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シナリオを変えようと婚約をしてみたけれど
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じっと見つめているとお義兄さまが苦笑なさいました。
「もうリーゼのエスコートをどちらがするか考える必要はないんだな」
この世界では夜会でのお披露目は男女問わず成人の三年前の十五歳で行われ、付き添いは既にお披露目済みの保護者というか身内が行います。別に同性の身内でも構わないのですが、ダンスのパートナーが見つからない可能性も考え主に異性の年上の家族がする事が多いらしいです。実のところは特に女性の場合どこの家の娘かをはっきりさせて弄ぼうとするなと牽制するためらしいですけど。
これをお父様がするかお義兄さまにするかでいまからもめていましたの。
いつもでしたらお義兄さまが譲るのでしょうけれど……正直なところお父様はダンスがそれほど得意ではないのです。慣れた方やある程度身長が釣り合う方となら公爵として恥ずかしくない程度には踊れるのですが、わたくしはこれからを期待するにも少し小柄なもので。
それならば先の話とはいえデビュタントまでに何とかなる可能性にかけるよりお父様よりダンスが得意でわたくしと踊ることに慣れているお義兄さまに任せたほうがとお母様が。
わたくしはどちらでもいいと言っておきました。
もちろん着飾ってお義兄さまと踊るというシチュエーションにくらくらするほど憧れはありますけれど。
同時に義兄妹だと思い知らされるということですから複雑ですもの。
ところがここに婚約者という要素が入ってくると、相手がお披露目済みの場合その方が最優先となります。
「そう……ですわね」
義兄妹としてお披露目されるのが嫌なことは違いないんですけれど。
思っていたよりお義兄さまと踊れるかもしれないことを楽しみにしていたと気づかれます。
もちろんそれ以外としてなら踊る機会はあるかもしれませんけど。
もしかしたら一番の、そして最後の一緒にいて表面上何の含みもなく楽しめる思い出になるかもしれなかったことですから。
時期的にヒロインの存在を知るのはその後くらいのはずですから。
ふと落ちた沈黙は、思いのほか重くのしかかります。
「――用を思い出した。私は行く」
「はい。ではまた」
身を翻したお義兄さまを見送りながら、もう『僕』とはいわないのねと、そんな事を思い出した。
「もうリーゼのエスコートをどちらがするか考える必要はないんだな」
この世界では夜会でのお披露目は男女問わず成人の三年前の十五歳で行われ、付き添いは既にお披露目済みの保護者というか身内が行います。別に同性の身内でも構わないのですが、ダンスのパートナーが見つからない可能性も考え主に異性の年上の家族がする事が多いらしいです。実のところは特に女性の場合どこの家の娘かをはっきりさせて弄ぼうとするなと牽制するためらしいですけど。
これをお父様がするかお義兄さまにするかでいまからもめていましたの。
いつもでしたらお義兄さまが譲るのでしょうけれど……正直なところお父様はダンスがそれほど得意ではないのです。慣れた方やある程度身長が釣り合う方となら公爵として恥ずかしくない程度には踊れるのですが、わたくしはこれからを期待するにも少し小柄なもので。
それならば先の話とはいえデビュタントまでに何とかなる可能性にかけるよりお父様よりダンスが得意でわたくしと踊ることに慣れているお義兄さまに任せたほうがとお母様が。
わたくしはどちらでもいいと言っておきました。
もちろん着飾ってお義兄さまと踊るというシチュエーションにくらくらするほど憧れはありますけれど。
同時に義兄妹だと思い知らされるということですから複雑ですもの。
ところがここに婚約者という要素が入ってくると、相手がお披露目済みの場合その方が最優先となります。
「そう……ですわね」
義兄妹としてお披露目されるのが嫌なことは違いないんですけれど。
思っていたよりお義兄さまと踊れるかもしれないことを楽しみにしていたと気づかれます。
もちろんそれ以外としてなら踊る機会はあるかもしれませんけど。
もしかしたら一番の、そして最後の一緒にいて表面上何の含みもなく楽しめる思い出になるかもしれなかったことですから。
時期的にヒロインの存在を知るのはその後くらいのはずですから。
ふと落ちた沈黙は、思いのほか重くのしかかります。
「――用を思い出した。私は行く」
「はい。ではまた」
身を翻したお義兄さまを見送りながら、もう『僕』とはいわないのねと、そんな事を思い出した。
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