40 / 234
第一部 最終章
40 エレナとツンデレ公爵令嬢と流行りのイヤリング
しおりを挟む
って! えっ? 口づけした⁈
慌てて殿下とお兄様に目をやる。
セーフ! 殿下の角度からは見えてない。
何故かお兄様は慌ててる。
「あぁもうダスティンのバカ! 僕が言ったのはそう言う事じゃないのに! ダスティンがコーデリア様に平手打ちされちゃったらどうしよう!」
犯人はお兄様らしい。
「……お兄様は何をアドバイスされたの?」
「えっ? コーデリア様の話す勢いに押されないかなってダスティンが心配してたから、そう言う時はロマンティックに口を塞ぐんだよ。って教えたんだけど。そう言われたからって、いくら婚約者だからって口づけしたりする? あんなに毎日突っかかられてたら、嫌われてるかもとか考えない?」
思ったことをそのまま口にするのはお兄様のいいところだけど、思いつきで喋りすぎて、思慮が浅い事があるのは、よくないところだと思う。
今だって考えなしに喋るから殿下にキスのことバレちゃったし、そもそも「ロマンティックに口を塞ぐ」なんて意味が分からない。
わたしはしょっちゅうお兄様に唇を人差し指で抑えられて「お喋りがすぎるよ可愛いレディ」って言われてるから、きっとその事を言いたいんだろうなって分かる。
けど、そんなのダスティン様に伝わるわけがない。
四阿の中を覗き見てもコーデリア様の後ろ姿はパニックになっているのが手にとるように分かる。
「うまくいかなかったらお兄様のせいよ」
お兄様を睨みつけると、何故か隣で殿下が肩を震わせて笑っている。
「大丈夫。うまくいくさ。ダスティンはやる時はやる男だ。ほら、エレナ嬢は二人の恋路を応援するつもりじゃないのかい?」
そう言って殿下はわたしに笑いかけ、コーデリア様達を見守るように勧める。
殿下は想いを募らせてるコーデリア様がダスティン様と口づけしたなんて聞いて嫌じゃないのかしら。
じっと見つめるといつもなら視線を逸らす殿下がわたしを見つめ返して笑う。恥ずかしくなったわたしは目を逸らす。
そうだ。
いまは殿下の整った顔にときめいている場合ではない。
「コーデリア様。私の話をお聞きください」
ダスティン様はコーデリア様から唇を離したと思ったら、今度はおでこを寄せて視線を逸らさないように見つめていた。
「聞いてくださいますか?」
多分声を出せないくらいパニックになっているコーデリア様が、コクコク頷いたのを確認してやっとダスティン様はコーデリア様を解放する。
「この一か月、王都内のシーワード邸と領地の屋敷に何度もお伺いしました。最初のうちは警戒していた使用人達も、通ううちに心を開きいろんな話をしてくれるようになりました。子爵の黒い噂を突き止めるのが私の役割でしたが、その役割を使用人達は皆知ってか知らずか、子爵の悪事を訴えコーデリア様が領地を治める事を願っておりました」
「……皆を不安にさせていたのね」
「不安だから訴えていたのではありません。皆が領地と領民の事を大切にされているコーデリア様を愛し、コーデリア様が家督を継ぐことを熱望しておりました。コーデリア様の愛は皆にしっかりと伝わっております」
ダスティン様はそういうとポケットから小箱を取り出しコーデリア様に開けて見せた。
「私は爵位を欲して貴女と結婚するのではありません。貴女が貴女の愛するシーワード領を治めるのを隣で夫としてお支えしたいのです。私も領地も、貴女のおそばにずっとおります。黒真珠はお好みですか?」
真っ赤になって何も言えないコーデリア様が頷くのを確認すると、ダスティン様は黒真珠のイヤリングをコーデリア様の耳に飾る。
シーワード領特産の黒真珠と自分のイメージカラーを合わせるなんて、そんなロマンチックなことダスティン様が出来るなんて思わなかった。
感心していると、したり顔の殿下と目が合う。
「ほら、ダスティンはやる時はやる男だろ?」
「……殿下が一枚かんでらっしゃるのね?」
「一枚かな?」
どこからどこまで殿下の手のひらで踊らされていたのだろう。
わたしの思いついた「いいこと」が効果を発揮する前に、殿下の作戦だけで丸く収まったみたいだった。
慌てて殿下とお兄様に目をやる。
セーフ! 殿下の角度からは見えてない。
何故かお兄様は慌ててる。
「あぁもうダスティンのバカ! 僕が言ったのはそう言う事じゃないのに! ダスティンがコーデリア様に平手打ちされちゃったらどうしよう!」
犯人はお兄様らしい。
「……お兄様は何をアドバイスされたの?」
「えっ? コーデリア様の話す勢いに押されないかなってダスティンが心配してたから、そう言う時はロマンティックに口を塞ぐんだよ。って教えたんだけど。そう言われたからって、いくら婚約者だからって口づけしたりする? あんなに毎日突っかかられてたら、嫌われてるかもとか考えない?」
思ったことをそのまま口にするのはお兄様のいいところだけど、思いつきで喋りすぎて、思慮が浅い事があるのは、よくないところだと思う。
今だって考えなしに喋るから殿下にキスのことバレちゃったし、そもそも「ロマンティックに口を塞ぐ」なんて意味が分からない。
わたしはしょっちゅうお兄様に唇を人差し指で抑えられて「お喋りがすぎるよ可愛いレディ」って言われてるから、きっとその事を言いたいんだろうなって分かる。
けど、そんなのダスティン様に伝わるわけがない。
四阿の中を覗き見てもコーデリア様の後ろ姿はパニックになっているのが手にとるように分かる。
「うまくいかなかったらお兄様のせいよ」
お兄様を睨みつけると、何故か隣で殿下が肩を震わせて笑っている。
「大丈夫。うまくいくさ。ダスティンはやる時はやる男だ。ほら、エレナ嬢は二人の恋路を応援するつもりじゃないのかい?」
そう言って殿下はわたしに笑いかけ、コーデリア様達を見守るように勧める。
殿下は想いを募らせてるコーデリア様がダスティン様と口づけしたなんて聞いて嫌じゃないのかしら。
じっと見つめるといつもなら視線を逸らす殿下がわたしを見つめ返して笑う。恥ずかしくなったわたしは目を逸らす。
そうだ。
いまは殿下の整った顔にときめいている場合ではない。
「コーデリア様。私の話をお聞きください」
ダスティン様はコーデリア様から唇を離したと思ったら、今度はおでこを寄せて視線を逸らさないように見つめていた。
「聞いてくださいますか?」
多分声を出せないくらいパニックになっているコーデリア様が、コクコク頷いたのを確認してやっとダスティン様はコーデリア様を解放する。
「この一か月、王都内のシーワード邸と領地の屋敷に何度もお伺いしました。最初のうちは警戒していた使用人達も、通ううちに心を開きいろんな話をしてくれるようになりました。子爵の黒い噂を突き止めるのが私の役割でしたが、その役割を使用人達は皆知ってか知らずか、子爵の悪事を訴えコーデリア様が領地を治める事を願っておりました」
「……皆を不安にさせていたのね」
「不安だから訴えていたのではありません。皆が領地と領民の事を大切にされているコーデリア様を愛し、コーデリア様が家督を継ぐことを熱望しておりました。コーデリア様の愛は皆にしっかりと伝わっております」
ダスティン様はそういうとポケットから小箱を取り出しコーデリア様に開けて見せた。
「私は爵位を欲して貴女と結婚するのではありません。貴女が貴女の愛するシーワード領を治めるのを隣で夫としてお支えしたいのです。私も領地も、貴女のおそばにずっとおります。黒真珠はお好みですか?」
真っ赤になって何も言えないコーデリア様が頷くのを確認すると、ダスティン様は黒真珠のイヤリングをコーデリア様の耳に飾る。
シーワード領特産の黒真珠と自分のイメージカラーを合わせるなんて、そんなロマンチックなことダスティン様が出来るなんて思わなかった。
感心していると、したり顔の殿下と目が合う。
「ほら、ダスティンはやる時はやる男だろ?」
「……殿下が一枚かんでらっしゃるのね?」
「一枚かな?」
どこからどこまで殿下の手のひらで踊らされていたのだろう。
わたしの思いついた「いいこと」が効果を発揮する前に、殿下の作戦だけで丸く収まったみたいだった。
3
お気に入りに追加
1,107
あなたにおすすめの小説
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる