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第三部 運命の番(つがい)のお兄様に婚約者の座を譲って破滅フラグを回避します!
115 ボルボラ諸島での婚約式
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真っ青な海に白い雲が浮かぶ青空。
手入れされた緑の芝生と真っ赤なハイビスカスに、白いプルメリアは薫香を放つ。
賑やかな音楽が鳴り響く中、人々の顔は晴れやかだった。
披露宴の会場である領主館の庭を、お父様とお母様の後ろにくっついてまわる。
イスファーン王国の王族と縁続きになる我が家とお近づきになりたい貴族達がひっきりなしに挨拶に来て、わたしは愛想笑いをするだけで疲れてしまった。
どこか休めそうなところはあるかしら。
キョロキョロ周りを見回していると、背中に視線を感じる。
振り返ると湖のような深い青の瞳。
殿下だ。
お兄様とアイラン様と……えっと、アイラン様の兄であるバイラム王子と談笑をしているみたい。
わぁ。絵力つよ。
遠くから眺めて心の中で手を合わせておこう。
「行っておいで」
わたしがお兄様達を見ていることに気がついて、お父様は笑顔で言った。
えっ。遠くで見ているだけで十分なんだけど……
うーん。でも、お父様達と一緒にいて偉いおじさん達に愛想振り撒くのも疲れたしな……
よし。ご挨拶して、お兄様とアイラン様にお祝いを言ったら部屋に下がらせてもらおう。
わたしは、お父様とお母様にご挨拶に行くことを告げて、お兄様達の元に向かった。
***
『おお。愛を司る女神が現れたのか?』
目の前の琥珀色の瞳がとろりと甘く溶ける。
……どういうこと?
いらっしゃる皆様に挨拶をしていたら、いきなりバイラム王子に手を取られ、戸惑いを隠しきれない。
『エレナ。気をつけて。バイラム兄様は美こそ全てなの。綺麗なものはなんでも自分のものにしたいのよ』
『綺麗なもの?』
アイラン様はため息をついて、バイラム王子の手を振り払うとわたしを自分の背中に匿ってくれた。
『エリオットがわたしを迎えに来た時も、エリオットの瞳を大粒のエメラルドのように美しいって言い出して、自分のそばから離さなかったんだから』
お兄様は困ったように笑う。
「イスファーン王国の人たちにしてみると、緑色の瞳が珍しいんだって」
そうなの? 言われてみればヴァーデン王国でも緑色の瞳ってあまり見ない。
お兄様もお父様も、屋敷に飾られている肖像画の数々も緑色の瞳に茶系の髪の毛ばかりだったし。
だいたい、ピンクの髪の毛に赤い瞳なんていうスピカさんがいるから、エレナの瞳の色が珍しいなんて思ってもみなかった。
『エリオットもエレナもいつでも私のハーレムに来てくれて構わないんだぞ』
艶やかな褐色の肌にクセのある髪の毛から覗く蜂蜜みたいな琥珀色の甘い瞳。
人好きする笑顔でも有無を言わせない雰囲気のバイラム王子はいわゆる砂漠の国のシークっぽい。
イスファーン自体は砂漠の国じゃないはずなのに、ハーレムを持ってるなんてゲームに出てできそうな設定が似合いすぎる。
えっ。あれ?
私が転生したのはゲームの世界なの?
イケメン揃いで、ずっとゲームっぽいって思ってたけど、やっぱりゲームの世界よね。
シークっぽいバイラム王子だけじゃない。
まさに正道キラキラ王子様の殿下に、癒し系イケメンのお兄様、それにセクシー担当のオーウェン様に、真面目系肉体派イケメンのダスティン様、クール系のランス様。
そうだ。年上枠だとルーセント少尉もいるし、お父様はじめ、おじさま枠も充実してる。
恋愛シミュレーションゲームだって考えたら、やたらとイケメン揃いなのも納得がいく。
ああ、でもやっぱり作品名はわからない。
わからないけど、エレナは攻略対象の殿下の婚約者で攻略対象のお兄様の妹だ。
明らかに悪役令嬢よね。
じゃあ、ヒロインは誰?
コーデリア様もアイラン様も最初お会いした時はヒロインみたいに思えたけれど、違かった。
……むしろコーデリア様はダスティン様ルートの悪役令嬢で、アイラン様はお兄様ルートとバイラム王子ルートの悪役令嬢なんじゃないかしら。
『バイラム王子殿下。二人は私の側近と……婚約者だ。発言には気をつけていただきたい』
冷たく、感情がこもっていない殿下の声に、いきなり現実に引き戻される。
見上げた殿下の瞳は仄暗い。まるで新月の夜の湖のようだった。
エレナを婚約者だと伝えるのは、感情を押し殺さなくてはいけないほどなの?
やっぱり悪役令嬢だから?
わたしは悪役令嬢の枷から逃げられないのを悟った。
手入れされた緑の芝生と真っ赤なハイビスカスに、白いプルメリアは薫香を放つ。
賑やかな音楽が鳴り響く中、人々の顔は晴れやかだった。
披露宴の会場である領主館の庭を、お父様とお母様の後ろにくっついてまわる。
イスファーン王国の王族と縁続きになる我が家とお近づきになりたい貴族達がひっきりなしに挨拶に来て、わたしは愛想笑いをするだけで疲れてしまった。
どこか休めそうなところはあるかしら。
キョロキョロ周りを見回していると、背中に視線を感じる。
振り返ると湖のような深い青の瞳。
殿下だ。
お兄様とアイラン様と……えっと、アイラン様の兄であるバイラム王子と談笑をしているみたい。
わぁ。絵力つよ。
遠くから眺めて心の中で手を合わせておこう。
「行っておいで」
わたしがお兄様達を見ていることに気がついて、お父様は笑顔で言った。
えっ。遠くで見ているだけで十分なんだけど……
うーん。でも、お父様達と一緒にいて偉いおじさん達に愛想振り撒くのも疲れたしな……
よし。ご挨拶して、お兄様とアイラン様にお祝いを言ったら部屋に下がらせてもらおう。
わたしは、お父様とお母様にご挨拶に行くことを告げて、お兄様達の元に向かった。
***
『おお。愛を司る女神が現れたのか?』
目の前の琥珀色の瞳がとろりと甘く溶ける。
……どういうこと?
いらっしゃる皆様に挨拶をしていたら、いきなりバイラム王子に手を取られ、戸惑いを隠しきれない。
『エレナ。気をつけて。バイラム兄様は美こそ全てなの。綺麗なものはなんでも自分のものにしたいのよ』
『綺麗なもの?』
アイラン様はため息をついて、バイラム王子の手を振り払うとわたしを自分の背中に匿ってくれた。
『エリオットがわたしを迎えに来た時も、エリオットの瞳を大粒のエメラルドのように美しいって言い出して、自分のそばから離さなかったんだから』
お兄様は困ったように笑う。
「イスファーン王国の人たちにしてみると、緑色の瞳が珍しいんだって」
そうなの? 言われてみればヴァーデン王国でも緑色の瞳ってあまり見ない。
お兄様もお父様も、屋敷に飾られている肖像画の数々も緑色の瞳に茶系の髪の毛ばかりだったし。
だいたい、ピンクの髪の毛に赤い瞳なんていうスピカさんがいるから、エレナの瞳の色が珍しいなんて思ってもみなかった。
『エリオットもエレナもいつでも私のハーレムに来てくれて構わないんだぞ』
艶やかな褐色の肌にクセのある髪の毛から覗く蜂蜜みたいな琥珀色の甘い瞳。
人好きする笑顔でも有無を言わせない雰囲気のバイラム王子はいわゆる砂漠の国のシークっぽい。
イスファーン自体は砂漠の国じゃないはずなのに、ハーレムを持ってるなんてゲームに出てできそうな設定が似合いすぎる。
えっ。あれ?
私が転生したのはゲームの世界なの?
イケメン揃いで、ずっとゲームっぽいって思ってたけど、やっぱりゲームの世界よね。
シークっぽいバイラム王子だけじゃない。
まさに正道キラキラ王子様の殿下に、癒し系イケメンのお兄様、それにセクシー担当のオーウェン様に、真面目系肉体派イケメンのダスティン様、クール系のランス様。
そうだ。年上枠だとルーセント少尉もいるし、お父様はじめ、おじさま枠も充実してる。
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ああ、でもやっぱり作品名はわからない。
わからないけど、エレナは攻略対象の殿下の婚約者で攻略対象のお兄様の妹だ。
明らかに悪役令嬢よね。
じゃあ、ヒロインは誰?
コーデリア様もアイラン様も最初お会いした時はヒロインみたいに思えたけれど、違かった。
……むしろコーデリア様はダスティン様ルートの悪役令嬢で、アイラン様はお兄様ルートとバイラム王子ルートの悪役令嬢なんじゃないかしら。
『バイラム王子殿下。二人は私の側近と……婚約者だ。発言には気をつけていただきたい』
冷たく、感情がこもっていない殿下の声に、いきなり現実に引き戻される。
見上げた殿下の瞳は仄暗い。まるで新月の夜の湖のようだった。
エレナを婚約者だと伝えるのは、感情を押し殺さなくてはいけないほどなの?
やっぱり悪役令嬢だから?
わたしは悪役令嬢の枷から逃げられないのを悟った。
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