そうして怪談だけが残った

こうやさい

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 結局学祭がまだ行われないまま、先に修学旅行の時期が来てしまった。これはおいそれとはずらせない。
 そうして皆が乗ったバスはものの見事に事故に遭った。
 死んだのは違う名前を歌われたもの。
 生き残ったのは自分の名前を歌われたもの。
 本当にそうなのかは確かめていない。
 だってあれは夢だ。
 そうとでも思わなければやってられない。

 クラス全員死ねばいいのにと思っていた。
 そうじゃないなら自分が異世界に行きたかった。
 けれどどちらも叶わなかった。

 小さな声で歌を歌う。
 まともに身体を動かしていなかったせいか音程が狂う。
 もう誰の名を歌っても何も起こらない。

 どうしてあそこで悩んでしまったのだろうか?
 それでも死にたくないと思ったのだろうか?
 あるいは異世界で何をどうしたいかが分からなかったからだろうか?
 異世界でも何も出来ないと思ってしまったからだろうか?
 ――すべては夢の彼方の話だが。
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