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ポイントエコバッグはお持ちですか?
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よく晴れた日曜日の午後。先方の都合により午後の予定がぽっかりと空いた。
今日は直帰予定だったので会社に帰るのもどうかと思う……というかもう閉められている。
休みに呼びつけといてドタキャンってどういう了見だ、オラァ。
……とりあえずその辺の責任追及までは出来なくとも愚痴ぐらいは部長辺りに聞いてもらうとして、出てきた以上夕食でも買って帰ろう。
家帰ったって作る気力もないし、外で食べるにも座ってる気力すらねぇよ。飲むにはまだ明るいし、そもそも明日があるしな。
その辺にあった見慣れないコンビニに入る。
時間帯のせいなのか平日の方が混む質なのか、レジのバイトらしい女の子以外誰もいない。バックヤードかな?
見慣れないコンビニではあったが品揃え自体は珍しいものはなく、目新しい商品も特になかった。
まぁ外れてなければいいだろうと弁当とポテチとミネラルウォーターをかごに入れる。帰ったら食いながらふて寝しよう。
この店ならポイントカードはあっても独自だろう。電子マネー支払いも出来ないんじゃもしかして。
そこまで考えてめんどくさくなったが、今更商品を返しに行くのもめんどくさいし、他の店に行くのもめんどくさい。
さすがに現金も空ではないしとレジに向かう。
「いらっしゃいませ」
正面から見ると女の子はかなり好みのタイプだった。恋を始めるには幼すぎるが気分を浮上させるには充分だ。
「ポイントエコバッグはお持ちですか?」
「もってな……」
何か今、単語としては分かるけど聞き慣れない言葉を聞かなかったか?
「……ポイントエコバッグ?」
「はい」
聞き間違いではなかったらしい。
「ええと、ポイントエコバッグについて聞かせてくれるかな? 分かるならどうしてそういう発想に行き着いたのかも」
今のオレの顔には日頃鍛えた営業スマイルが張り付いているだろう。多分目の前の女の子に負けてない。
「お客様もご存じかと思いますか……」
オレの休日なのに背広姿を見て最低限ニュースを見ているであろう層と判断したのか、客の頭がいいと仮定する営業トークなのかは分からないがそんな事を言われる。
もちろん現段階ではなにも分からない。
「小売店のお客様に渡すポリ袋を資源節約のためにどう減らすは頻繁に議論されています」
ああ、あるよなー。しょっちゅう議論しては大概立ち消えになってまたやり始めるの。
「対策としては主にポリ袋の有料化か、エコバッグ持参をお願いすることが多いのですが、後者を推進させるためにエコバッグをご持参してくださったお客様にはポイントカードにポイントをつけるなどがあります」
そうそう、客がそれ求めたりするんだよなー。
「ならばポイントカードとエコバッグを一体化すればバッグを持って来たけれどカードを忘れるというトラブルも減り、バッグ自体を持ってくる人も増えるのではないかと」
いやまて、言ってる意味は分かるけど分からない。
「特にレジで袋詰めする場合はエコバッグを渡していただく必要がありますし、手間が省けると」
……間違ってない気もするけどなんかツッコみたい。
「……エコバッグってポイントカードの代わりに出来る?」
とりあえずそこを尋ねる。磁気とかチップとか一昔前ならスタンプとかいろいろあるけど……。
「エコバッグについているバーコードによって管理されています」
個体識別だけしてデータは外部で管理するヤツか……拡張性とかはありそうだし、さりげに顧客データもあつめられそうな仕様だからきちんと管理出来るならだけど意外と化ける可能性もある。データとか意識してないだけでわりと垂れ流してるし、あんがいと抵抗はないかもしれない。
しかしマイバッグのバーコード部分の変更も含めて結構コストかかるんじゃそれ。
誰だよそんなの考えやがったの。
それで、と女の子が満面の笑みを浮かべる。
「ポイントエコバッグはお作りになられますか?」
「……イイエ、ケッコウデス」
なんか更に疲れた。
てかポイントエコバッグがどうこう以前に次来ることがあるかどうかわかんない店だしな。
来る機会があったとしても多分予定してじゃないだろうからエコバッグどころかカードだったとしても持ってなさそうだ。
数ヶ月して店の前を通る機会があったが、閉店していた。
ポイントエコバッグがまずかったのか、大手に負けたのか、それ以外の理由なのかは分からない。
これも一つのポリ袋論争の結末だろうか?
そう思いながら入った別の店で。
見覚えのある女の子がポイントカードを勧めていた。
今日は直帰予定だったので会社に帰るのもどうかと思う……というかもう閉められている。
休みに呼びつけといてドタキャンってどういう了見だ、オラァ。
……とりあえずその辺の責任追及までは出来なくとも愚痴ぐらいは部長辺りに聞いてもらうとして、出てきた以上夕食でも買って帰ろう。
家帰ったって作る気力もないし、外で食べるにも座ってる気力すらねぇよ。飲むにはまだ明るいし、そもそも明日があるしな。
その辺にあった見慣れないコンビニに入る。
時間帯のせいなのか平日の方が混む質なのか、レジのバイトらしい女の子以外誰もいない。バックヤードかな?
見慣れないコンビニではあったが品揃え自体は珍しいものはなく、目新しい商品も特になかった。
まぁ外れてなければいいだろうと弁当とポテチとミネラルウォーターをかごに入れる。帰ったら食いながらふて寝しよう。
この店ならポイントカードはあっても独自だろう。電子マネー支払いも出来ないんじゃもしかして。
そこまで考えてめんどくさくなったが、今更商品を返しに行くのもめんどくさいし、他の店に行くのもめんどくさい。
さすがに現金も空ではないしとレジに向かう。
「いらっしゃいませ」
正面から見ると女の子はかなり好みのタイプだった。恋を始めるには幼すぎるが気分を浮上させるには充分だ。
「ポイントエコバッグはお持ちですか?」
「もってな……」
何か今、単語としては分かるけど聞き慣れない言葉を聞かなかったか?
「……ポイントエコバッグ?」
「はい」
聞き間違いではなかったらしい。
「ええと、ポイントエコバッグについて聞かせてくれるかな? 分かるならどうしてそういう発想に行き着いたのかも」
今のオレの顔には日頃鍛えた営業スマイルが張り付いているだろう。多分目の前の女の子に負けてない。
「お客様もご存じかと思いますか……」
オレの休日なのに背広姿を見て最低限ニュースを見ているであろう層と判断したのか、客の頭がいいと仮定する営業トークなのかは分からないがそんな事を言われる。
もちろん現段階ではなにも分からない。
「小売店のお客様に渡すポリ袋を資源節約のためにどう減らすは頻繁に議論されています」
ああ、あるよなー。しょっちゅう議論しては大概立ち消えになってまたやり始めるの。
「対策としては主にポリ袋の有料化か、エコバッグ持参をお願いすることが多いのですが、後者を推進させるためにエコバッグをご持参してくださったお客様にはポイントカードにポイントをつけるなどがあります」
そうそう、客がそれ求めたりするんだよなー。
「ならばポイントカードとエコバッグを一体化すればバッグを持って来たけれどカードを忘れるというトラブルも減り、バッグ自体を持ってくる人も増えるのではないかと」
いやまて、言ってる意味は分かるけど分からない。
「特にレジで袋詰めする場合はエコバッグを渡していただく必要がありますし、手間が省けると」
……間違ってない気もするけどなんかツッコみたい。
「……エコバッグってポイントカードの代わりに出来る?」
とりあえずそこを尋ねる。磁気とかチップとか一昔前ならスタンプとかいろいろあるけど……。
「エコバッグについているバーコードによって管理されています」
個体識別だけしてデータは外部で管理するヤツか……拡張性とかはありそうだし、さりげに顧客データもあつめられそうな仕様だからきちんと管理出来るならだけど意外と化ける可能性もある。データとか意識してないだけでわりと垂れ流してるし、あんがいと抵抗はないかもしれない。
しかしマイバッグのバーコード部分の変更も含めて結構コストかかるんじゃそれ。
誰だよそんなの考えやがったの。
それで、と女の子が満面の笑みを浮かべる。
「ポイントエコバッグはお作りになられますか?」
「……イイエ、ケッコウデス」
なんか更に疲れた。
てかポイントエコバッグがどうこう以前に次来ることがあるかどうかわかんない店だしな。
来る機会があったとしても多分予定してじゃないだろうからエコバッグどころかカードだったとしても持ってなさそうだ。
数ヶ月して店の前を通る機会があったが、閉店していた。
ポイントエコバッグがまずかったのか、大手に負けたのか、それ以外の理由なのかは分からない。
これも一つのポリ袋論争の結末だろうか?
そう思いながら入った別の店で。
見覚えのある女の子がポイントカードを勧めていた。
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