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7章 「森下 葵」
1月7日
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【紅河さんが率いる、SCC対抗組織「クリムゾン」に連れて行かれ、そこで生活することになった。父親の記憶が戻った俺の身柄をSCCが狙ってくるため、匿ってくれている。元の家はSCCの運営だから、監視されているも同然。この記憶を元に、いつ新たな実験が始まるかもわからない。】
「紅河さん、新城先生に知られて大丈夫だったのか?」
「わからない。ただ、この場所は知られてないし、クリムゾンで預かることに反対もしなかった。潜入してるのは嘘じゃないんだろう。」
「にしても、学校にも行けないのかぁ。みんな心配するだろうな。」
「警察に動かれたらSCCも困る。入院とか、行方不明にはならないように情報を流すだろう。」
実際、学校では入院したことになっていた。涼香や真季は見舞いに行こうとしたが、誰も情報を知らない。
いちばん知っていそうな森下葵も入院とのことで、涼香らの心配は一層増した。
クリムゾンのアジトでは、葵がキッチンからおぼんをもって出てくる。
「さ、遥輝。まずは食べて。」
「おう、ありがと。」
クリムゾンにて活動する大人は10人足らずいるが、葵が料理をしたいと名乗りを上げた。
葵の料理は美味い。
「私の能力も、記憶を見るような能力だからオリジンなのかな。」
「多分そうだろう。人の死ぬ時を看取る能力だったか。辛い能力だな…」
「でも、おかげでSCCに疑いを持てた。紅河さんと出会って、クリムゾンで活動できた。」
「ん?どういうことだ?」
「私の両親が、お父さんの心中で亡くなった話はしたけど、実はSCCに殺されてるの。親の気持ちを知りたかったから、能力が発現してからお父さんの遺骨に触れたの。そしたら、父親の心中に見せかけて両親を惨殺する光景だった…。」
「…そんなことが…」
「私は絶対あの顔を忘れない。SCCの社長、齋藤がやったの。」
朝から重たい空気が流れる。朝食は食べた気がしなかった。
「俺もSCCは許せねえ。それで、俺をこの組織に迎えて、これから具体的にどう動くのさ。」
「遥輝、そう焦るな。大まかな流れは、証拠を集めて確実に追い詰められるまで準備を続けるだけだ。」
朝食を終え、各々の仕事に入る。
やることがない俺はとりあえず葵に、気になることを問い詰めた。
「なあ、結局俺の飛び降りって、どうなったんだ?」
「あれは、SCCが能力者に、能力を発現させるための常套手段よ。自殺する記憶を見せることで、自分の死の瞬間を見ることが出来る。自分の死を見ることで能力に目覚める。」
「そういうことだったのか…。通りで自殺する理由も見当たらないわけだ。…ん?待てよ?ということは、人の記憶を捏造できるような能力もあるってことか?」
「そうなるわ…。そんなとんでもない能力、あると考えたくないけど、そうらしい。自殺する前に、誰かに会ったりしてないの?」
「覚えてないな…あ、莉桜に会ったな。」
岡崎 莉桜。同じ孤児院の出身で、妹のような存在の中学生。あの日、偶然マンションの入口で会ってエレベーターに一緒に乗った。
「莉桜もあのマンションの住人だから能力者の可能性が高いわ。ちょっと、確かめに行ってみる?」
意外と外出の規制は緩く、簡単に葵と外出できた。匿うとは一体なんなのだろう。
マンションの近くで待っていると莉桜が買い物を終えて戻ってきた。
「莉桜、話があるの。」
「葵ねえちゃんと遥輝くん、どうしたの?まさか、付き合う?!!」
「そんな訳ないでしょ…。莉桜も何か不思議なことできるんじゃないかと思って聞きに来たの。」
(そんなわけない…か)
「紅河さん、新城先生に知られて大丈夫だったのか?」
「わからない。ただ、この場所は知られてないし、クリムゾンで預かることに反対もしなかった。潜入してるのは嘘じゃないんだろう。」
「にしても、学校にも行けないのかぁ。みんな心配するだろうな。」
「警察に動かれたらSCCも困る。入院とか、行方不明にはならないように情報を流すだろう。」
実際、学校では入院したことになっていた。涼香や真季は見舞いに行こうとしたが、誰も情報を知らない。
いちばん知っていそうな森下葵も入院とのことで、涼香らの心配は一層増した。
クリムゾンのアジトでは、葵がキッチンからおぼんをもって出てくる。
「さ、遥輝。まずは食べて。」
「おう、ありがと。」
クリムゾンにて活動する大人は10人足らずいるが、葵が料理をしたいと名乗りを上げた。
葵の料理は美味い。
「私の能力も、記憶を見るような能力だからオリジンなのかな。」
「多分そうだろう。人の死ぬ時を看取る能力だったか。辛い能力だな…」
「でも、おかげでSCCに疑いを持てた。紅河さんと出会って、クリムゾンで活動できた。」
「ん?どういうことだ?」
「私の両親が、お父さんの心中で亡くなった話はしたけど、実はSCCに殺されてるの。親の気持ちを知りたかったから、能力が発現してからお父さんの遺骨に触れたの。そしたら、父親の心中に見せかけて両親を惨殺する光景だった…。」
「…そんなことが…」
「私は絶対あの顔を忘れない。SCCの社長、齋藤がやったの。」
朝から重たい空気が流れる。朝食は食べた気がしなかった。
「俺もSCCは許せねえ。それで、俺をこの組織に迎えて、これから具体的にどう動くのさ。」
「遥輝、そう焦るな。大まかな流れは、証拠を集めて確実に追い詰められるまで準備を続けるだけだ。」
朝食を終え、各々の仕事に入る。
やることがない俺はとりあえず葵に、気になることを問い詰めた。
「なあ、結局俺の飛び降りって、どうなったんだ?」
「あれは、SCCが能力者に、能力を発現させるための常套手段よ。自殺する記憶を見せることで、自分の死の瞬間を見ることが出来る。自分の死を見ることで能力に目覚める。」
「そういうことだったのか…。通りで自殺する理由も見当たらないわけだ。…ん?待てよ?ということは、人の記憶を捏造できるような能力もあるってことか?」
「そうなるわ…。そんなとんでもない能力、あると考えたくないけど、そうらしい。自殺する前に、誰かに会ったりしてないの?」
「覚えてないな…あ、莉桜に会ったな。」
岡崎 莉桜。同じ孤児院の出身で、妹のような存在の中学生。あの日、偶然マンションの入口で会ってエレベーターに一緒に乗った。
「莉桜もあのマンションの住人だから能力者の可能性が高いわ。ちょっと、確かめに行ってみる?」
意外と外出の規制は緩く、簡単に葵と外出できた。匿うとは一体なんなのだろう。
マンションの近くで待っていると莉桜が買い物を終えて戻ってきた。
「莉桜、話があるの。」
「葵ねえちゃんと遥輝くん、どうしたの?まさか、付き合う?!!」
「そんな訳ないでしょ…。莉桜も何か不思議なことできるんじゃないかと思って聞きに来たの。」
(そんなわけない…か)
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