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教室で女子がスマホを弄っていた。
校則で禁止されているはずとはいえ今日日珍しい光景ではない。
けれど彼女に関していえば珍しい。というより初めて見た。
今時の学生がスマホを持っていないとは思ってはいなかったが、少なくとも彼女が学校で触っているところを見たことはなかった。
もしかして身内が手術かなにかするとか事情があるのだろうか?
周りもそう思ったのか、彼女と仲のいい子がそんな趣旨のことを話しかけている。
その瞬間、着信音が鳴り響いた。
彼女のスマホだ。J-POPではなくクラッシックなところに性格が表れてるな。
しかし校則違反もやりなれないとマナーモードにするということが思い浮かばないらしい。まー、担任がなんか今日まだ来てないから別にいいけど。
彼女がややぎこちない動作で画面をタップする。
途端にどこかくぐもった異音が流れてきたので、音が大きくなっていたか間違えてスピーカーにしてしまったのだろう。
そして教室に割れた音が響く。それが知っている曲だったので周りがざわめく。
―――ハッピバースディーディア……。
そこで歌われた名前は聞き覚えのない響きを持つもので、少なくとも彼女のものではない。
次の瞬間、彼女の身体が赤く染まり崩れた。
悲鳴の中、どこか苺ジャムに似たそれは溶けきり消えてしまう。
後にはただスマホだけがあった。
あまりの非現実感に却って皆が黙り込む。
ようやく入ってきた担任がその静かさにたじろいだ。
その日以来、このクラスでスマホを持ち込む人はいなくなった。スマホ中毒と呼ばれていたソシャゲマニアすら。
けれど。
「ひっ」
いつの間にかロッカーの上に置かれていたスマホを目にして誰もが息を飲む。
自分のものではなかったとしてもそこにあるというだけでトラウマを引き起こす。
着信音が鳴り、何故か勝手に通話状態になる。
歌が流れ始めると同時に耳を塞いでしゃがみ込み震え始めた女生徒がいた。
誰もどうしていいか分からず、視線が彼女から逸らされる。現実なのにリアリティーがない光景とはいえ見たいものではない。
皆、同じ事が起こらないとは思っていなかった。
そしてスマホが歌い上げたのはけれど彼女の名前だった。
慌ててそちらを見ると、彼女の姿は消えていた。
校則で禁止されているはずとはいえ今日日珍しい光景ではない。
けれど彼女に関していえば珍しい。というより初めて見た。
今時の学生がスマホを持っていないとは思ってはいなかったが、少なくとも彼女が学校で触っているところを見たことはなかった。
もしかして身内が手術かなにかするとか事情があるのだろうか?
周りもそう思ったのか、彼女と仲のいい子がそんな趣旨のことを話しかけている。
その瞬間、着信音が鳴り響いた。
彼女のスマホだ。J-POPではなくクラッシックなところに性格が表れてるな。
しかし校則違反もやりなれないとマナーモードにするということが思い浮かばないらしい。まー、担任がなんか今日まだ来てないから別にいいけど。
彼女がややぎこちない動作で画面をタップする。
途端にどこかくぐもった異音が流れてきたので、音が大きくなっていたか間違えてスピーカーにしてしまったのだろう。
そして教室に割れた音が響く。それが知っている曲だったので周りがざわめく。
―――ハッピバースディーディア……。
そこで歌われた名前は聞き覚えのない響きを持つもので、少なくとも彼女のものではない。
次の瞬間、彼女の身体が赤く染まり崩れた。
悲鳴の中、どこか苺ジャムに似たそれは溶けきり消えてしまう。
後にはただスマホだけがあった。
あまりの非現実感に却って皆が黙り込む。
ようやく入ってきた担任がその静かさにたじろいだ。
その日以来、このクラスでスマホを持ち込む人はいなくなった。スマホ中毒と呼ばれていたソシャゲマニアすら。
けれど。
「ひっ」
いつの間にかロッカーの上に置かれていたスマホを目にして誰もが息を飲む。
自分のものではなかったとしてもそこにあるというだけでトラウマを引き起こす。
着信音が鳴り、何故か勝手に通話状態になる。
歌が流れ始めると同時に耳を塞いでしゃがみ込み震え始めた女生徒がいた。
誰もどうしていいか分からず、視線が彼女から逸らされる。現実なのにリアリティーがない光景とはいえ見たいものではない。
皆、同じ事が起こらないとは思っていなかった。
そしてスマホが歌い上げたのはけれど彼女の名前だった。
慌ててそちらを見ると、彼女の姿は消えていた。
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