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1 公爵令嬢エルディアーナ
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エルディアーナは、人には言えない秘密を持つ、ちょっと普通じゃ無い公爵令嬢だ。
公爵令嬢の段階で、その高すぎる身分故に、既に普通とは言えない気もするが、それは、それ。
では、どのように普通じゃないのかいと言うと、それは前世持ちーーーー所謂転生者だと言う事とーーーー。
エルディアーナが産まれたばかりの頃は、あれ、見慣れた景色となんか違う?ここはドコ?程度の意識しか無かった。
それもそう、まだ赤子である。
生きる為に必死、大きくなる為に必死、食う、寝る、食う寝る出す、そして寝るのに忙しいからだ。
思考なんてしている暇は無い。
ここでは無い世界で生きていた、と考えが及んだのは齢三つになるか、ならないか位の時期で、思考能力がそだち『転生者』と言う言葉が閃いたのは五つの時だった。
この頃になると思考能力は飛躍的に伸び、前世の自分が、何処の誰だったかはわからずとも、イイ歳の、と言われる程度には大人だった事までを思い出した。
そんなこんなで、前世の記憶と思考能力は連動でもしているのか、まるで未完成のパズルが高速でピースを当てはめていくように、見掛けは幼女、中身はちょっと年期の入ったお嬢さんの、公爵令嬢が出来上がったのである。
まるでどこかの名探偵の様な状態のエルディアーナだが、そこで気が付いたのは、公爵家を覆う、重たくて冷たい、時に鋭い刃物が突き刺す様な雰囲気の大元だった。
幼女とは言え、子供故に大人の感情に敏感に察するものである。
だが原因まではわからず、悶々としていたのだが、大人の観察眼と洞察力があれば嫌でも気が付く。
では、その重たい雰囲気の原因は何かと言えば、エルディアーナの両親の不仲。
その不仲の理由が、エルディアーナの容姿ーーーー髪と瞳の色に起因する。
父親の公爵は輝くプラチナブロンドの髪に紫の瞳だ。
母親は黄金の髪とエメラルドの瞳だと、皆は言う。
母親の容姿を、何故人伝いで聞いているのかは、エルディアーナが母親と顔を合わせた事が無いから。
と、言うよりも、母親が部屋から出て来ないのだ。
エルディアーナは幸いにして、父親のテオバルドには溺愛されているので、寂しさを感じた事は無い。
ーーーーと言うか、その暇が無い程、父親の愛が重いのだ。
が、やはり母親を思う事はあった。
『嗚呼、おいたわしい奥様。あの娘が黒い髪と黒い瞳で産まれたばっかりに、旦那様に不貞を疑われるなんて、お可哀そう』
廊下を歩けば囁かれる悪意。
母の侍女、ロレッタの声と、その腰巾着の者達は悪言を囀るのに忙しそうだ。
コイツが、無いこと無いことを、母に吹き込んでいるのだろう。旦那様は酷い、不貞を疑われて奥様はお可哀そうとかね。
産後の精神状態が不安定な時に、あんな事言われまくったら、誰だって塞ぎ込みたくなるものだ。
因みに産まれたばかりの頃は、屋敷中で広がったこの悪意もエルディアーナが長じるに連れて小さくなっていった。
エルディアーナの顔立ちが、父親そっくりなのだ。
美形遺伝子万歳。
今は、エルディアーナの色彩は他に原因があるのでは、と高名な医者を招こうと手配している最中だ。
それに色彩が関係しているのかは分からないが、エルディアーナの身体は虚弱なのだ。
それも含めて、診ていただこうと言うことらしい。
まあ、この公爵家の雰囲気の悪さはロレッタ一味が振りまいているのだが、こういう輩は得てして己の所業に対する隠蔽が上手い。
テオバルドや家令の前ではしおらしく「旦那様のお言葉はお伝えしているのですが、奥様は不貞を疑われる事に、怯えておいでです」等と言っているのだから。
それにどうやらロレッタはテオバルドに気があるみたいだ。
後妻の地位を狙っているのかも知れない。
子供の耳年増を舐めんなよ?
言っている意味なんて分からないだろうと思っているから、エルディアーナの前で口が滑ったのだろうけど。
子供が何を言っても信憑性に欠けるって言えるし、エルディアーナの勘違いだって言い張れるし。
テオバルドは最初から不義などある筈が無いと、疑っていなかったようだが、側に侍るロレッタの所為で、パパ上の言葉がママ上に届いていないのだ。
何とか良い方法は無いものだろうか、と考えていたら、意外に早くそのチャンスはやってきた。
高名なお医者のフェザー先生がやってきた日、エルディアーナの病名が判明。
それは『魔力過多症』と言う珍しい症例で、身体の成長よりも、魔力の増え方が著しく多く、身体に負担が掛かるものだとの説明を受けた。
魔力過多症の子供は、身体に負荷が掛かっている魔力の成長を抑えようとして、無意識に抑え込み、色彩を黒くしてしまう子がいるのだとか。
ーーーー黒は総てを内包する色ですからね。
とはフェザー先生の言葉だ。
なる程、わからん。
そのフェザー先生に、魔力を少しずつ放出してご覧なさいと言われ、魔力操作を習う前の5歳児には難しく、先生に魔力を導かれてもババンと放出と相成り、応接室の大きな鏡にぶち当たってしまった。
すると、不思議な事に母、ソフィアの部屋と思わしきが鏡に映っているではないか。
折しも、ロレッタが無いこと無いことを吹き込んでいる場面だ。
それを観て、ポカンとするフェザー先生と顔を青くする父テオバルド。
テオバルドはエルディアーナを抱きかかえると、ソフィアの部屋にノックも無しに飛び込んだ。
この時のエルディアーナの色彩は魔力を放出した所為で、テオバルドのそれと同じ、プラチナブロンドの髪と紫の瞳で、母ソフィアが目をひん剥いて驚いていたのが印象的だった。
驚いていたのはロレッタも同じだったけど。
それからは怒涛の展開、ロレッタとその一味は地下牢へ、ロレッタによる洗脳が解けた母ソフィアと、父テオバルドはあっという間に和解、熱いなぁと子供じゃない、大人が思う位にラブラブになっていった。
うん、エルディアーナ、いい仕事した。
#####
お読みいただきましてありがとうございました(*´꒳`*)
今回は令嬢サイドのお話ですが、後もう一話、令嬢サイドのお話で、その次からはギルベルトサイドに戻ります。
公爵令嬢の段階で、その高すぎる身分故に、既に普通とは言えない気もするが、それは、それ。
では、どのように普通じゃないのかいと言うと、それは前世持ちーーーー所謂転生者だと言う事とーーーー。
エルディアーナが産まれたばかりの頃は、あれ、見慣れた景色となんか違う?ここはドコ?程度の意識しか無かった。
それもそう、まだ赤子である。
生きる為に必死、大きくなる為に必死、食う、寝る、食う寝る出す、そして寝るのに忙しいからだ。
思考なんてしている暇は無い。
ここでは無い世界で生きていた、と考えが及んだのは齢三つになるか、ならないか位の時期で、思考能力がそだち『転生者』と言う言葉が閃いたのは五つの時だった。
この頃になると思考能力は飛躍的に伸び、前世の自分が、何処の誰だったかはわからずとも、イイ歳の、と言われる程度には大人だった事までを思い出した。
そんなこんなで、前世の記憶と思考能力は連動でもしているのか、まるで未完成のパズルが高速でピースを当てはめていくように、見掛けは幼女、中身はちょっと年期の入ったお嬢さんの、公爵令嬢が出来上がったのである。
まるでどこかの名探偵の様な状態のエルディアーナだが、そこで気が付いたのは、公爵家を覆う、重たくて冷たい、時に鋭い刃物が突き刺す様な雰囲気の大元だった。
幼女とは言え、子供故に大人の感情に敏感に察するものである。
だが原因まではわからず、悶々としていたのだが、大人の観察眼と洞察力があれば嫌でも気が付く。
では、その重たい雰囲気の原因は何かと言えば、エルディアーナの両親の不仲。
その不仲の理由が、エルディアーナの容姿ーーーー髪と瞳の色に起因する。
父親の公爵は輝くプラチナブロンドの髪に紫の瞳だ。
母親は黄金の髪とエメラルドの瞳だと、皆は言う。
母親の容姿を、何故人伝いで聞いているのかは、エルディアーナが母親と顔を合わせた事が無いから。
と、言うよりも、母親が部屋から出て来ないのだ。
エルディアーナは幸いにして、父親のテオバルドには溺愛されているので、寂しさを感じた事は無い。
ーーーーと言うか、その暇が無い程、父親の愛が重いのだ。
が、やはり母親を思う事はあった。
『嗚呼、おいたわしい奥様。あの娘が黒い髪と黒い瞳で産まれたばっかりに、旦那様に不貞を疑われるなんて、お可哀そう』
廊下を歩けば囁かれる悪意。
母の侍女、ロレッタの声と、その腰巾着の者達は悪言を囀るのに忙しそうだ。
コイツが、無いこと無いことを、母に吹き込んでいるのだろう。旦那様は酷い、不貞を疑われて奥様はお可哀そうとかね。
産後の精神状態が不安定な時に、あんな事言われまくったら、誰だって塞ぎ込みたくなるものだ。
因みに産まれたばかりの頃は、屋敷中で広がったこの悪意もエルディアーナが長じるに連れて小さくなっていった。
エルディアーナの顔立ちが、父親そっくりなのだ。
美形遺伝子万歳。
今は、エルディアーナの色彩は他に原因があるのでは、と高名な医者を招こうと手配している最中だ。
それに色彩が関係しているのかは分からないが、エルディアーナの身体は虚弱なのだ。
それも含めて、診ていただこうと言うことらしい。
まあ、この公爵家の雰囲気の悪さはロレッタ一味が振りまいているのだが、こういう輩は得てして己の所業に対する隠蔽が上手い。
テオバルドや家令の前ではしおらしく「旦那様のお言葉はお伝えしているのですが、奥様は不貞を疑われる事に、怯えておいでです」等と言っているのだから。
それにどうやらロレッタはテオバルドに気があるみたいだ。
後妻の地位を狙っているのかも知れない。
子供の耳年増を舐めんなよ?
言っている意味なんて分からないだろうと思っているから、エルディアーナの前で口が滑ったのだろうけど。
子供が何を言っても信憑性に欠けるって言えるし、エルディアーナの勘違いだって言い張れるし。
テオバルドは最初から不義などある筈が無いと、疑っていなかったようだが、側に侍るロレッタの所為で、パパ上の言葉がママ上に届いていないのだ。
何とか良い方法は無いものだろうか、と考えていたら、意外に早くそのチャンスはやってきた。
高名なお医者のフェザー先生がやってきた日、エルディアーナの病名が判明。
それは『魔力過多症』と言う珍しい症例で、身体の成長よりも、魔力の増え方が著しく多く、身体に負担が掛かるものだとの説明を受けた。
魔力過多症の子供は、身体に負荷が掛かっている魔力の成長を抑えようとして、無意識に抑え込み、色彩を黒くしてしまう子がいるのだとか。
ーーーー黒は総てを内包する色ですからね。
とはフェザー先生の言葉だ。
なる程、わからん。
そのフェザー先生に、魔力を少しずつ放出してご覧なさいと言われ、魔力操作を習う前の5歳児には難しく、先生に魔力を導かれてもババンと放出と相成り、応接室の大きな鏡にぶち当たってしまった。
すると、不思議な事に母、ソフィアの部屋と思わしきが鏡に映っているではないか。
折しも、ロレッタが無いこと無いことを吹き込んでいる場面だ。
それを観て、ポカンとするフェザー先生と顔を青くする父テオバルド。
テオバルドはエルディアーナを抱きかかえると、ソフィアの部屋にノックも無しに飛び込んだ。
この時のエルディアーナの色彩は魔力を放出した所為で、テオバルドのそれと同じ、プラチナブロンドの髪と紫の瞳で、母ソフィアが目をひん剥いて驚いていたのが印象的だった。
驚いていたのはロレッタも同じだったけど。
それからは怒涛の展開、ロレッタとその一味は地下牢へ、ロレッタによる洗脳が解けた母ソフィアと、父テオバルドはあっという間に和解、熱いなぁと子供じゃない、大人が思う位にラブラブになっていった。
うん、エルディアーナ、いい仕事した。
#####
お読みいただきましてありがとうございました(*´꒳`*)
今回は令嬢サイドのお話ですが、後もう一話、令嬢サイドのお話で、その次からはギルベルトサイドに戻ります。
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