59 / 231
第二部 ロマンス小説のお姫様に婚約者の座を譲って破滅フラグを回避します! 第一章
54 エレナ隣国との茶会に誘われる
しおりを挟む
去年、殿下のお誕生日に開かれたお茶会に集まったたくさんの来賓の前で、オーウェン様に殿下との婚約をおままごと扱いされて以降、半年以上お茶会に参加せずにやり過ごしていた。
社交の場が苦手だからといつまでも逃げ回るわけにはいかないのはわかってる。
お兄様の言うように、知ってる人もいっぱいいて、お兄様も殿下もいらしてて、王女様の案内係っていうやるべき事が決まってるから手持ち無沙汰になりようがなくて、しかもオーウェン様がいらっしゃらない! なんてこんなお茶会の機会なかなかない。
わかってるのよ。
それでも気乗りしないわたしは、着々とメリーが準備をしているのを横目にため息をついた。
「エレナお嬢さま。今日は王都でも人気の服飾店のマダムがきますからね」
メリーはエレナを着飾らせるのが嬉しくて仕方ないのか、服飾店のマダムが来るのを首を長くして待ちわびている。
殿下が婚約発表の場で着るようにと贈ってくれた胸元の開くドレスは、夜の舞踏会に着るようなもので、今回エレナの参加するお茶会であれば露出の少ないデイ・ドレスを着る必要があるらしい。
だけど、エレナがお茶会の参加を逃げ回ったツケで着ていく服がない。
今回は日数もないから既製品のドレスをエレナの体型に合わせて調整する事になっている。
エレナはロリ巨乳なので、身長に合わせたドレスだと胸がキツくなるし胸に合わせるとブカブカの服になってしまう。
なんて贅沢な悩みなのかしら。
エレナが着飾ることをわたしよりもメリーが楽しみにしてくれている。
「この国で一番可愛いエレナお嬢様ならどんなドレスもお似合いだとは思いますが、エレナ様だけのドレスじゃないのが残念で仕方ありません。つぎはデザインから相談して作りましょうね」
メリーの清々しいまでの侍女バカっぷりは自己評価の低いエレナに少しだけ勇気をくれた。
***
「まぁまぁ! うちのドレスを未来の王太子妃殿下に着ていただけるなんて!」
そう芝居がかったセリフを美女に言われて、私は苦手な愛想笑いを浮かべる。
名ばかり侯爵家のご令嬢の急ぎのドレスの仕立て直しなんて、今までなら断っていただろう案件だ。
エレナが「殿下の婚約者」だからわざわざマダムがお出ましになって、対応してくれているに違いない。
マダムの他にも針子と思われる女性が忙しそうにドレスや装飾品をエレナの支度部屋に持ち込んでいる。
いつシナリオが動き出して婚約者じゃなくなってしまうのかわからないので、すっごく後ろめたい。
そんな事を思っていると、メリーと仕立て屋のマダムに手際よく着ていた服を脱がされて、ビスチェとドロワーズ姿にされていた。
「まぁあっ! なんてスタイルのよろしいことでしょう! 小柄でいらっしゃるから、こんなにスタイルがよろしいだなんて、存じ上げておりませんでしたわ!」
「さようでございましょう⁈」
マダムがエレナを褒めるもんだからメリーが嬉しそうに、持ち込まれた試着用のドレスを広げ出す。
メリー……チョロいわ。
広げられたドレスはレースやフリルをたっぷり使ったかわいらしいデザインのもの、豪奢な刺繍が入ったきらびやかなデザインのもの、シンプルなドレスに見えてよく見ると柄を織り込んだ生地を使ったものなど素敵なものばかりだった。
メリーは有無を言わせずどんどん着せては、鏡の前に立たせる。
マダムと針子達が丈を確認したり身頃を確認しながら、まち針をうったりしつけをしたりと忙しそうにしている。
何枚試着したんだろう? 十着は下らないと思う。
「ねぇ、メリー。こんなに一度に着たらどのドレスを買えばいいかわからないわ」
「全部買ってあるんですから選ぶ必要はありませんよ。エレナお嬢様は隣国のお姫様の案内係をされるんですからこれじゃあ足りないくらいです」
わたしがこっそり耳打ちすると、メリーから咎められた。
そうだ。名ばかり侯爵家だとは言ってもエレナは生粋のお嬢様だった。
「エレナお嬢様も、もう十六歳なんですから着飾ってメリーの事を楽しませてくださいませ」
「……わかったわ」
わたしの言葉を聞いたメリーは、満面の笑顔で新しいドレスを手に取った。
社交の場が苦手だからといつまでも逃げ回るわけにはいかないのはわかってる。
お兄様の言うように、知ってる人もいっぱいいて、お兄様も殿下もいらしてて、王女様の案内係っていうやるべき事が決まってるから手持ち無沙汰になりようがなくて、しかもオーウェン様がいらっしゃらない! なんてこんなお茶会の機会なかなかない。
わかってるのよ。
それでも気乗りしないわたしは、着々とメリーが準備をしているのを横目にため息をついた。
「エレナお嬢さま。今日は王都でも人気の服飾店のマダムがきますからね」
メリーはエレナを着飾らせるのが嬉しくて仕方ないのか、服飾店のマダムが来るのを首を長くして待ちわびている。
殿下が婚約発表の場で着るようにと贈ってくれた胸元の開くドレスは、夜の舞踏会に着るようなもので、今回エレナの参加するお茶会であれば露出の少ないデイ・ドレスを着る必要があるらしい。
だけど、エレナがお茶会の参加を逃げ回ったツケで着ていく服がない。
今回は日数もないから既製品のドレスをエレナの体型に合わせて調整する事になっている。
エレナはロリ巨乳なので、身長に合わせたドレスだと胸がキツくなるし胸に合わせるとブカブカの服になってしまう。
なんて贅沢な悩みなのかしら。
エレナが着飾ることをわたしよりもメリーが楽しみにしてくれている。
「この国で一番可愛いエレナお嬢様ならどんなドレスもお似合いだとは思いますが、エレナ様だけのドレスじゃないのが残念で仕方ありません。つぎはデザインから相談して作りましょうね」
メリーの清々しいまでの侍女バカっぷりは自己評価の低いエレナに少しだけ勇気をくれた。
***
「まぁまぁ! うちのドレスを未来の王太子妃殿下に着ていただけるなんて!」
そう芝居がかったセリフを美女に言われて、私は苦手な愛想笑いを浮かべる。
名ばかり侯爵家のご令嬢の急ぎのドレスの仕立て直しなんて、今までなら断っていただろう案件だ。
エレナが「殿下の婚約者」だからわざわざマダムがお出ましになって、対応してくれているに違いない。
マダムの他にも針子と思われる女性が忙しそうにドレスや装飾品をエレナの支度部屋に持ち込んでいる。
いつシナリオが動き出して婚約者じゃなくなってしまうのかわからないので、すっごく後ろめたい。
そんな事を思っていると、メリーと仕立て屋のマダムに手際よく着ていた服を脱がされて、ビスチェとドロワーズ姿にされていた。
「まぁあっ! なんてスタイルのよろしいことでしょう! 小柄でいらっしゃるから、こんなにスタイルがよろしいだなんて、存じ上げておりませんでしたわ!」
「さようでございましょう⁈」
マダムがエレナを褒めるもんだからメリーが嬉しそうに、持ち込まれた試着用のドレスを広げ出す。
メリー……チョロいわ。
広げられたドレスはレースやフリルをたっぷり使ったかわいらしいデザインのもの、豪奢な刺繍が入ったきらびやかなデザインのもの、シンプルなドレスに見えてよく見ると柄を織り込んだ生地を使ったものなど素敵なものばかりだった。
メリーは有無を言わせずどんどん着せては、鏡の前に立たせる。
マダムと針子達が丈を確認したり身頃を確認しながら、まち針をうったりしつけをしたりと忙しそうにしている。
何枚試着したんだろう? 十着は下らないと思う。
「ねぇ、メリー。こんなに一度に着たらどのドレスを買えばいいかわからないわ」
「全部買ってあるんですから選ぶ必要はありませんよ。エレナお嬢様は隣国のお姫様の案内係をされるんですからこれじゃあ足りないくらいです」
わたしがこっそり耳打ちすると、メリーから咎められた。
そうだ。名ばかり侯爵家だとは言ってもエレナは生粋のお嬢様だった。
「エレナお嬢様も、もう十六歳なんですから着飾ってメリーの事を楽しませてくださいませ」
「……わかったわ」
わたしの言葉を聞いたメリーは、満面の笑顔で新しいドレスを手に取った。
3
お気に入りに追加
1,107
あなたにおすすめの小説
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
二度とお姉様と呼ばないで〜婚約破棄される前にそちらの浮気現場を公開させていただきます〜
雑煮
恋愛
白魔法の侯爵家に生まれながら、火属性として生まれてしまったリビア。不義の子と疑われ不遇な人生を歩んだ末に、婚約者から婚約破棄をされ更には反乱を疑われて処刑されてしまう。だが、その死の直後、五年前の世界に戻っていた。
リビアは死を一度経験し、家族を信じることを止め妹と対立する道を選ぶ。
だが、何故か前の人生と違う出来事が起こり、不可解なことが続いていく。そして、王族をも巻き込みリビアは自身の回帰の謎を解いていく。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
皇太子殿下の秘密がバレた!隠し子発覚で離婚の危機〜夫人は妊娠中なのに不倫相手と二重生活していました
window
恋愛
皇太子マイロ・ルスワル・フェルサンヌ殿下と皇后ルナ・ホセファン・メンテイル夫人は仲が睦まじく日々幸福な結婚生活を送っていました。
お互いに深く愛し合っていて喧嘩もしたことがないくらいで国民からも評判のいい夫婦です。
先日、ルナ夫人は妊娠したことが分かりマイロ殿下と舞い上がるような気分で大変に喜びました。
しかしある日ルナ夫人はマイロ殿下のとんでもない秘密を知ってしまった。
それをマイロ殿下に問いただす覚悟を決める。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる