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えっ! どうして?
何で王太子妃を選ぶためにご令嬢ばかり集めているなんて噂のお茶会にブライアンがいるの?
私の驚きをよそに私の付き添いできたお父様は久しぶりに会うブライアンに対して、嬉しそうに目を細めて話しかける。
「おぉ! ブライアン! 久しぶりじゃないか! 随分と逞しくなりおって!」
「ありがとうございます。ハーミング伯爵もお元気そうで何よりです」
「いつぶりだ? アカデミー入学の時以来だから一年ぶりか。あんなに小さかったブライアンが私よりデカくなるとはなぁ」
如才なく振る舞うブライアンと、ご機嫌なお父様は話に花を咲かせ始める。
「ちょっと待って! ブライアン! 何しに来てるのよ!」
「なにって、付き添いだ」
ブライアンが顎をクイっとあげて示した先には、茶会のテーブルが並び、ベリンダが周りの令嬢と談笑していた。
「おじ様はどうされたの? 体調をお崩しになったの?」
「いや、元気だよ」
「じゃあ、何でブライアンが来ているのよ」
ブライアンはきまりが悪そうに頭を掻きむしる。
「……父上は、ほら、ベリンダの事を溺愛しまくってるだろ? このお茶会での王太子殿下の態度によってはお家取り壊しの危機になるほど暴れそうだからな」
ブライアンとベリンダの父親であるケイリー伯爵は若かりし頃に近衛騎士団の団長を務めていたこともあってかなりの腕っぷしを誇っていらっしゃる。
まさか……とは思うけど、ベリンダのことを溺愛しているおじ様なら……
「まぁ、あいつならやりかねないな。あいつはすぐ頭に血が昇る」
「はっはっは! でも、ハーミング伯爵も若い頃は随分と血気盛んだったと父に聞いていますよ」
昔文官として王宮の財務部門で予算管理の仕事をしていたお父様は、近衛騎士団でかかった費用の申請書を提出しないブライアンのお父様に腹を立てて詰所までしょっちゅう殴り込みにいったなんて武勇伝をよく聞かされていた。
「あの頃の王室はよかった。陛下も意見をよく聞いてくださった。今じゃ重役を占めている奴らが幅を利かせて好き勝手してるというじゃないか……陛下も、王太子殿下も、あいつらの傀儡に成り下がって、求心力が下がっている。嘆かわしい事だ」
王宮勤めをしていたお父様は今の王室のあり方に忸怩たる思いを抱えている……
「今回の茶会だってそうだ。どこの家も年頃の娘達は婚約自体していなくても、内々には話が進んでいるもんだ。それでも王室から命令されれば断れない。振り回される身にもなってほしい」
えっ……どういう事? どこの家も内々に話が進んでいる? 私も?
「私、婚約話が進んでるなんて聞いていないわ!」
「いや……まぁ……その……」
私の追求に対して歯切れの悪いお父様の態度に、本当に内々に話が進んでいることを察する。
ブライアンも、呆然として立ち尽くしている。
そんな……
青ざめていく私に、冷淡そうな王室の使用人が声をかける。
「ハーミング伯爵家のミンディ様でしょうか? どうぞこちらへ。お付き添いの方はあちらでお待ちください」
お父様に話の続きを確認したいけれど、行かないわけにはいけない……
後ろ髪を引かれながら歩く。
「ミンディ!」
振り向くと、ブライアンが私に向かって叫ぶ。
「好きだ! 王太子殿下に愛想なんて振り撒くな! 王太子殿下のものにも、他の男のものにもならないでくれ! 付き添いなんて口実だ! ミンディお前を迎えに来たんだ! 返事を聞かせてくれ!」
真剣なブライアンの眼差しに、私の心は絡め取られた。
何で王太子妃を選ぶためにご令嬢ばかり集めているなんて噂のお茶会にブライアンがいるの?
私の驚きをよそに私の付き添いできたお父様は久しぶりに会うブライアンに対して、嬉しそうに目を細めて話しかける。
「おぉ! ブライアン! 久しぶりじゃないか! 随分と逞しくなりおって!」
「ありがとうございます。ハーミング伯爵もお元気そうで何よりです」
「いつぶりだ? アカデミー入学の時以来だから一年ぶりか。あんなに小さかったブライアンが私よりデカくなるとはなぁ」
如才なく振る舞うブライアンと、ご機嫌なお父様は話に花を咲かせ始める。
「ちょっと待って! ブライアン! 何しに来てるのよ!」
「なにって、付き添いだ」
ブライアンが顎をクイっとあげて示した先には、茶会のテーブルが並び、ベリンダが周りの令嬢と談笑していた。
「おじ様はどうされたの? 体調をお崩しになったの?」
「いや、元気だよ」
「じゃあ、何でブライアンが来ているのよ」
ブライアンはきまりが悪そうに頭を掻きむしる。
「……父上は、ほら、ベリンダの事を溺愛しまくってるだろ? このお茶会での王太子殿下の態度によってはお家取り壊しの危機になるほど暴れそうだからな」
ブライアンとベリンダの父親であるケイリー伯爵は若かりし頃に近衛騎士団の団長を務めていたこともあってかなりの腕っぷしを誇っていらっしゃる。
まさか……とは思うけど、ベリンダのことを溺愛しているおじ様なら……
「まぁ、あいつならやりかねないな。あいつはすぐ頭に血が昇る」
「はっはっは! でも、ハーミング伯爵も若い頃は随分と血気盛んだったと父に聞いていますよ」
昔文官として王宮の財務部門で予算管理の仕事をしていたお父様は、近衛騎士団でかかった費用の申請書を提出しないブライアンのお父様に腹を立てて詰所までしょっちゅう殴り込みにいったなんて武勇伝をよく聞かされていた。
「あの頃の王室はよかった。陛下も意見をよく聞いてくださった。今じゃ重役を占めている奴らが幅を利かせて好き勝手してるというじゃないか……陛下も、王太子殿下も、あいつらの傀儡に成り下がって、求心力が下がっている。嘆かわしい事だ」
王宮勤めをしていたお父様は今の王室のあり方に忸怩たる思いを抱えている……
「今回の茶会だってそうだ。どこの家も年頃の娘達は婚約自体していなくても、内々には話が進んでいるもんだ。それでも王室から命令されれば断れない。振り回される身にもなってほしい」
えっ……どういう事? どこの家も内々に話が進んでいる? 私も?
「私、婚約話が進んでるなんて聞いていないわ!」
「いや……まぁ……その……」
私の追求に対して歯切れの悪いお父様の態度に、本当に内々に話が進んでいることを察する。
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そんな……
青ざめていく私に、冷淡そうな王室の使用人が声をかける。
「ハーミング伯爵家のミンディ様でしょうか? どうぞこちらへ。お付き添いの方はあちらでお待ちください」
お父様に話の続きを確認したいけれど、行かないわけにはいけない……
後ろ髪を引かれながら歩く。
「ミンディ!」
振り向くと、ブライアンが私に向かって叫ぶ。
「好きだ! 王太子殿下に愛想なんて振り撒くな! 王太子殿下のものにも、他の男のものにもならないでくれ! 付き添いなんて口実だ! ミンディお前を迎えに来たんだ! 返事を聞かせてくれ!」
真剣なブライアンの眼差しに、私の心は絡め取られた。
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