異形どものパレヰド

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メリーさん篇

【もしもし。私、メリーさん】

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 私は今、混乱している。
 ひっきりなしに鳴るのは普段使っているスマホ、仕事用の携帯数台、家にある黒電話。別に携帯が同時に鳴るなんてよくあることだから気にしないが、黒電話も含めて全てが鳴るというのは今までで初めてだし、何より気味が悪い。
 「おい、琥珀」
「あい、なんでっしゃろ」
「この状況で呼ばれて“なんでっしゃろ”はないだろお前。理解が遅い」
神主のような服を着て二足歩行をし、ヒトの言葉を話す二メートル半はあろう巨大な白い狐。こいつは琥珀、私が初めて使役した異形。もうすっかり人間界に馴染み、家の敷地内であればぽてぽてと歩き回りながらポテトチップスを頬張るというなんとも図々しい狐である。
「いやァ、なんや喧し思うとったけど、ヨミのストーカーさんやったんやな。早う出たりや」
「ストーカーってレベルで済む話じゃないから。晩飯抜かれたいのか?」
「あっ、それはあかん!あかんで!今日の夕餉ゆうげはいなり寿司やてナミ子ママ言うてたからな!」
 ぎゃんぎゃんと駄々っ子の如く騒ぐ馬鹿を放っておいて少し考えてみる。そこそこ力のある異形であればこうして干渉することはできる。しかし電話だけ鳴り、他は干渉してこないということは電話関連の異形ではないか。電話関連の異形で勝手に電話をかけてくる迷惑な奴は。
「……《メリーさん》、か」
刹那、あれほど煩く鳴り続けていた黒電話や携帯がぴたりと鳴るのを止めた。大当たりだろう。
 「メリーさんって、あの?三本足で口が耳まで裂けとるっつー、怖いババアやんな?」
「いや、それ全然違う。三本足のリカちゃんと口裂け女とダッシュババア混じってる」
「ボケただけやんけ。……ほな、電話出たればええんとちゃうの?構ったれば満足するやろ」
「なるほど、一理ある」
琥珀の考えに納得するが早いかスマホが鳴り出した。タイミングが良すぎるのでいっそ清々しいレベルである。私は迷いなく電話に出た。
「もしもし」
【もしもし、私メリーさん。今四丁目のコンビニの前よ】
「私は四ツ谷ヨミさん。コンビニでショートケーキ三つ買って来て、よろしく」
【え、ちょ、】
何やら言いたげなメリーさんを放っておいて一方的に通話を切る。これで動揺する程度の異形だ、せいぜい精神的に疲れさせる程度の力しかないのだ。この程度なら寝ながらでも使役できるだろう。
「……今のは若干可哀想やな、パシりやで」
「あんなに電話したがってた相手にパシられるなら本望なんじゃね」
「うーん、それ言われると流石のわてもフォローできんわ」
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