にじニーズ

ふじもり ひろゆき

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はじまったばかりの夏休み

はじめての魔法

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 5分ほどたって、もどってきたヒーピーは、マサたちをつれて森のなかをグングンすすんだ。

 かれらは、太陽のひかりがふりそそぐ、ひっそりとした草地にやってきた。

 草地のまんなかには、家がポツンとたっている。花にかこまれて、屋根にも花がさいている。

 ヒーピーがノックすると、ガチャリとドアがひらいた。

「よくきたね、さあ、どうぞ」

 マサたちの、おへそくらいの高さのカエルさんが、マサたちを家のなかへまねきいれた(玄関のサイズは、カエルさんからしたらおおきすぎる)。

 窓からは気もちのいいひかりと風がはいってきて、ラジオからは最近人気のポップな音楽がながれている。

 テーブルのうえには、マサたちのためにポップコーンやジュースがおかれている。

 ときどきとびはねるカエルさんは、黄緑色の服を着て、茶色い半ズボンをはいている(人と同じように2本足で歩いている)。

 かべには世界じゅうの地図がはってあった。

 ひと休みしたあと、ヒーピーはカエルさんから魔法のちからをかりるおてほんをみせた。

 ヒーピーがカエルさんの肩に手をのせて、

 ――ちからをかして。

というおもいを送ると……

 カエルさんからメロン色をした野球ボールほどのおおきさのひかりの玉がでてきて、フワフワと空ちゅうにうかんだ。

 ポンッ。

 ヒーピーからはイチゴ色のひかりの玉がでてきた。

 2個のひかりの玉はスーッと近づいて、クルクルグルグル、おたがいのまわりをまわりはじめた。
 どんどんとはやくなって、ミキサーでミックスジュースをつくるようにグルグルクルクル。

 最後にはくっついて1つのハートになって、パァンとはじけとび、ひかりのつぶがキラキラとヒーピーとカエルさんにふりそそいだ。

「これで、カエルさんのちからをかりれるよ」

 ヒーピーは、ピストルのかまえをした手を窓の外にむけた。

 ホースから水がでるように、人さし指から水がでて、あたりの木々はびしょぬれだ。

 空にむけて水をだすと、おおきなにじがあらわれた。

 ヒーピーの手のひらからでてきた、カエルのベロのような、ピンク色のひかりのロープは、ビヨーンとのびて、20メートルほどはなれた木にグルグルまきになった。

 そのロープがちぢむと、ヒーピーのからだは窓の外にとびでていって、木のところへ、ひとっとび。

 カエルのようにジャンプして、木の枝のうえに、忍者のようにたったヒーピーが、おもいきり枝をけっ飛ばすと、空高くとびあがって、あっというまにマサたちのもとへ、もどってきた。

「さあ、つぎはきみたちの番」

 3人は、ヒーピーにつれられて、近くの草地へむかった。

 ――魔法使いになりたい。

 エータがカエルさんの肩に手をのせると……
 
 すぐに、エータとカエルさんからひかりの玉がでてきて、2個の玉はクルクルとおたがいのまわりをまわって、くっついて、ピンク色のハートになった。

 ぱあん。

と、はじけたハートはキラキラとしたつぶになって、ふりそそいだ。

 エータはうれしそうに、手のひらから魔法をだすポーズをしたけれど、でてこない。

 そうこうしているうちに、マサとトージからもひかりの玉がでてきて、ヒーピーのレッスンがスタートした。

「まずは、す~っはぁ~、深呼吸。ぐーんと気もちをひろげよう。空まで」
「空ってひろいなあ」

 エータはのうてんきに空をみあげている。

「こんどは宇宙まで、気もちをひろげよう」

 エータは、空をじっとみながら、宇宙をイメージした。

「さあ、つぎは、宇宙の外をイメージして。ちょっとむずかしいよ。そこには、木のおじいさん〈イデアさん〉がいるんだ。魔法を使いたいって気もちを送って、〈イデアさん〉に」
 
 10分ほどしてトージの両手からバスケットボールほどのおおきさの、水のかたまりがポンッと1個でてきた。

「でで、た~!」

 トージはできたてアツアツのアメのように、それをグニョンとのばした。
 
 エータの人さし指からは、ビー玉のようなちいさな水のかたまりがでてきた。

「どうしろっていうの?なんだか、ちっちゃいなあ」

 エータは、人さし指にうかんでいるそのかたまりをデコピンをするように、はじき飛ばした。

 そのかたまりは、ものすごいスピードで飛んでいって、10メールほどはなれたところにあった岩をこっぱみじんにしてしまった。
 エータは目をパチパチさせている。

「おれだけでなーい!なんで~?」

 マサはおおげさに手をひろげた。

「マーちゃん、センスないんじゃない?」

 エータはケタケタ笑っている。

「おれは未来のスーパーヒーローなんだよ?もうちょっと、待って~」
「じゃ、あと、30秒ね~っ。1、2、3……」

 エータはいじわるい声でいった。

「ちょっ、ちょっと、まて~。かぞえないでよー」
「あんまりマーちゃんをあせらせるなよ~」

 トージもおかしそうに笑っている。

 そのあと30分ほどして、やっと……

 ポンポンッ。

とマサの両手から1個ずつ、野球ボールほどのおおきさの、水のかたまりがでてきた。手のひらのうえフワフワうかんでいる。

「おれの~!でてきてくれたー」

 マサは目をウルウルさせながら、でてきたばかりの、そのかたまりを両手でつつみこんだ。
 
 15メートルほどの高さの木の、枝にすわっていたヒーピーは、

「でてきたか~」

と、うれしそうにいって、木の枝から飛びおりた。
 
 カエルさんは空ちゅうにフワフワうかぶ――まるでソファのような――水のかたまりにすわって、気もちよさそうにねむっている。
 
 ヒーピーは、カエルさんのところへ飛んでいくと、トントンと肩をたたいて、

「3人とも魔法だしたよ」

とヒソヒソ声でささやいた。

 目をさましたカエルさんは、目をパチパチさせながらいった。

「その、水のかたまり、ねん土みたいだよね。いろんな形にできるよ。使ってみたいアイテムの形にしてごらん」

 トージはフリスビーの形にした。

 マサは剣の形に(2個あったので2本つくった)。

 エータのは……どんな形にもできないくらいに、ちいさくて、ビー玉のように、まるいまま、空ちゅうにふわふわうかんでいる。

「こんな、ちっこいの~……どうしろってんだよ、どうにもできないよ」
 
 トージは作ったばかりのフリスビーをおもいきりなげ飛ばした。
 水色の、とうめいなフリスビーは、風にのって、どこまでも飛んでいって、やがてみえなくなった。

「おーい……もどってこーい」

 フリスビーはUFOのようにうかびながらトージのところにもどってきた。

「この剣、かるいねー」

 マサは両手にもった、水色のとうめいな2本の剣をぶんぶんふりまわしている。
 
 エータは人さし指を空にむけた。
 エータの人さし指からは、ビー玉のようなボールがつぎつぎと100個ほど飛んでいった。まるでマシンガンのように。

「ばばばーん」

とエータはうれしそうにさけんでいる。
 
 冒険についていくことにしたカエルさんは、リュックに荷物をつめこんで家から飛びでてきた。

 うれしそうにゲロゲロ、ケロケロないている。
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