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それからも時々誰かのスマホが表れて歌を歌う。
そして知ってる名前だったり知らない名前だったり持ち主の名前だったり役職名だったり恐らく名前であろう何かだったりの誕生を祝う。
その度に持ち主が様々な形で消えてゆく。
いつの間にか担任も来なくなった。彼が違う名前で誕生を祝われたのはどれくらい前だったのだろう。
それでもクラスの皆は学校を休まない。
あれほどほっとした表情で下校して、あれほど怯えた表情で登校してくるのに。
一人でいるのが怖いなら家族でも店でも駅の人混みでもいるところはどこにでもある。
補導されるなんてむしろ望むところだろう。恐らく警察でもどうにも出来ないだろうとはいえ。
友達といたいのだとしても何もこの教室に集まる必要はない。
それでも来てしまうのは真実を知っているのはここにいるものだけだからだろう。
この学校に『『ハッピーバースディートゥーユー』を歌うスマホ』なんて怪談は本来存在していない。
スマホの歴史が浅いからなどという理由ではない。
そもそもこの話は学祭の出し物のための仕込みだった。
劇をやることになり一部の人達がやたらと張り切っていたのを横目で眺めていた記憶がある。
あらすじとしては同じように自分のスマホに別人の名前で誕生日を祝われたら、その人は本来存在しない人であり消えてしまうという教室が舞台の一幕ホラーだ。
最後に残った一人はスマホと一緒に自分の名前を歌い、ただ一人生き残り、スマホを手に教室から出て行く。
どう見積もっても素人がやって観客を引きつけられるようなシロモノではない。
それは分かっていたのか、誰かが前半部で流れる噂を実際に流してみようと言いはじめた。夏休み前の話だ。
ちょっと流しただけなのに夏休みという時間は噂を収束させるどころか煽った。
『本来存在しなかった』が『異世界転生』になってる辺り、よほど夏休みが終わるのがいやな人が複数いたに違いない。
ところがその劇が上演される事はなかった。
その夏に校舎の耐震性に問題があることが発覚してしまい、その工事のためよほどの理由がない限り校内そのものに出入り禁止とされた。
劇なんて練習も小道具も作ることも出来ない。
他も同じような理由で準備が進まず、学祭は延期の上で簡略化が決まった。
なのに歌は流れてくる。
シナリオの通り自分の名を歌えば助かるのかもしれない。
けれど違う名を呼ばれなかった人も姿を消した。
それに歌が始まると何故か動けなくなった。単純に怖いだけなのか、何かの力が働いているのかは分からない。
そして知ってる名前だったり知らない名前だったり持ち主の名前だったり役職名だったり恐らく名前であろう何かだったりの誕生を祝う。
その度に持ち主が様々な形で消えてゆく。
いつの間にか担任も来なくなった。彼が違う名前で誕生を祝われたのはどれくらい前だったのだろう。
それでもクラスの皆は学校を休まない。
あれほどほっとした表情で下校して、あれほど怯えた表情で登校してくるのに。
一人でいるのが怖いなら家族でも店でも駅の人混みでもいるところはどこにでもある。
補導されるなんてむしろ望むところだろう。恐らく警察でもどうにも出来ないだろうとはいえ。
友達といたいのだとしても何もこの教室に集まる必要はない。
それでも来てしまうのは真実を知っているのはここにいるものだけだからだろう。
この学校に『『ハッピーバースディートゥーユー』を歌うスマホ』なんて怪談は本来存在していない。
スマホの歴史が浅いからなどという理由ではない。
そもそもこの話は学祭の出し物のための仕込みだった。
劇をやることになり一部の人達がやたらと張り切っていたのを横目で眺めていた記憶がある。
あらすじとしては同じように自分のスマホに別人の名前で誕生日を祝われたら、その人は本来存在しない人であり消えてしまうという教室が舞台の一幕ホラーだ。
最後に残った一人はスマホと一緒に自分の名前を歌い、ただ一人生き残り、スマホを手に教室から出て行く。
どう見積もっても素人がやって観客を引きつけられるようなシロモノではない。
それは分かっていたのか、誰かが前半部で流れる噂を実際に流してみようと言いはじめた。夏休み前の話だ。
ちょっと流しただけなのに夏休みという時間は噂を収束させるどころか煽った。
『本来存在しなかった』が『異世界転生』になってる辺り、よほど夏休みが終わるのがいやな人が複数いたに違いない。
ところがその劇が上演される事はなかった。
その夏に校舎の耐震性に問題があることが発覚してしまい、その工事のためよほどの理由がない限り校内そのものに出入り禁止とされた。
劇なんて練習も小道具も作ることも出来ない。
他も同じような理由で準備が進まず、学祭は延期の上で簡略化が決まった。
なのに歌は流れてくる。
シナリオの通り自分の名を歌えば助かるのかもしれない。
けれど違う名を呼ばれなかった人も姿を消した。
それに歌が始まると何故か動けなくなった。単純に怖いだけなのか、何かの力が働いているのかは分からない。
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