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一章 女神と花冠の乙女
33 とある村娘の短い一生 後
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あたしはこの日の夜、興奮のせいか、おかしな夢を見た。
暗い中でトロリとした甘い声が耳に吹き込まれる。
声と同時にフッと目に前に現れた青い宝石で出来たようなフィアリスの花。
それがあたしの胸の中へと吸い込まれるように入ってーーー消えたのよ。
次の日、変な夢の所為で、朝から頭がボウっとしていたあたしは、村の広場でぼんやりしていたら、見てしまった。見つけてしまったのよね、フィリアナを。
ーーーこれは運命。
誰かに夢の中で、そう言われた気がした。今ならわかるけど。
ーーーあれはあの方の声よ。時空神様の。
勿論、フィリアナに話をしに行ったわよ。転生者かどうか、確かめないとだし。呑気に妖精と戯れるその姿に腹が立ったけど、我慢してあげたのよ。
話掛ければ、フィリアナはガレール領からカタルの港町へと戻る途中だと言っていた。
「アンタも転生者でしょ」
そう言ったら、フィリアナはあたしの言っている事が分からないのか、しきりにヒロイン?前世?と首を傾げていた。
なんなのこいつ、イライラするし、わざと、とぼけてんのかしら?
それともまだ思い出してないだけ?
なんでこんなボヤッとした奴がヒロインやるのよ。
ーーー本当ならその場所はあたしが居るはずなのに。
そう思った瞬間、透けた腕があたしからフィリアナに向かって伸びた。
なにこれ、って口に出す前に酷い吐き気と頭痛が襲ってきて、虫の羽音のような、厭な耳障りな音が目眩を誘発する。
頭を抱えて蹲るあたしに、大丈夫ですか、とヒロインそのものの声がした、その刹那、身体を真っ二つに引き裂かれた感覚がして【元に】戻った。
困惑するフィリアナを無視して、あたしは踵を返して、それからーーーたしか、その日は取り敢えず家に帰ったのよね。
まだこの村に居るみたいだし、またチャンスを持てば良いって思ったのよ。
まだこの村にいるらしいし。
この時はなんでチャンスをなんて考えたのか、自分でも不思議だったけど。
今思えば、初期の設定の場面だったのよ、きっと。
私はその変な夢を見てから、揺らぐ陽炎みたいに過去の映像や前世の記憶を垣間見るようになった。
その中に、知らない感情や記憶の残滓もあったけど、【あたし】が【フィリアナ】になってからそれらがはっきりと見えて、漸く分かったわ。
やっぱりあたしがヒロインだったって事が。
次の日もその次の日もフィリアナを探したけれど、見つからず、漸く見つけたフィリアナに会うと困った顔をされて。
けど、あたしは気にならない。何故ならば、あたしはやらなきゃいけない事があったから。何をって、言われると困るけど、この時はそう思ったんだもの。
ーーーそう、設定をしないと。
あたしには【それ】が出来るって、夢の声が囁く。その声はチョコレートのように甘くて、どこか凶悪さを滲ませているのに、無邪気にも思えた。
ーーー間違いは糺されなくてはいけないって囁き。
あたしは強引にフィリアナ手を引いて人の少ない川辺へと連れ出した。
邪魔されたくないもの。
ここの川の水は冬でも凍らない。ここは魚釣りの穴場、人は疎らで、話をしても聞こえる人なんかいない。当然、木々に邪魔されて釣りをしてる大人からはこっちは見えないわ。
岩を降りるのにもたつくフィリアナを睨む。
手が痛いって言うから放してあげたのに、おっかなびっくりの足音に舌打ちが出る。
あたしは先に沢へと降りてフィリアナを待った。
この場所は危険だから子供だけで行ってはいけないなんて聞いていたけど、川底も深くは見えないし、流れも穏やかものじゃない。
グズグズしていてイライラするから、数メートル後ろにいるフィリアナに、早くしなさいと怒鳴りながら後ろを振り向こうとしたーーーその時。
フィリアナが掴んだ木の枝が大きくしなって、沢に降りたあたしの姿が釣り人から丸見えになった。
「何をしてるんだ!そこは危ないから立ち入る事は禁止されてーーー」
険しい顔で叱り付けてきた釣り人の言葉は、ドボン、と水音がした後に聞こえなくなった。
あたしは足を滑らせて、川へ落ちたのだ。
沈む身体は藻掻いても浮上できずに、水を吸い尽くしたマントが重石となって沈んで行く。
キラキラとした水面に、肺から吐き出された空気がゴボっと浮かび、それを見たのを最後に、頭に強い衝撃を受けたあたしは、意識が途絶えた。
また夢の中を漂う。
いつかの青いフィアリスの花がある。
あたしの胸の中に吸い込まれた、あの花。
今その花は、透明な膜に守られて、そこだけ清浄な空気に満ちる、絶対的な神域であるかのようだ。
あたしは近づいて、それを触ろうとしたけど、膜に弾かれて触れる事は出来ず、仕方なく周りからじっくりと眺める。触りたいと思ったら、薄い膜から滲み出てきた青い光があたしに届いて、青い光が記憶に変わる。
それは遠い過去の記憶。
あたしはこの時自分が何者であるべきかを理解したの。
そして、気が付いたらあたしは、頭から血を流して、青い顔でぐったりしている【自分】を見ていた。
泣きじゃくるフィリアナと、救助に携わった釣り人、呼ばれた警備兵。
あたしは死んだの?
ーーーいいえ、違うわ。だって、【そこにいる】じゃないの。フィリアナって言う名前のあたしが。
青いフィアリスが教えくれる。あたしの記憶。メイフィアだった時の記憶を。
だから、あたしはフィリアナじゃないといけないのよ。そうじゃないとおかしいじゃない?
だってあたしに女神の記憶があるって事は、隠しキャラのルートに違いないもの。
あたしは歓喜で叫びそうになったけど、このルートの攻略対象の時空神は難易度が高くて何度もやり直したのよね。
でも、ここはあたしの世界。プレイヤーはあたし。記憶を持ってるのがあたしなんだもの。今のフィリアナに前世の記憶が無いのも当たり前だったのよ。
じゃぁなんであたしが村娘になんてなってたのかは、この世界にきっと慣れる為よね。
そう思ったら、急に空気が渦巻いた気がした。
【あの】感覚。透けた腕があたしから出た時の。
今度は頭痛も吐き気も無くて、あたしはそのままフィリアナに手を伸ばしてーーー眼下にフィリアナが気を失って倒れるのを見たあたしも、そこで意識が無くなった。
そして、目が覚めた時に呼ばれた名前は【フィリアナ】だった。
元々あたしがフィリアナなんだもの。元に戻っただけの事。
これで、設定終了って事だったのよ。
チャプン、と湯を弾くと、湯船に浮かぶ花弁が小波に遊ぶ。
あたしは一枚の花びらを縁に追いやり、湯と一緒に溝へと落とす。
「結局あの村娘は死んじゃったのよね。可哀想に。あたしがアナタの分まで幸せになるわ」
時空神様にも、今すぐに会いに行きたいけど、もう少し待っててもらわなきゃ。
あたしの本当の身体も取り戻さなきゃいけないし、邪悪な存在から天界を開放もしないとね。
月明かりを運ぶ窓辺にいた妖精を引き寄せる。甘い女神の香りで。
「ふふふ、おいで」
そうしてあたしはその妖精を取り込んだ。
ほら、肌が白く輝くわ。
いつもお読みいただきましてありがとうございます!
暗い中でトロリとした甘い声が耳に吹き込まれる。
声と同時にフッと目に前に現れた青い宝石で出来たようなフィアリスの花。
それがあたしの胸の中へと吸い込まれるように入ってーーー消えたのよ。
次の日、変な夢の所為で、朝から頭がボウっとしていたあたしは、村の広場でぼんやりしていたら、見てしまった。見つけてしまったのよね、フィリアナを。
ーーーこれは運命。
誰かに夢の中で、そう言われた気がした。今ならわかるけど。
ーーーあれはあの方の声よ。時空神様の。
勿論、フィリアナに話をしに行ったわよ。転生者かどうか、確かめないとだし。呑気に妖精と戯れるその姿に腹が立ったけど、我慢してあげたのよ。
話掛ければ、フィリアナはガレール領からカタルの港町へと戻る途中だと言っていた。
「アンタも転生者でしょ」
そう言ったら、フィリアナはあたしの言っている事が分からないのか、しきりにヒロイン?前世?と首を傾げていた。
なんなのこいつ、イライラするし、わざと、とぼけてんのかしら?
それともまだ思い出してないだけ?
なんでこんなボヤッとした奴がヒロインやるのよ。
ーーー本当ならその場所はあたしが居るはずなのに。
そう思った瞬間、透けた腕があたしからフィリアナに向かって伸びた。
なにこれ、って口に出す前に酷い吐き気と頭痛が襲ってきて、虫の羽音のような、厭な耳障りな音が目眩を誘発する。
頭を抱えて蹲るあたしに、大丈夫ですか、とヒロインそのものの声がした、その刹那、身体を真っ二つに引き裂かれた感覚がして【元に】戻った。
困惑するフィリアナを無視して、あたしは踵を返して、それからーーーたしか、その日は取り敢えず家に帰ったのよね。
まだこの村に居るみたいだし、またチャンスを持てば良いって思ったのよ。
まだこの村にいるらしいし。
この時はなんでチャンスをなんて考えたのか、自分でも不思議だったけど。
今思えば、初期の設定の場面だったのよ、きっと。
私はその変な夢を見てから、揺らぐ陽炎みたいに過去の映像や前世の記憶を垣間見るようになった。
その中に、知らない感情や記憶の残滓もあったけど、【あたし】が【フィリアナ】になってからそれらがはっきりと見えて、漸く分かったわ。
やっぱりあたしがヒロインだったって事が。
次の日もその次の日もフィリアナを探したけれど、見つからず、漸く見つけたフィリアナに会うと困った顔をされて。
けど、あたしは気にならない。何故ならば、あたしはやらなきゃいけない事があったから。何をって、言われると困るけど、この時はそう思ったんだもの。
ーーーそう、設定をしないと。
あたしには【それ】が出来るって、夢の声が囁く。その声はチョコレートのように甘くて、どこか凶悪さを滲ませているのに、無邪気にも思えた。
ーーー間違いは糺されなくてはいけないって囁き。
あたしは強引にフィリアナ手を引いて人の少ない川辺へと連れ出した。
邪魔されたくないもの。
ここの川の水は冬でも凍らない。ここは魚釣りの穴場、人は疎らで、話をしても聞こえる人なんかいない。当然、木々に邪魔されて釣りをしてる大人からはこっちは見えないわ。
岩を降りるのにもたつくフィリアナを睨む。
手が痛いって言うから放してあげたのに、おっかなびっくりの足音に舌打ちが出る。
あたしは先に沢へと降りてフィリアナを待った。
この場所は危険だから子供だけで行ってはいけないなんて聞いていたけど、川底も深くは見えないし、流れも穏やかものじゃない。
グズグズしていてイライラするから、数メートル後ろにいるフィリアナに、早くしなさいと怒鳴りながら後ろを振り向こうとしたーーーその時。
フィリアナが掴んだ木の枝が大きくしなって、沢に降りたあたしの姿が釣り人から丸見えになった。
「何をしてるんだ!そこは危ないから立ち入る事は禁止されてーーー」
険しい顔で叱り付けてきた釣り人の言葉は、ドボン、と水音がした後に聞こえなくなった。
あたしは足を滑らせて、川へ落ちたのだ。
沈む身体は藻掻いても浮上できずに、水を吸い尽くしたマントが重石となって沈んで行く。
キラキラとした水面に、肺から吐き出された空気がゴボっと浮かび、それを見たのを最後に、頭に強い衝撃を受けたあたしは、意識が途絶えた。
また夢の中を漂う。
いつかの青いフィアリスの花がある。
あたしの胸の中に吸い込まれた、あの花。
今その花は、透明な膜に守られて、そこだけ清浄な空気に満ちる、絶対的な神域であるかのようだ。
あたしは近づいて、それを触ろうとしたけど、膜に弾かれて触れる事は出来ず、仕方なく周りからじっくりと眺める。触りたいと思ったら、薄い膜から滲み出てきた青い光があたしに届いて、青い光が記憶に変わる。
それは遠い過去の記憶。
あたしはこの時自分が何者であるべきかを理解したの。
そして、気が付いたらあたしは、頭から血を流して、青い顔でぐったりしている【自分】を見ていた。
泣きじゃくるフィリアナと、救助に携わった釣り人、呼ばれた警備兵。
あたしは死んだの?
ーーーいいえ、違うわ。だって、【そこにいる】じゃないの。フィリアナって言う名前のあたしが。
青いフィアリスが教えくれる。あたしの記憶。メイフィアだった時の記憶を。
だから、あたしはフィリアナじゃないといけないのよ。そうじゃないとおかしいじゃない?
だってあたしに女神の記憶があるって事は、隠しキャラのルートに違いないもの。
あたしは歓喜で叫びそうになったけど、このルートの攻略対象の時空神は難易度が高くて何度もやり直したのよね。
でも、ここはあたしの世界。プレイヤーはあたし。記憶を持ってるのがあたしなんだもの。今のフィリアナに前世の記憶が無いのも当たり前だったのよ。
じゃぁなんであたしが村娘になんてなってたのかは、この世界にきっと慣れる為よね。
そう思ったら、急に空気が渦巻いた気がした。
【あの】感覚。透けた腕があたしから出た時の。
今度は頭痛も吐き気も無くて、あたしはそのままフィリアナに手を伸ばしてーーー眼下にフィリアナが気を失って倒れるのを見たあたしも、そこで意識が無くなった。
そして、目が覚めた時に呼ばれた名前は【フィリアナ】だった。
元々あたしがフィリアナなんだもの。元に戻っただけの事。
これで、設定終了って事だったのよ。
チャプン、と湯を弾くと、湯船に浮かぶ花弁が小波に遊ぶ。
あたしは一枚の花びらを縁に追いやり、湯と一緒に溝へと落とす。
「結局あの村娘は死んじゃったのよね。可哀想に。あたしがアナタの分まで幸せになるわ」
時空神様にも、今すぐに会いに行きたいけど、もう少し待っててもらわなきゃ。
あたしの本当の身体も取り戻さなきゃいけないし、邪悪な存在から天界を開放もしないとね。
月明かりを運ぶ窓辺にいた妖精を引き寄せる。甘い女神の香りで。
「ふふふ、おいで」
そうしてあたしはその妖精を取り込んだ。
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