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戦士:秋宮魁斗

絶望

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「なんで太陽が2つも..」

片方が太陽ではないと気付いたのは、それから間もなくのことだった。
動いている。というより、どんどん近づいてきている?

「待って、あれってもしかして..」

突然ヘラが青ざめ、怯えた声を出した。
徐々に接近する太陽に翼のようなものが見える。冗談だろ。

ものすごい爆音が周囲に響き渡る。
太陽だと思っていたそれが、地上に着陸しこちらを睨んだ。

「なんなの..こいつ。」

全身が炎に包まれている翼を持ったドラゴン。体長は20メートルほどある。アレクが以前倒した奴ほどではないが、ものすごい大きさだ。おそらく..

「こいつ、上位魔獣、かな。魁斗。」

声が震えているのがすぐにわかった。青ざめた顔のままヘラは立ち尽くしている。
守りたい。ヘラを守ってあげたい。でもそんな力がないことは自分が一番わかっている。2軍の時点で勝負は決まっているのだ。

逃げよう。ヘラを連れて今すぐここから。走るくらいなら俺にもできる。

「へ、ネル!逃げよう!早く!」

そういった自分の足が全く動かない。ひたすらその場で震えるばかりだ。
くっそ!なんで足すら動かない!

「ビーテさん!ビーテさん!」

すがる思いでビーテを探す。3人で助からなければ意味がない。

「多分、逃げたよあいつ。」

「え?」

逃げた?俺らを置いて真っ先にか?なんて人だほんとに。

「ごめん魁斗。私ビビっちゃって足動かないや。先、逃げて。」

引きつった笑顔でヘラがこちらを見る。弱いからだ。俺が弱いからヘラが助けを求めることすらできない。

「うおらあぁぁ!」

太ももをバシバシと叩き、なんとか一歩踏み出す。なんとかヘラの下へ行くんだ。

「ネル!おぶされ!」

「え、でも。」

「いいから早く!」

ヘラを背負い、立ち上がる。一刻も早く立ち去るんだ!
幸いにもビーテはすでに逃げている。背負って逃げるだけだ!

不思議と炎のドラゴンはこちらを睨むだけで攻撃はしてこない。逃げられるんじゃないか?

ドラゴンに背を向け全力で走る。速く。遠くへ遠くへ。

もしかして敵意なんてなかったんじゃないか?たまたま通りかかっただけなんてこともあるよなきっと。

「魁斗..もう私たち、無理だよ。」

ヘラが泣いている。

「どうしたんだよネル!攻撃してこないし絶対逃げられるさ!」

「上..」

泣きながら空を指さすヘラ。
直後に響く爆音。まさか。

逃げる先に降りてきたのは、全身が凍った同じシルエットのドラゴン。

上位魔獣2体に囲まれたのか。
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