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やり方にすぎない
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肉を切る。白も黒も花柄も染まってしまえばみんな赤い。水着だから染みになることは普段の服より少ないと思うけど、もう気にする人もいないだろう。
刺す。人を殺すのを普通に料理をするのと変わりないと表現した人がいたけれど、肉の塊を突き刺すような料理を寡聞にしてわたしは知らない。塊で買うのだろうか? 死体でも入りそうな冷凍庫でも持っているんだろうか?
血で水が赤く染まるというけれど、想像したほどじゃない。海は広いし、波がさらうから拡散する。それとも人数が足りないのだろうか?
けれど周りに居るのは既に事切れている女性達と倒れて溺れ死にかけてる女性達、そして遠巻きに隙を窺っているような男性達。別に血を流すのが目的じゃない以上遺体を切る気は起こらない
説得をするためか、気を逸らすためか、誰かが犯行理由を遠くから半ば怒鳴るような声量で尋ねてくるが、それが言えるならそもそもこんなことはしていない。
わたしにはやることがある。
海神様の花嫁を捧げること、それを女性の血族のみに受け継いでいくこと。
人によっては両立出来るだろうこれがわたしには出来ないと気づいたのは最近だった。
天涯孤独になったとでもいえばいいのだろうか。
いや伝承に関係ある血族以外の身内はいっぱいいる。父方は祖父母どころかその上まで健在だし叔父も叔母も従姉妹もいる。ついでにいえば父は再婚したので義母も義兄も義妹もいるという、言葉だけ聞くと違う意味で確かに孤独になりそうな状態だが、関係はいたって良好だと思っている。
……その人達にはこの状況は衝撃的だったかなと、そちらに対しては罪悪感が湧いてくる。
とにかく家族はいっぱいいても海神様の花嫁に捧げられる人も、それを受け継がせていい人もいなかった。
実母はわたしを産んだ時に死んでしまったし、伝承を教えてくれた母方の祖母の先日なくなっている。こちらはそれ以外の身内を存在すら知らない。
わたしが花嫁になる事は可能だろう。けれどその場合誰に伝承を伝えればいいだろう。将来娘が生まれる可能性なんて欠片もなくなってしまうのだから。
ならば逆に娘を産むことを目的に別の人に嫁すならば――そのことを海神様は赦してくれるだろうか?
なので考えた。本当にわたし以外の血族がいないのかと。
血は濃くなることもあるけれど広がることもある。
これだけ若い女性を捧げれば伝承は途切れていても一人ぐらい資格をもったものもいたかもしれない。
これでわたしは伝えることに集中できる――訳はもちろんなく。
この状態から逃げ切れると思うほどおめでたくないし、仮に出来たとしても逃亡生活を続けながら子供を複数育てられるとは思っていない。
だからわたしもここで死ぬ。
本当はさっき殺した女性の中に血族がいなくても構わない。
その場合わたしが花嫁になるつもりだから。
それでも最初から海で自殺しただけじゃ意味がない。
これだけ適齢期の女性ばかりを殺せばニュースになるだろう。
花嫁は捧げられたとどこかで伝承を受け付いているかもしれない人達に知らせたかった。
もう捧げなくてもいいのだから、わたしの代わりに伝承を受け継いで欲しいと。
どこかにいるわたしの血族達に。
刃こぼれを横目で確認し、ほんの少しため息を付き、首に当てた刃を引いた。
刺す。人を殺すのを普通に料理をするのと変わりないと表現した人がいたけれど、肉の塊を突き刺すような料理を寡聞にしてわたしは知らない。塊で買うのだろうか? 死体でも入りそうな冷凍庫でも持っているんだろうか?
血で水が赤く染まるというけれど、想像したほどじゃない。海は広いし、波がさらうから拡散する。それとも人数が足りないのだろうか?
けれど周りに居るのは既に事切れている女性達と倒れて溺れ死にかけてる女性達、そして遠巻きに隙を窺っているような男性達。別に血を流すのが目的じゃない以上遺体を切る気は起こらない
説得をするためか、気を逸らすためか、誰かが犯行理由を遠くから半ば怒鳴るような声量で尋ねてくるが、それが言えるならそもそもこんなことはしていない。
わたしにはやることがある。
海神様の花嫁を捧げること、それを女性の血族のみに受け継いでいくこと。
人によっては両立出来るだろうこれがわたしには出来ないと気づいたのは最近だった。
天涯孤独になったとでもいえばいいのだろうか。
いや伝承に関係ある血族以外の身内はいっぱいいる。父方は祖父母どころかその上まで健在だし叔父も叔母も従姉妹もいる。ついでにいえば父は再婚したので義母も義兄も義妹もいるという、言葉だけ聞くと違う意味で確かに孤独になりそうな状態だが、関係はいたって良好だと思っている。
……その人達にはこの状況は衝撃的だったかなと、そちらに対しては罪悪感が湧いてくる。
とにかく家族はいっぱいいても海神様の花嫁に捧げられる人も、それを受け継がせていい人もいなかった。
実母はわたしを産んだ時に死んでしまったし、伝承を教えてくれた母方の祖母の先日なくなっている。こちらはそれ以外の身内を存在すら知らない。
わたしが花嫁になる事は可能だろう。けれどその場合誰に伝承を伝えればいいだろう。将来娘が生まれる可能性なんて欠片もなくなってしまうのだから。
ならば逆に娘を産むことを目的に別の人に嫁すならば――そのことを海神様は赦してくれるだろうか?
なので考えた。本当にわたし以外の血族がいないのかと。
血は濃くなることもあるけれど広がることもある。
これだけ若い女性を捧げれば伝承は途切れていても一人ぐらい資格をもったものもいたかもしれない。
これでわたしは伝えることに集中できる――訳はもちろんなく。
この状態から逃げ切れると思うほどおめでたくないし、仮に出来たとしても逃亡生活を続けながら子供を複数育てられるとは思っていない。
だからわたしもここで死ぬ。
本当はさっき殺した女性の中に血族がいなくても構わない。
その場合わたしが花嫁になるつもりだから。
それでも最初から海で自殺しただけじゃ意味がない。
これだけ適齢期の女性ばかりを殺せばニュースになるだろう。
花嫁は捧げられたとどこかで伝承を受け付いているかもしれない人達に知らせたかった。
もう捧げなくてもいいのだから、わたしの代わりに伝承を受け継いで欲しいと。
どこかにいるわたしの血族達に。
刃こぼれを横目で確認し、ほんの少しため息を付き、首に当てた刃を引いた。
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