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第三部 運命の番(つがい)のお兄様に婚約者の座を譲って破滅フラグを回避します!
105 久しぶりの学園生活
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結局お兄様は二人に連れ出されてしまった。
断じて華奢なわけじゃないけれど、騎士を目指す生徒達に囲まれると線が細く見える。
渋々肩当てや胸当てといった簡易防具を取り付けているのをいろんな男子に揶揄われてちょっかい出されている様は麗しく、まるでBLゲームのヒロインみたい。
尊いから拝んでおこう。
「エレナ様ってはっきりとした物言いをされるんですね」
「えっ!」
妄想中だったわたしをメアリさんが現実に引き戻す。
「困ったわ。お淑やかにしなくてはと気をつけているんですけど」
「わたしは好きです。あと、わたしだけじゃないですよ、さっきエレナ様が『みなさんがこの国の騎士を目指して鍛錬されていらっしゃる中、自分だけ座るなんてできないわ』っておっしゃたでしょ? あの発言に感動したのか、さっきから騎士を目指す生徒たちがエレナ様を熱い視線で見つめてます」
「わたしじゃなくて、みなさん目当てはコーデリア様だわ。お綺麗だもの」
「コーデリア様も見てらっしゃると思いますけど、エレナ様ですって」
メアリさんは商会の若奥様になる方だからなのか、ヨイショがうまいな。
「ふふ。ありがとう。でも、そうね。わたしのお友達が騎士を目指す生徒達に人気があるみたいだから、まずはわたしと仲良くなろうとしてくださってるのかもしれないわ」
「違うと思いますけど……」
「ちゃんとわきまえてますから大丈夫よ。あっ、ほら、準備が終わったみたい。応援しましょう?」
お兄様達は模擬刀をもってルーセント少尉に立ち向かうところだった。
***
「ほら、だから僕じゃなくて他の奴を誘えばよかったんだよ」
「俊敏なエリオット様が撹乱したところを私とオーウェン様で攻め立てる作戦は悪くないと思ったのですが」
「まあ、悪くないが、その作戦を相手に聞こえるように指揮するようではいけないな」
ルーセント少尉に手も足も出なかったお兄様たちは軽食をとりながら反省会を行っている。
私たちは差し入れを渡すためのこ令嬢達の輪に入った。
「ベリンダさん、お渡しにならないの?」
「お渡ししたいんですけど……でも」
差し入れを渡したいはずの周りのご令嬢達は、気兼ねしてるのか、牽制してるのか誰も渡しに行かない。
「ついていらして」
わたしはベリンダさんの手を取りカゴを抱えて反省会をしているお兄様達に近づく。
わたしはスピカさんに差し入れするのが目的だもの。少しだけベリンダさんの恋のキューピッドをしたら、さっさとスピカさんのところに行かないと。
「お兄様! 結果は残念でしたけど、急なご参加でしたのに俊敏に動かれていたのは日頃の鍛錬の賜物ですわね。こちらでも召し上がって英気を養ってください」
わたしはお兄様に差し入れのバターケーキの包みを二つ渡すと、今度はオーウェン様に向き直る。
「オーウェン様もさすが未来の騎士団長。相変わらずの剣捌き素敵でしたわ。よろしければこちらをどうぞ。ダスティン様も、オーウェン様やお兄様相手に物怖じすることなく指揮される胆力お見事でした。次期公爵としてのご自覚の成せるわざですわ。わたくしからはこちらと、あと、コーデリア様も差し入れをお持ちのようなのでお受け取りくださいませ」
今度はオーウェン様とダスティン様にバターケーキを一つずつ押し付けて、ついでにコーデリア様から差し入れがあることを伝える。
コーデリア様がなんか言ってるけどいまはそれどころじゃない。
「ルーセント先生もさすが現役の武官でいらっしゃいますわ。人数差を物ともせず戦うお姿に、わたしがこうして安心して生きていられるのは騎士の皆様のお陰であると強く感じ入りました。よろしければこちらを召し上がってくださいませ」
最後にルーセント少尉にもバターケーキを握らせる。
「ほら、ベリンダ様も差し入れをお渡ししたら?」
「えっ、あっはい」
ぐいっとベリンダさんの背中を押してルーセント少尉の前に立たせる。
「では、みなさん。わたしはお友達に差し入れに行ってまいりますわね」
そう言ってわたしは毅然とした態度で踵を返してスピカさんの方に向かう。
ベリンダさんはメアリさんにフォローしてもらいながら差し入れを渡している。
よしよし。
わたしはスピカさんの方に向かう。
あんなに見学者がいたのに、他の騎士候補たちは仲間内で固まって恨めしそうにルーセント少尉を眺めているだけで、誰も差し入れをもらっていない。
なんかちょっと不便になる。
誰からも見向きされないエレナからでも、誰からも見向きされない彼らは喜んでくれるだろうか。
「よろしければどうぞ」
「えっ、エレナ様からですか?」
「栄養を取るのも大切な訓練だと思うわ」
受け取っていいものか戸惑ってるようなので、手を握り押し付ける。いっぱいあるし、配って歩くことにした。
領地のお祭りを思い出す。
みんな子供じゃないから我先にもらいに来たりしないけど、渡すと嬉しそうに笑ってくれてちょっとした達成感がある。
「エレナ様ってば、みんなの分も差し入れ用意してくださったんですか」
やっとスピカさんのもとに辿り着くまでにカゴの中はほぼ空の状態になっていた。
「ええ。いっぱい用意してもらったものですから。ふふ。スピカさんの分は特別なのよ」
そう言ってわたしはスピカさん用に用意したメッセージカード付きの差し入れを渡す。
受け取ったスピカさんの笑顔にわたしも笑顔を向けた。
断じて華奢なわけじゃないけれど、騎士を目指す生徒達に囲まれると線が細く見える。
渋々肩当てや胸当てといった簡易防具を取り付けているのをいろんな男子に揶揄われてちょっかい出されている様は麗しく、まるでBLゲームのヒロインみたい。
尊いから拝んでおこう。
「エレナ様ってはっきりとした物言いをされるんですね」
「えっ!」
妄想中だったわたしをメアリさんが現実に引き戻す。
「困ったわ。お淑やかにしなくてはと気をつけているんですけど」
「わたしは好きです。あと、わたしだけじゃないですよ、さっきエレナ様が『みなさんがこの国の騎士を目指して鍛錬されていらっしゃる中、自分だけ座るなんてできないわ』っておっしゃたでしょ? あの発言に感動したのか、さっきから騎士を目指す生徒たちがエレナ様を熱い視線で見つめてます」
「わたしじゃなくて、みなさん目当てはコーデリア様だわ。お綺麗だもの」
「コーデリア様も見てらっしゃると思いますけど、エレナ様ですって」
メアリさんは商会の若奥様になる方だからなのか、ヨイショがうまいな。
「ふふ。ありがとう。でも、そうね。わたしのお友達が騎士を目指す生徒達に人気があるみたいだから、まずはわたしと仲良くなろうとしてくださってるのかもしれないわ」
「違うと思いますけど……」
「ちゃんとわきまえてますから大丈夫よ。あっ、ほら、準備が終わったみたい。応援しましょう?」
お兄様達は模擬刀をもってルーセント少尉に立ち向かうところだった。
***
「ほら、だから僕じゃなくて他の奴を誘えばよかったんだよ」
「俊敏なエリオット様が撹乱したところを私とオーウェン様で攻め立てる作戦は悪くないと思ったのですが」
「まあ、悪くないが、その作戦を相手に聞こえるように指揮するようではいけないな」
ルーセント少尉に手も足も出なかったお兄様たちは軽食をとりながら反省会を行っている。
私たちは差し入れを渡すためのこ令嬢達の輪に入った。
「ベリンダさん、お渡しにならないの?」
「お渡ししたいんですけど……でも」
差し入れを渡したいはずの周りのご令嬢達は、気兼ねしてるのか、牽制してるのか誰も渡しに行かない。
「ついていらして」
わたしはベリンダさんの手を取りカゴを抱えて反省会をしているお兄様達に近づく。
わたしはスピカさんに差し入れするのが目的だもの。少しだけベリンダさんの恋のキューピッドをしたら、さっさとスピカさんのところに行かないと。
「お兄様! 結果は残念でしたけど、急なご参加でしたのに俊敏に動かれていたのは日頃の鍛錬の賜物ですわね。こちらでも召し上がって英気を養ってください」
わたしはお兄様に差し入れのバターケーキの包みを二つ渡すと、今度はオーウェン様に向き直る。
「オーウェン様もさすが未来の騎士団長。相変わらずの剣捌き素敵でしたわ。よろしければこちらをどうぞ。ダスティン様も、オーウェン様やお兄様相手に物怖じすることなく指揮される胆力お見事でした。次期公爵としてのご自覚の成せるわざですわ。わたくしからはこちらと、あと、コーデリア様も差し入れをお持ちのようなのでお受け取りくださいませ」
今度はオーウェン様とダスティン様にバターケーキを一つずつ押し付けて、ついでにコーデリア様から差し入れがあることを伝える。
コーデリア様がなんか言ってるけどいまはそれどころじゃない。
「ルーセント先生もさすが現役の武官でいらっしゃいますわ。人数差を物ともせず戦うお姿に、わたしがこうして安心して生きていられるのは騎士の皆様のお陰であると強く感じ入りました。よろしければこちらを召し上がってくださいませ」
最後にルーセント少尉にもバターケーキを握らせる。
「ほら、ベリンダ様も差し入れをお渡ししたら?」
「えっ、あっはい」
ぐいっとベリンダさんの背中を押してルーセント少尉の前に立たせる。
「では、みなさん。わたしはお友達に差し入れに行ってまいりますわね」
そう言ってわたしは毅然とした態度で踵を返してスピカさんの方に向かう。
ベリンダさんはメアリさんにフォローしてもらいながら差し入れを渡している。
よしよし。
わたしはスピカさんの方に向かう。
あんなに見学者がいたのに、他の騎士候補たちは仲間内で固まって恨めしそうにルーセント少尉を眺めているだけで、誰も差し入れをもらっていない。
なんかちょっと不便になる。
誰からも見向きされないエレナからでも、誰からも見向きされない彼らは喜んでくれるだろうか。
「よろしければどうぞ」
「えっ、エレナ様からですか?」
「栄養を取るのも大切な訓練だと思うわ」
受け取っていいものか戸惑ってるようなので、手を握り押し付ける。いっぱいあるし、配って歩くことにした。
領地のお祭りを思い出す。
みんな子供じゃないから我先にもらいに来たりしないけど、渡すと嬉しそうに笑ってくれてちょっとした達成感がある。
「エレナ様ってば、みんなの分も差し入れ用意してくださったんですか」
やっとスピカさんのもとに辿り着くまでにカゴの中はほぼ空の状態になっていた。
「ええ。いっぱい用意してもらったものですから。ふふ。スピカさんの分は特別なのよ」
そう言ってわたしはスピカさん用に用意したメッセージカード付きの差し入れを渡す。
受け取ったスピカさんの笑顔にわたしも笑顔を向けた。
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