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 誰が考えたのでしょうね。
 その聖女を王家で取り込めば、次代の繁栄は約束されると。
 産む子産む子がみんな優秀なのですもの。子供達は放っておいても関係が悪くなることはなく、また良くなりすぎることもないと。ならば周りが下手な派閥争いでも起こさなければ国が発展するのは間違いないでしょう。
 それで始まりの聖女を例として聖女は伴侶として王の傍らで支え尽くすべきだなんて。
 神殿の方も人材が一国に偏る心配はあれど、聖女の生まれる国が決まっているわけでもなく、それで生活がより保証されるならと幾つか条件はあるにしろ許したのでしょう。
 けれど事情を知らなければある意味どこから連れてこられたか分からない女を妃に据えろと言われる方は確かにたまらないでしょうね。
 知っていてもなお自分は種馬じゃないと主張した方もいらしたとか。
 聖女の方には産むことを押しつけておきながらなんて勝手なのでしょう、側妃も愛妾もそれでも持てる立場であったにも拘わらず。
 それでも聖女は立場としては正妃でなければなりません、優秀な子供を世継ぎにできる可能性をできる限り高めるために。
 きっと真実を知らないまま、ただ子供だけを産み続けさせられた方もいらしたでしょう。とじこめられる場所が神殿か王宮か、相手が複数か単数かだけの違いです。
 愛されているとたとえ誤解でも思い込めていたなら良いのですけど。

 その説明を、殿下はどこか呆然と聞いておられます。
「殿下に命じられたのでそうしますが構いませんかと、きちんと陛下に許可を頂きにいきましたよ?」
 それほど息子は愚かだったかとため息をついた陛下を覚えております。
 確かにそんな息子の血を引かない方かいいかもしれないとも。やはり少しは何か教えていたのでしょう。
 聖女の婚約者は聖女を余所に行かせないために据え付けられたはずですのに。
 陛下はそれでも王家の優秀な人材と血を絶やすつもりはないらしく、婚約自体の解消はなく、宛がわれたのは王家に近い血を持つ王家に従順な方たちでしたけれど。
 まだ薄いお腹を撫でます。
 なのでこの子が産まれれば殿下の子として育てられる事になります。

 微笑むとさっきまで血の気を引かせていた殿下が赤くなります。
 今までわたくしの事を混乱のあまりまともに見ていなかったでしょう?
 あの方々は内心までは知りませんけれど本当に王家に従順で、わたくしにそれはそれは優しくして下さいましたわ。
 殿下に植え付けられた卑屈さを溶かしてしまうほど。
 自分で言うのもどうかと思いますけれど大輪の花のつぼみがほころんだように美しくなったでしょう?
 身体だけといえど、愛されればこれほど変わるものなのです。
 殿下はそんな事考えた事もないでしょう?

 殿下が今わたくしの身体を欲しがっているのが分かります、婚約者なのだから自分もそれを自由にできると思っていることも。
 ええ、確かにわたくしはあなたの婚約者です。このままあなたと結婚することになるでしょう。
 けれど身体を重ねることだけはございません。そうちゃんとご命令を頂いております。
 殿下の本当の子供が産まれてしまえば、子供達の間で身分による序列がつき、ややこしいことになるのは明白。
 なので誰が父親か分からなくとも殿下の子でない事だけははっきりさせなければいけません。
 かといってこの子は養子に出し、殿下の子だけを産み続けるなんて論外です。
 そうなったなら、子供は死んでしまうかもしれませんね。
 それを陛下がお許しになるかしら?

 大丈夫ですよ、殿下以外に抱かれ続けるのを許して下さるなら王家に寄り添い支える優秀な子を残しますから。
 殿下は始まりほんものの聖女を望んでらしたのでしょう?
 殿下の望みも叶いそうで良かったですわね。

 ……本当に。
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