2 / 3
メリーさん篇
【もしもし。私、メリーさん】
しおりを挟む
私は今、混乱している。
ひっきりなしに鳴るのは普段使っているスマホ、仕事用の携帯数台、家にある黒電話。別に携帯が同時に鳴るなんてよくあることだから気にしないが、黒電話も含めて全てが鳴るというのは今までで初めてだし、何より気味が悪い。
「おい、琥珀」
「あい、なんでっしゃろ」
「この状況で呼ばれて“なんでっしゃろ”はないだろお前。理解が遅い」
神主のような服を着て二足歩行をし、ヒトの言葉を話す二メートル半はあろう巨大な白い狐。こいつは琥珀、私が初めて使役した異形。もうすっかり人間界に馴染み、家の敷地内であればぽてぽてと歩き回りながらポテトチップスを頬張るというなんとも図々しい狐である。
「いやァ、なんや喧し思うとったけど、ヨミのストーカーさんやったんやな。早う出たりや」
「ストーカーってレベルで済む話じゃないから。晩飯抜かれたいのか?」
「あっ、それはあかん!あかんで!今日の夕餉はいなり寿司やてナミ子ママ言うてたからな!」
ぎゃんぎゃんと駄々っ子の如く騒ぐ馬鹿を放っておいて少し考えてみる。そこそこ力のある異形であればこうして干渉することはできる。しかし電話だけ鳴り、他は干渉してこないということは電話関連の異形ではないか。電話関連の異形で勝手に電話をかけてくる迷惑な奴は。
「……《メリーさん》、か」
刹那、あれほど煩く鳴り続けていた黒電話や携帯がぴたりと鳴るのを止めた。大当たりだろう。
「メリーさんって、あの?三本足で口が耳まで裂けとるっつー、怖いババアやんな?」
「いや、それ全然違う。三本足のリカちゃんと口裂け女とダッシュババア混じってる」
「ボケただけやんけ。……ほな、電話出たればええんとちゃうの?構ったれば満足するやろ」
「なるほど、一理ある」
琥珀の考えに納得するが早いかスマホが鳴り出した。タイミングが良すぎるのでいっそ清々しいレベルである。私は迷いなく電話に出た。
「もしもし」
【もしもし、私メリーさん。今四丁目のコンビニの前よ】
「私は四ツ谷ヨミさん。コンビニでショートケーキ三つ買って来て、よろしく」
【え、ちょ、】
何やら言いたげなメリーさんを放っておいて一方的に通話を切る。これで動揺する程度の異形だ、せいぜい精神的に疲れさせる程度の力しかないのだ。この程度なら寝ながらでも使役できるだろう。
「……今のは若干可哀想やな、パシりやで」
「あんなに電話したがってた相手にパシられるなら本望なんじゃね」
「うーん、それ言われると流石のわてもフォローできんわ」
ひっきりなしに鳴るのは普段使っているスマホ、仕事用の携帯数台、家にある黒電話。別に携帯が同時に鳴るなんてよくあることだから気にしないが、黒電話も含めて全てが鳴るというのは今までで初めてだし、何より気味が悪い。
「おい、琥珀」
「あい、なんでっしゃろ」
「この状況で呼ばれて“なんでっしゃろ”はないだろお前。理解が遅い」
神主のような服を着て二足歩行をし、ヒトの言葉を話す二メートル半はあろう巨大な白い狐。こいつは琥珀、私が初めて使役した異形。もうすっかり人間界に馴染み、家の敷地内であればぽてぽてと歩き回りながらポテトチップスを頬張るというなんとも図々しい狐である。
「いやァ、なんや喧し思うとったけど、ヨミのストーカーさんやったんやな。早う出たりや」
「ストーカーってレベルで済む話じゃないから。晩飯抜かれたいのか?」
「あっ、それはあかん!あかんで!今日の夕餉はいなり寿司やてナミ子ママ言うてたからな!」
ぎゃんぎゃんと駄々っ子の如く騒ぐ馬鹿を放っておいて少し考えてみる。そこそこ力のある異形であればこうして干渉することはできる。しかし電話だけ鳴り、他は干渉してこないということは電話関連の異形ではないか。電話関連の異形で勝手に電話をかけてくる迷惑な奴は。
「……《メリーさん》、か」
刹那、あれほど煩く鳴り続けていた黒電話や携帯がぴたりと鳴るのを止めた。大当たりだろう。
「メリーさんって、あの?三本足で口が耳まで裂けとるっつー、怖いババアやんな?」
「いや、それ全然違う。三本足のリカちゃんと口裂け女とダッシュババア混じってる」
「ボケただけやんけ。……ほな、電話出たればええんとちゃうの?構ったれば満足するやろ」
「なるほど、一理ある」
琥珀の考えに納得するが早いかスマホが鳴り出した。タイミングが良すぎるのでいっそ清々しいレベルである。私は迷いなく電話に出た。
「もしもし」
【もしもし、私メリーさん。今四丁目のコンビニの前よ】
「私は四ツ谷ヨミさん。コンビニでショートケーキ三つ買って来て、よろしく」
【え、ちょ、】
何やら言いたげなメリーさんを放っておいて一方的に通話を切る。これで動揺する程度の異形だ、せいぜい精神的に疲れさせる程度の力しかないのだ。この程度なら寝ながらでも使役できるだろう。
「……今のは若干可哀想やな、パシりやで」
「あんなに電話したがってた相手にパシられるなら本望なんじゃね」
「うーん、それ言われると流石のわてもフォローできんわ」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。


セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる