17 / 40
安寧の揺りかご
しおりを挟む
『妹の結婚を邪魔するために姉は婚約破棄される』とは無関係です。
---------------------------------
あたしの一族は代々海神様に花嫁を捧げるという。その伝承を女性だけに伝えていくと。
だからあたしは幼い頃から将来は海神様のお嫁さんになるようにと言い聞かされ育てられた。
そして童話の王子さまに対するように、まだ見ぬ海神様に恋をした。
けれど、現実に海神様に嫁いでいったのは姉だった。特に前触れもなく昨日嫁いだと朝起きたら母に聞かされた。
どうしてそんな事になったのか。
どうして姉が嫁いで行ってしまったのか。
あたしは、それだけのために生きて来たのに。
海神様に相応しくなるためだけに、勉強も外見も立ち振る舞いも、性格だって悪くならないようにしていたのに。
分かっていた。
小さな頃は本当に憧れていたけれど、長ずるにつれそれはただ死ぬだけの事だと知ってしまった。
それがどれだけ嬉しいか分かるだろうか。
どこで設定されたかも既に分からない、理想の海神様の花嫁像を目指すことは既にあたしを生きることに疲れさせていた。
けれどそれをいつまでも続けなくてもいいのだ。期限があると分かればまだ頑張れる。
その日だけを楽しみに生きて来たのに。
行き遅れたあたしは、今度はもう少し成長してから他の誰かに嫁いで女児を産めと言われ始めた。
姉より出来のいいあたしならよりどりみどりだろうからと暗にいわれ、子供を沢山生ませてくれて育てられる家を選びなさいと。
それはもう無理なんだよ。
これ以上、よく思われるように努力することなんて出来ないよ。
伝えることも、次代の花嫁を送り出すことも海神様のために重要だとは分かっている。
けれどそれでも耐えられない。
そんな未来なんて考えた事すらない。
体は生きていても心は死んでいるようなもの。
それだけで本当に死んでしまえたら楽になれるのに。
姉が浮いてこなかったという水面を見つめる。
ここに飛び込めばきっと楽になれる。
けれどそうはしない。
あたしはきっと近いうちに自殺するだろう。
けれどそれでもきっと水死以外を選ぶのだろう。
あたしの居場所はもうそこにもないのだから。
---------------------------------
あたしの一族は代々海神様に花嫁を捧げるという。その伝承を女性だけに伝えていくと。
だからあたしは幼い頃から将来は海神様のお嫁さんになるようにと言い聞かされ育てられた。
そして童話の王子さまに対するように、まだ見ぬ海神様に恋をした。
けれど、現実に海神様に嫁いでいったのは姉だった。特に前触れもなく昨日嫁いだと朝起きたら母に聞かされた。
どうしてそんな事になったのか。
どうして姉が嫁いで行ってしまったのか。
あたしは、それだけのために生きて来たのに。
海神様に相応しくなるためだけに、勉強も外見も立ち振る舞いも、性格だって悪くならないようにしていたのに。
分かっていた。
小さな頃は本当に憧れていたけれど、長ずるにつれそれはただ死ぬだけの事だと知ってしまった。
それがどれだけ嬉しいか分かるだろうか。
どこで設定されたかも既に分からない、理想の海神様の花嫁像を目指すことは既にあたしを生きることに疲れさせていた。
けれどそれをいつまでも続けなくてもいいのだ。期限があると分かればまだ頑張れる。
その日だけを楽しみに生きて来たのに。
行き遅れたあたしは、今度はもう少し成長してから他の誰かに嫁いで女児を産めと言われ始めた。
姉より出来のいいあたしならよりどりみどりだろうからと暗にいわれ、子供を沢山生ませてくれて育てられる家を選びなさいと。
それはもう無理なんだよ。
これ以上、よく思われるように努力することなんて出来ないよ。
伝えることも、次代の花嫁を送り出すことも海神様のために重要だとは分かっている。
けれどそれでも耐えられない。
そんな未来なんて考えた事すらない。
体は生きていても心は死んでいるようなもの。
それだけで本当に死んでしまえたら楽になれるのに。
姉が浮いてこなかったという水面を見つめる。
ここに飛び込めばきっと楽になれる。
けれどそうはしない。
あたしはきっと近いうちに自殺するだろう。
けれどそれでもきっと水死以外を選ぶのだろう。
あたしの居場所はもうそこにもないのだから。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
MLG 嘘と進化のゲーム
なべのすけ
ホラー
退屈な日常を送っていた彰は街で拾った、ミッシング・リンク・ゲームと呼ばれる、デスゲームに参加することになってしまう。その中で一人の少女と子供と出会う。ゲームを進ませていく中で、出会いと別れ。嘘と進化。どれが正しく、何が嘘なのか?予測不可能なデスゲームが今、ここで始まる。
ミッシング・リンク・ゲーム、MLG、嘘とだまし合いの果てに待っていたものは?
自由か?栄光か?大金か?進化か?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる