほどの関係じゃないことに気づいて地味にへこんだ。誘うとか距離がなくても出来ないしなっ……したいけど。
連絡先教えてもらえただけいいと思うべきか……URLとか口頭での発音からじゃ検索出来ないタイトルとかあるからだけど。
……けど、誰彼構わず個人情報教えるタイプじゃないし、うん。
いきなり手の中が震え、思考に気を取られていたせいで思わず端末を取り落としそうになる。
「も、もしもしっ」
寸前で落下を免れた端末をちらっと見てから慌てて通話にする。
『もしもし』
どこか笑いを含んだ彼女の声が返ってきた。……まぁ、この慌てようは面白いよなぁ、他人事なら俺も面白い。
けれどいやな感じはしない。
それにしても耳元から声が聞こえるってスバラシイ。
「え、今時間いいの?」
『受けた方がそれを聞く?』
けど顔も見たいなぁ。きっと楽しそうに笑っているだろうのに。
「いや、そうなんだけど」
通話じゃないが、変なタイミングで送ったらどうしようとか、誰かと一緒にいて邪魔したらどうしよう相手が覗けるタイミングだったらどうしようとか、……ぶっちゃけもし地元に彼氏がいていちゃついてる最中とかだったらどうしようとか、ぐるぐるまわした末のアレだから、すぐに返事がどころか通話が来ると思ってなかった。
『これからオンノベ読もうってぐらいだから時間あるのかなと思って』
……ごめんなさい、口実で今すぐ読みたいと思った訳じゃないです。
「確かにオンノベ読もうかと思う程度には時間あるけど」
……薦めてくれるなら、時間なくても読むがな。暑いから用がないなら家に籠もっていたいのも事実だし。
『自分で読むの探したりとかはしてみた?』
確かに俺はほとんどお薦めを読むばっかりだったが。
「一応するにはしたんだけど……」
……読んだオンノベの話なら口実になるかなと思うし、ならなくとも休み明けには使えそうと思ったし。
「書籍化作家の作品で」
探すコツも口実として聞いたんだが、彼女的に初心者が探すなら、書籍化作家の、書籍化以降に連載を開始した、書籍化していない、中途半端に短すぎない、完結した作品、がいいそうだ。校正を経験したことで『てをには』が変な部分が減るんだと。その分狙ってない個性は減るらしいが、つまらなすぎないのなら最初はそれくらいの方がいいらしい。
「完結になってる作品を」
……まぁ、話すのが目的だから彼女が読んでる連載中の小説も読んでるけど、正直こんがらがるし、まとめて読むなら完結してる方がいいよな。
「けど続くっぽいことを最新話の後書きで書いておいて、別の話になってる訳でもないようだった」
『あー』
彼女の声のトーンが明らかに下がる。
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『何か面白い作品ない?』
……好きな子に夏休みに送るメッセージとしてどうなのかとは自分でも思う。
けど顔を合わせなくなると案外と共通の話題がないことに気づいてしまって。
大学行ってるときにちょっとファミレスで駄弁る分にはオンノベ以外にもそれでも共通の話題はあるんだよ、学部は違えど共通の授業はあるし、共通の設備多いし、共通の知り合いは……そういや知らないな。
待ち合わせはしないけど、かち合うのってそういう授業が終わった後が多いから……いや、ちょっと様子見て判断してるけど。
…………ストーカー言うな。
つまり、大学が休みになるとそういう共通の話題がまるっとなくなるわけで。
最初と多分休みが終わる直前はこの前の事とこの先の事で話すことも出来るだろうが、今は中だるみというか時期が悪い。しみじみ語り合うほど時は経っていないし、急いで伝えたり話を聞かなきゃならない用があるわけでもない。
こっちでやったたわいのない事をわざわざ連絡して話すほどの関係じゃないことに気づいて地味にへこんだ。誘うとか距離がなくても出来ないしなっ……したいけど。
連絡先教えてもらえただけいいと思うべきか……URLとか口頭での発音からじゃ検索出来ないタイトルとかあるからだけど。
……けど、誰彼構わず個人情報教えるタイプじゃないし、うん。
いきなり手の中が震え、思考に気を取られていたせいで思わず端末を取り落としそうになる。
「も、もしもしっ」
寸前で落下を免れた端末をちらっと見てから慌てて通話にする。
『もしもし』
どこか笑いを含んだ彼女の声が返ってきた。……まぁ、この慌てようは面白いよなぁ、他人事なら俺も面白い。
けれどいやな感じはしない。
それにしても耳元から声が聞こえるってスバラシイ。
「え、今時間いいの?」
『受けた方がそれを聞く?』
けど顔も見たいなぁ。きっと楽しそうに笑っているだろうのに。
「いや、そうなんだけど」
通話じゃないが、変なタイミングで送ったらどうしようとか、誰かと一緒にいて邪魔したらどうしよう相手が覗けるタイミングだったらどうしようとか、……ぶっちゃけもし地元に彼氏がいていちゃついてる最中とかだったらどうしようとか、ぐるぐるまわした末のアレだから、すぐに返事がどころか通話が来ると思ってなかった。
『これからオンノベ読もうってぐらいだから時間あるのかなと思って』
……ごめんなさい、口実で今すぐ読みたいと思った訳じゃないです。
「確かにオンノベ読もうかと思う程度には時間あるけど」
……薦めてくれるなら、時間なくても読むがな。暑いから用がないなら家に籠もっていたいのも事実だし。
『自分で読むの探したりとかはしてみた?』
確かに俺はほとんどお薦めを読むばっかりだったが。
「一応するにはしたんだけど……」
……読んだオンノベの話なら口実になるかなと思うし、ならなくとも休み明けには使えそうと思ったし。
「書籍化作家の作品で」
探すコツも口実として聞いたんだが、彼女的に初心者が探すなら、書籍化作家の、書籍化以降に連載を開始した、書籍化していない、中途半端に短すぎない、完結した作品、がいいそうだ。校正を経験したことで『てをには』が変な部分が減るんだと。その分狙ってない個性は減るらしいが、つまらなすぎないのなら最初はそれくらいの方がいいらしい。
「完結になってる作品を」
……まぁ、話すのが目的だから彼女が読んでる連載中の小説も読んでるけど、正直こんがらがるし、まとめて読むなら完結してる方がいいよな。
「けど続くっぽいことを最新話の後書きで書いておいて、別の話になってる訳でもないようだった」
『あー』
彼女の声のトーンが明らかに下がる。
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