小さな太陽と大きな月

羽衣 狐火

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蠢く不安

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「うん、発作は落ち着いたようだね」

服を体の真ん中まで捲り、空いた隙間から担当の医者が聴診器で体の様子を音で探る

「はい、もういいよ」

そう言って初対面の医者は、ニコリと笑って、聴診器を夏海の腹から離した

「体は痣だらけで起きるのとか、動くのは辛いだろうけど、頑張ってね」

初めて見る医者に、なるべく薄い反応で返しながら答えていく

「じゃあ夏海ちゃんは体育祭で倒れたんだね?…うーん熱中症では無さそうだし……取り敢えず様子を見てみようか」

「はい、ありがとうございます」

お礼を言うとその医者は忙しいのか、しばらく絶対安静だからね!と言って夏海が寝ている部屋をバタバタと出ていった

「…疲れた」

「騒がしい人でしょ?あれでもうちの病院じゃ次期院長って言われてるんだけどね~」

いつの間にか入ってきた美鈴さんが点滴のパックの残りの量を見にカラカラとパソコンが乗ったカートを押しながらやってきていた

「美鈴さん美鈴さん」

「んー?」

「いつになったら退院できるかな?」

ニコニコと返事を返していた美鈴さんの手がピタリと止まった
少し顔を動かして表情を伺うと、難しい顔で点滴のパックを睨んでいる

「美鈴さん?どうかしたの?」

夏海が声をかけると、驚いて我に返ったのか、少し汗をかいてな、何でもないよ、もうすぐ退院できるかもね、ちゃんと直そうね

「うん、頑張る……」

夏海が返事をした頃には夏海は薬の副作用でウトウトとし始めていたため、美鈴はクスリと笑って布団を夏海の肩まで優しく掛けた


次に夏海が目を覚ましたのは1日過ぎて次の日のお昼だった

「寝過ぎちゃったかな…?」

相変わらず起きようとしたら体が悲鳴をあげたので、痛みに眉を寄せながら元の体制に戻った

「んー……」

昨日よりかは首の痛みが取れていたので、顔を横に向けて窓をみる
青空で、大きな入道雲がアイスのような形に出来上がっていて、病院の敷地に植わっているおおきな木の枝に、小鳥が足を休めて可愛らしいさえずりを披露していた

「…君はいいね、自由に空を飛べるんでしょ?私は難しい病気で全速力で走ることも出来ないし、体育もみんなに混じって出来ないもの」

そうやって小鳥に話しかけと、小鳥は夏海のことをじっと見つめていた、がもちろん鳥が人間の言葉を理解するはずもなく、またピチチチと歌うようにさえずり出した

「…はぁ」

昨日の美鈴の顔を思い出して、夏海は心に重くのしかかるような不安を取っ払うように、大きく息を吸って、短く息を吐いたのだった
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