32 / 41
水のしとね
しおりを挟む
『あたし、海神様のお嫁さんになるの』
暑くて寝苦しい夜は、よく幼い従妹を思い出す。
父方の従妹とはそれなりに歳が離れていて、盆と正月に顔を合わせたときは一緒に遊ぶというよりも子守りをしているようなものだった。
あちこちふらふらはしないので迷子にはならないが、とにかく話しまくる子で、適当に聞き流してもそれで満足してくれたので手間というほど手間ではなかったのだろうけど。
夏の水分補給にだけはやたら気を遣ったことは覚えている。
その聞き流そうとして出来なかった話の中に従妹が将来海神と結婚するという話があった。
その話は親戚の女の人にしかしてはいけないらしい。
親戚のとは言っていたが、実際は従妹の母親の血筋の女性にのようなので、従妹の父である叔父の方と血が繋がっている私は本来聞いてはいけなかったのだろう。
最初話始めたときに、一緒にいた叔母が不自然に話を逸らしていたが、結局いないときに聞いてしまった訳だけれど。
その話を聞いたとき、私は父の浮気で相当ストレスを溜めていて。
なのに一緒に帰省しなかった母の代わりに父と一緒に来て愛想を振りまいていた。
もう誰に気を遣っていたのかも分からない。
そんなときに聞く結婚の話題は、幼子の戯言といえど、妙な生々しさと、絶望を持っていた。
だから気づかなかったのだろう。
海神の花嫁は芸能人やアニメキャラや身内や幼なじみとの結婚を想定するのと訳が違うと。
本当に戯言だったかもしれない。
ただ一方的に言っていただけかもしれない。
知らないだけで海神というアニメキャラか何かがいたのかもしれない。
けれどそれなら叔母はあそこで話を聞かせないようにするだろうか?
単にこちらが分からない話だから気を遣ったというならもっと変えられた話題は多いだろうし。
完全な空想にしては妙な部分が具体的だった。
いらついてやつあたりしそうだったのでその時は意識して聞き流そうとし深く掘り下げもしなかったけれど。
普通に結婚する話だったとしても希望は持てたと思えないけど。
花嫁の意味がもし、思っていた通りのものなら。
それを確認する事は出来なかった。
次に会う機会が来る前に両親が離婚して私は母に引き取られたから。
父に会うなとは言われなかったけれど、それでも祖父母くらいまでならまだしも父方の親戚の集まりに顔を出すには気が引ける。父はさっさと再婚してしまったわけだし。
叔父の妻の家なんてそれ以外に付き合う機会は特になく。
従妹ともそれっきりだった。
暑くて寝苦しい夜は、よく幼い従妹の事を思い出す。
それは暑くてぼーっとして水が恋しいから、水分補給に気を遣ったことを思い出すからで。
そこから父の浮気と従妹の発言を思い出し。
従妹は本当に生贄になったのだろうかと考えてしまう。
あれはそれぞれに影響を受けたゆえに出来た妄想で、すっかり成長してそれなりに普通に生きているのか。
あるいは既に死んでいるのか。
それともこれから水底で眠るのか。
確かめることはきっとない。
暑くて寝苦しい夜は、よく幼い従妹を思い出す。
父方の従妹とはそれなりに歳が離れていて、盆と正月に顔を合わせたときは一緒に遊ぶというよりも子守りをしているようなものだった。
あちこちふらふらはしないので迷子にはならないが、とにかく話しまくる子で、適当に聞き流してもそれで満足してくれたので手間というほど手間ではなかったのだろうけど。
夏の水分補給にだけはやたら気を遣ったことは覚えている。
その聞き流そうとして出来なかった話の中に従妹が将来海神と結婚するという話があった。
その話は親戚の女の人にしかしてはいけないらしい。
親戚のとは言っていたが、実際は従妹の母親の血筋の女性にのようなので、従妹の父である叔父の方と血が繋がっている私は本来聞いてはいけなかったのだろう。
最初話始めたときに、一緒にいた叔母が不自然に話を逸らしていたが、結局いないときに聞いてしまった訳だけれど。
その話を聞いたとき、私は父の浮気で相当ストレスを溜めていて。
なのに一緒に帰省しなかった母の代わりに父と一緒に来て愛想を振りまいていた。
もう誰に気を遣っていたのかも分からない。
そんなときに聞く結婚の話題は、幼子の戯言といえど、妙な生々しさと、絶望を持っていた。
だから気づかなかったのだろう。
海神の花嫁は芸能人やアニメキャラや身内や幼なじみとの結婚を想定するのと訳が違うと。
本当に戯言だったかもしれない。
ただ一方的に言っていただけかもしれない。
知らないだけで海神というアニメキャラか何かがいたのかもしれない。
けれどそれなら叔母はあそこで話を聞かせないようにするだろうか?
単にこちらが分からない話だから気を遣ったというならもっと変えられた話題は多いだろうし。
完全な空想にしては妙な部分が具体的だった。
いらついてやつあたりしそうだったのでその時は意識して聞き流そうとし深く掘り下げもしなかったけれど。
普通に結婚する話だったとしても希望は持てたと思えないけど。
花嫁の意味がもし、思っていた通りのものなら。
それを確認する事は出来なかった。
次に会う機会が来る前に両親が離婚して私は母に引き取られたから。
父に会うなとは言われなかったけれど、それでも祖父母くらいまでならまだしも父方の親戚の集まりに顔を出すには気が引ける。父はさっさと再婚してしまったわけだし。
叔父の妻の家なんてそれ以外に付き合う機会は特になく。
従妹ともそれっきりだった。
暑くて寝苦しい夜は、よく幼い従妹の事を思い出す。
それは暑くてぼーっとして水が恋しいから、水分補給に気を遣ったことを思い出すからで。
そこから父の浮気と従妹の発言を思い出し。
従妹は本当に生贄になったのだろうかと考えてしまう。
あれはそれぞれに影響を受けたゆえに出来た妄想で、すっかり成長してそれなりに普通に生きているのか。
あるいは既に死んでいるのか。
それともこれから水底で眠るのか。
確かめることはきっとない。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
心霊捜査官の事件簿 依頼者と怪異たちの狂騒曲
幽刻ネオン
ホラー
心理心霊課、通称【サイキック・ファンタズマ】。
様々な心霊絡みの事件や出来事を解決してくれる特殊公務員。
主人公、黄昏リリカは、今日も依頼者の【怪談・怪異譚】を代償に捜査に明け暮れていた。
サポートしてくれる、ヴァンパイアロードの男、リベリオン・ファントム。
彼女のライバルでビジネス仲間である【影の心霊捜査官】と呼ばれる青年、白夜亨(ビャクヤ・リョウ)。
現在は、三人で仕事を引き受けている。
果たして依頼者たちの問題を無事に解決することができるのか?
「聞かせてほしいの、あなたの【怪談】を」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
きらさぎ町
KZ
ホラー
ふと気がつくと知らないところにいて、近くにあった駅の名前は「きさらぎ駅」。
この駅のある「きさらぎ町」という不思議な場所では、繰り返すたびに何か大事なものが失くなっていく。自分が自分であるために必要なものが失われていく。
これは、そんな場所に迷い込んだ彼の物語だ……。
ラヴィ
山根利広
ホラー
男子高校生が不審死を遂げた。
現場から同じクラスの女子生徒のものと思しきペンが見つかる。
そして、解剖中の男子の遺体が突如消失してしまう。
捜査官の遠井マリナは、この事件の現場検証を行う中、奇妙な点に気づく。
「七年前にわたしが体験した出来事と酷似している——」
マリナは、まるで過去をなぞらえたような一連の展開に違和感を覚える。
そして、七年前同じように死んだクラスメイトの存在を思い出す。
だがそれは、連環する狂気の一端にすぎなかった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる