異形どものパレヰド

モブB

文字の大きさ
上 下
3 / 3
メリーさん篇

ショートケーキ危機一髪

しおりを挟む
 【もしもし、私メリーさん。今コンビニを出たの。……ねえ、なんで私がこんなことしなきゃいけないの】
「いや、電話うざかったから。つかケーキまだ?遅くね?」
【……またかけるわ】
わあ、可哀想。電話かけるのがアイデンティティなんやで許したりィ。まあ口には出さんけど。というかメリーはんも難儀やなあ、いちいち自分の場所伝えるんか。面倒くさいなァ。電話一発目で背後に出て喰うたればええのに。わてならそうするんやけどなァ。最近の子は食に困らんのやろか。
 それにしても異形にパシらせるなんてこいつ鬼やな。人でありつつ人でなしやな。おもろ。
「なァなァ人でなし」
「なんだ産業廃棄物、今すぐ便所に突っ込まれたいのか」
「正直すまんかった」
あーこわ。こんなんに使役されるなんて、わて、ツイてへんわ。アンラッキィボォイやわ。あとこんなんに電話してしもたメリーはんもツイてへんわ。アンラッキィガァルやわ。
「あ、メリーはんにパシらせたショートケーキ、わても食ってええんやろ?」
「……貸しひとつな」
「ほんま?おおきにー!ヨミ、愛してるで!」
「うっわキモ、何この老いぼれ狐…きっつ……」
「え、酷ない?なあ、酷ない?わて神様やで?なあ?」
「神だろうとなんだろうとキモいもんはキモい」
いややわ、生理?なんて言うたら右の脇腹に回し蹴りキメられてしもた。痛い。どんくらい痛いか言うたらな、せやな、階段十段くらい転げ落ちた感じやな。多分。わて転げ落ちたことないで知らんけど、まあこんくらい痛いはずや。
 お、またヨミのスマホが鳴り出したで。難儀やねェ、ほんまに。
【もしもし、私メリーさん。今あなたの家の前にいるの】
「ケーキは?まだ?蝸牛かお前」
【なっ…!いつもならあと四段階は踏むのに、私、…私こうして頑張って……ぐすっ……頑張って走った、のに…!】
「…泣くなよ。ケーキは?」
「えっ、メリーはん泣いたん?これいじめやで!いじめ駄目やでヨミ!」
【両手が塞がって扉を開けれないの……開けてよぉ…】
「琥珀、私の部屋に通しといて」
「あいよ」
血も涙も無い鬼やと思うとったけどちっとは動揺しとるみたいやな。そりゃ泣き出す異形なんて見たことなかったんやろうけど。それにしてもわてを無視するなんて酷い子ォやね、まったく。
 「いらっしゃーい。……およ、えらい可愛らしお嬢ちゃんやこと」
「ひっ!やだ、お化け!」
「失敬な。わて、一応神様やで?まあそんな話はええわ、あがりィや」
「……お、お邪魔します」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...