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彼女にとっての異世界転移

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「異世界転移ものって、少し前より更にカジュアルになってると思うのよね」
 そういって彼女は紅茶に砂糖を入れる。
 ダイエット用シュガーにしなければならないほど太っているとは思わないが、そこに触れるのは地雷だと言うことは分かる。その前に炭酸飲料を飲んでたこととかにも。

「確かに多いよなー」
 あいにくとその少し前は俺はまだオンノベを読んでいなかっただろうが、オンノベ以外で皆無だったわけでもないし、話を合わせることは出来る。
「ちょっとちがくて」
 ところが否定されてしまった。

「こう、閉じこもってたり忙しかったりすると旅行行きたいなーとか思うでしょう?」
 彼女は趣味がオンノベでも旅行とか行きたい派だったらしい。電波届けばどこでも読めるから矛盾してるって訳でもないし、それ以前に別に両立出来ない趣味でもないけど。
「けど、旅は恥の掻き捨てーまではっちゃけると今ってどこにどうばれるかわかんないじゃない」
 彼女がちらりと視線を向けたのは、通路を挟んだ隣の席でケーキの写真を撮ってる女の子だった。
 ファミレスのケーキなんでアップしてどうするんだという感じだが、メニュー写真と比較させて見せるのかもしれない。

「もちろん、はっちゃけすぎた方が悪いんだけどさ、それがのちのちまで後を引くリスクが前より上がってると思うのよね」
 ……そういや、自然にアップするとか思ったな。食事の記録取ってダイエットしてるとかかもしれないのに……ダイエット中にケーキ食べることに疑問を持つなよ俺。
「そこまででもないことが知らない人に晒されて過剰に影響を受けるまではいかなくても、自分でやった問題と思ってなかったことでも何かの拍子って事があると思うの」
 アップした写真が転載されたとか、後々問題になったとかか。常識がまるでないのはさすがにやった方が悪いが、学生ならセーフでも社会人ならアウトなこともあるから、気をつけるに越したことはない。悪気のない失敗や若気の至りで済ませてくれるとは限らないし、最低でも自分の中で黒歴史化してしまう。

「そうやって警戒してたら旅先でも楽しめないと思うのよ、計画してるときの方がいざ本当に行ったときよりもっと」
 事前準備を綿密にするタイプならそうかもしれない。
「そうなると、旅行行ってるとこを想像しても開放感がないのよね」
 確かに無駄に疲れそうだ。
 けれど行ってしまえばよほどの無茶をしない限りそこまで心配しなくていいのも確かだろう。でなければすでに日常生活も送れない。

「で、異世界?」
 それでも尋ねる。
「そう。別に電波の届かない人の来ない山奥とか想定してもいいんだけど、よっぽどアウトドアが趣味って人以外楽しくないと思うし」
 まぁ、俺は無理だな。キャンプ場で大勢とバーベキューくらいが限界か? キャンプ場で荷物がそろってても一人じゃ無理そうだ。……頼りないとか思われたらどうしよう?
「その点異世界だと条件はよっぽど綿密に設定されてる世界でもなきゃ自由自在。何だったら都合の悪いところ以外はそっくりな世界でもいいわけだし」
 それは想像力ない人には助かるな。
「他人様が考えた異世界にお邪魔してもいい」
「なるほど」
 確かになんかすげーカジュアルに行きたいと思う気がしてきた。

「まー、計画を立てるかんがえるだけ、だったらだけどね。帰れない設定はまだまだ多いし」
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