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ダチがウソコクした相手が余命持ちだった件
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なんかくだんねー事が発端だったと思う。
ダチが集まって最下位は罰ゲーム付きの勝負をやった。
結果、オレは可もなく不可もなくという成績だったが、当然最下位のヤツはいる。
罰ゲームはいわゆる女子に嘘の告白をするというものだった。
確かに愛の告白をするのは恥ずかしい年頃……少なくともオレは恥ずかしいと思うのである意味充分罰ゲームだが、される方の女子はそれどころではすまない。
勝負が終わる頃にはみんなやや冷静になっていたものの、今更罰ゲームを変えようなどといって水を差す度胸がある輩もいなかった。
……折衷案というか、もし相手がヤツを好きだった場合しばらく付き合って、なんか美しい思い出みたいに演出して別れるようにしようということでまとまった。
結局ガキが考えることだ。
告白相手に選ばれたのはいつもいるかいないかわからない……というかよく学校を休んでいる大人しい女子だった。
こういってはあれだが、告ろうが付き合おうが振ろうが友人に言いふらしたりしなさそうという、当時女子に持っていたよくも悪くも幻想の上に成り立った幾分卑怯な理由で選ばれた相手だ。
罰ゲームなので、メッセでもSNSでもなく古典的に校舎裏に呼び出して、皆が物陰からこっそりと見ている中、告白は始まる。
ヤツは真っ赤になってしどろもどろで本当に相手が好きなんじゃないかと言いたくなるような有様だったが、単に告白するというシチュエーションに照れて戸惑っているだけだろう。
まぁ向こうだってなれてないだろうから似たようなもんだろ……と思っていたら、やたらと真剣な表情で、自分も好きだけど、余命を宣告されてるから付き合えないとか言い出した。
ちょいまて、余命とか言ってる病人がその辺の公立中学通ってるもんか!? 確かに休みがちだけど。
ヤツもオレらも呆然としているうちに、ごめんなさいとぺこりと一礼して彼女は去って行った。
顔を見合わせたが、誰も罰ゲームが成り立ったのかどうか判断できず、その日はなんとなくお開きになった。
……いや、告白はしたのだから終わってるのか?
もしや嘘だとばれていてだから向こうも嘘をついたのか? と一晩寝て思いついたが、その後教室で会ったヤツ曰く。
夜に彼女のお袋さんが訪ねてきて、彼女がせっかく好きな人に告白されたのにと泣いていたので、辛いことになるだろうが最後まで一緒にいてやってくれないかと頭を下げられたそうだ。
そんな話を聞いては引くに引けなくなり、ヤツはもう一度彼女にそれでもいいから付き合ってくれと告白する羽目になった。
付き合うといっても、一緒にどこかに行くとかはごくごく最初だけですぐにお見舞いに変わった……らしい。
いちいち報告されるものでも根掘り葉掘り聞き出すものでもない。
もう少し一般的にイメージ出来そうな交際をしているのなら、下世話な好奇心ももたげたかもしれないが、やりにくいとしか言いようがない。
彼女から様子を探ろうにもお見舞いになった時点で既に学校に来なくなっていた。
そして訃報が聞かされる。
噂だが、ヤツは最後まで彼女を好きなフリを貫き通したらしい。
最後には『生まれ変わったら結婚しよう』とまで言ったそうだ。
それ、ホントに惚れてる相手でも中学生がなかなかいえるセリフじゃないぞ。雰囲気に押されたんだろーが、よく言えたな。
四十九日が済むか済まないかのうちに彼女の家族は引っ越したそうだ。
元々医療費がかさむので彼女の父親はより稼げる仕事に転職して海外で単身赴任をしていたらしい。単身赴任してても収入が増えるって相当だな。
彼女がヤツとギリギリまで一緒にいることを望んでいたからこちらに残っていたけれど、今後はできる限り家族一緒にいたいので父親のところに向かったいう風の噂。
墓とかどうなってるんだろう?
悪ふざけの結果がこんな形で終わり、オレ達は多少おとなしくなった。
ヤツもそれでも情が移りさぞへこんでいるかと思いきや、何か違う方向に行ったのか更にはっちゃけてしまった。
『死んでしまった来世を約束した彼女の話』でおねーさま方の同情を引き、彼女のいない心の隙間を埋めたいとか、さみしいと人肌が恋しくなるとか、一晩でいいから代わりになってくれないかとか、彼女を思い出したいからとか、それっぽく言って、付き合ってもいない複数の女性とヤりまくったそうだ。
彼女とは肉体的には手を繋ぐまでで止まってなかったか? まさか入院先でヤったわけじゃあるまいし。
あの時一瞬した尊敬を返せ。
そんな事をいつまで続けていたか、卒業で別れたオレは知らないが、知り合いの知り合いから聞いた噂によると、今度は中学の時に付き合っていた死んだ彼女を今まで忘れられなかったがやっと好きになれる人が出来たとかって口説き文句でものすごい美人を落としたとか。
美化されるであろう思い出に勝ったあるいはヤツを過去の呪縛から解き放ったとなればお相手の自尊心もさぞ満たされただろうし、一応確かに付き合ってはいなかったが実際はとっかえひっかえしていた過去を不自然じゃなく隠そうとしたのだろう。かといって全然いなかったでは嘘っぽいし、まるで恋愛経験がないと思われるのもしゃくだろうし。
余すことなく彼女を活用しているらしい。
で、その後ヤツは付き合ってはないが寝た相手の一人に刺されて死んだ。
そりゃ適当に手を出しまくれば一人や二人思い詰めるのが混じっててもおかしくはないだろーよ。
彼女はきっと天国にいるだろうからヤツと会うことはないだろう。
来世でも再会出来ないに違いない。
彼女が最後に持った希望が叶うことは恐らくない。
それを少し、ほんの少しだけ残念に思った。
ダチが集まって最下位は罰ゲーム付きの勝負をやった。
結果、オレは可もなく不可もなくという成績だったが、当然最下位のヤツはいる。
罰ゲームはいわゆる女子に嘘の告白をするというものだった。
確かに愛の告白をするのは恥ずかしい年頃……少なくともオレは恥ずかしいと思うのである意味充分罰ゲームだが、される方の女子はそれどころではすまない。
勝負が終わる頃にはみんなやや冷静になっていたものの、今更罰ゲームを変えようなどといって水を差す度胸がある輩もいなかった。
……折衷案というか、もし相手がヤツを好きだった場合しばらく付き合って、なんか美しい思い出みたいに演出して別れるようにしようということでまとまった。
結局ガキが考えることだ。
告白相手に選ばれたのはいつもいるかいないかわからない……というかよく学校を休んでいる大人しい女子だった。
こういってはあれだが、告ろうが付き合おうが振ろうが友人に言いふらしたりしなさそうという、当時女子に持っていたよくも悪くも幻想の上に成り立った幾分卑怯な理由で選ばれた相手だ。
罰ゲームなので、メッセでもSNSでもなく古典的に校舎裏に呼び出して、皆が物陰からこっそりと見ている中、告白は始まる。
ヤツは真っ赤になってしどろもどろで本当に相手が好きなんじゃないかと言いたくなるような有様だったが、単に告白するというシチュエーションに照れて戸惑っているだけだろう。
まぁ向こうだってなれてないだろうから似たようなもんだろ……と思っていたら、やたらと真剣な表情で、自分も好きだけど、余命を宣告されてるから付き合えないとか言い出した。
ちょいまて、余命とか言ってる病人がその辺の公立中学通ってるもんか!? 確かに休みがちだけど。
ヤツもオレらも呆然としているうちに、ごめんなさいとぺこりと一礼して彼女は去って行った。
顔を見合わせたが、誰も罰ゲームが成り立ったのかどうか判断できず、その日はなんとなくお開きになった。
……いや、告白はしたのだから終わってるのか?
もしや嘘だとばれていてだから向こうも嘘をついたのか? と一晩寝て思いついたが、その後教室で会ったヤツ曰く。
夜に彼女のお袋さんが訪ねてきて、彼女がせっかく好きな人に告白されたのにと泣いていたので、辛いことになるだろうが最後まで一緒にいてやってくれないかと頭を下げられたそうだ。
そんな話を聞いては引くに引けなくなり、ヤツはもう一度彼女にそれでもいいから付き合ってくれと告白する羽目になった。
付き合うといっても、一緒にどこかに行くとかはごくごく最初だけですぐにお見舞いに変わった……らしい。
いちいち報告されるものでも根掘り葉掘り聞き出すものでもない。
もう少し一般的にイメージ出来そうな交際をしているのなら、下世話な好奇心ももたげたかもしれないが、やりにくいとしか言いようがない。
彼女から様子を探ろうにもお見舞いになった時点で既に学校に来なくなっていた。
そして訃報が聞かされる。
噂だが、ヤツは最後まで彼女を好きなフリを貫き通したらしい。
最後には『生まれ変わったら結婚しよう』とまで言ったそうだ。
それ、ホントに惚れてる相手でも中学生がなかなかいえるセリフじゃないぞ。雰囲気に押されたんだろーが、よく言えたな。
四十九日が済むか済まないかのうちに彼女の家族は引っ越したそうだ。
元々医療費がかさむので彼女の父親はより稼げる仕事に転職して海外で単身赴任をしていたらしい。単身赴任してても収入が増えるって相当だな。
彼女がヤツとギリギリまで一緒にいることを望んでいたからこちらに残っていたけれど、今後はできる限り家族一緒にいたいので父親のところに向かったいう風の噂。
墓とかどうなってるんだろう?
悪ふざけの結果がこんな形で終わり、オレ達は多少おとなしくなった。
ヤツもそれでも情が移りさぞへこんでいるかと思いきや、何か違う方向に行ったのか更にはっちゃけてしまった。
『死んでしまった来世を約束した彼女の話』でおねーさま方の同情を引き、彼女のいない心の隙間を埋めたいとか、さみしいと人肌が恋しくなるとか、一晩でいいから代わりになってくれないかとか、彼女を思い出したいからとか、それっぽく言って、付き合ってもいない複数の女性とヤりまくったそうだ。
彼女とは肉体的には手を繋ぐまでで止まってなかったか? まさか入院先でヤったわけじゃあるまいし。
あの時一瞬した尊敬を返せ。
そんな事をいつまで続けていたか、卒業で別れたオレは知らないが、知り合いの知り合いから聞いた噂によると、今度は中学の時に付き合っていた死んだ彼女を今まで忘れられなかったがやっと好きになれる人が出来たとかって口説き文句でものすごい美人を落としたとか。
美化されるであろう思い出に勝ったあるいはヤツを過去の呪縛から解き放ったとなればお相手の自尊心もさぞ満たされただろうし、一応確かに付き合ってはいなかったが実際はとっかえひっかえしていた過去を不自然じゃなく隠そうとしたのだろう。かといって全然いなかったでは嘘っぽいし、まるで恋愛経験がないと思われるのもしゃくだろうし。
余すことなく彼女を活用しているらしい。
で、その後ヤツは付き合ってはないが寝た相手の一人に刺されて死んだ。
そりゃ適当に手を出しまくれば一人や二人思い詰めるのが混じっててもおかしくはないだろーよ。
彼女はきっと天国にいるだろうからヤツと会うことはないだろう。
来世でも再会出来ないに違いない。
彼女が最後に持った希望が叶うことは恐らくない。
それを少し、ほんの少しだけ残念に思った。
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