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第一部 最終章
42 エレナとツンデレ公爵令嬢と流行りのイヤリング
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「コーデリア!」
ダスティン様は顔を真っ青にして名を叫ぶと、倒れたコーデリア様を軽々と抱き上げて医務室に向かった。
騒がしかった四阿は静寂に包まれている。
これはきっと医務室で目を覚まして、ダスティン様にお姫様抱っこで運ばれたことをお医者様に告げられて、その事実にまたコーデリア様が失神するパターンだと思う。
なのにダスティン様が取り乱してコーデリア様のこと呼び捨てにしてた、なんてときめきシーンは本人は気を失っていて知らない。
進展しそうでしない恋は少女漫画で見る分にはいいけど、目の前で見ると焦ったい。
……もしかして、わたしが転生したのはヒロインはコーデリア様でお相手はダスティン様の少女漫画の物語で、わたしと殿下はモブなんじゃないかしら。
って、都合のいい説を考えてはみたけれど、コーデリア様がヒロインな話だって見覚えはない。
「ねぇ。エレナあのカフスボタンって誰が作ったの? まさかエレナ?」
一人で考え込んでいたらお兄様に声をかけられる。
エレナとして生活をしていると、エレナが刺繍やレース編みみたいな手芸が大好きで得意にしている事を思い出した。
刺繍も編み物も針を持てば勝手に手が動いていく。
それでも流石に金属加工を伴うリメイクはさすがにやり方は分からない。
「お兄様が街に出てはいけないって言うから、スピカさんからアクセサリーを扱うジェームズ商会の御子息が王立学園にいると教えてもって、紹介していただいたの。ジェームズ商会お抱えの工房に、カフスボタンのリメイクを依頼しました」
「よかった。まだ金属細工には手を出さないか」
ホッとした様子のお兄様を見上げる。
リメイク依頼をしたカフスボタンは、想像以上に素敵な出来上がりで、満足したわたしはダスティン様に御守り代わりだなんて適当なことを言ってお渡しした。
もちろんただのカフスボタンで、加護を感じるかはダスティン様次第だったのだけど、凄い効果が現れる結果となった。
「あっ!」
お兄様が何かに気がついた様子でわたしを見る。
「エレナ! カフスボタンいま持ってるなら、殿下に渡して!」
「え⁈」
「いま持ってないの? 屋敷?」
お兄様は当然の様にエレナが自分の分……というか、殿下の分のカフスボタンも用意していると信じている。
いや、まぁ作ってもらったけど。
でもそれは渡すためじゃなくて、このカフスボタンを殿下がつけるところを想像してニヤニヤしたいという、推しが身につけてそうな物を手元に置きたい恵玲奈の悪い癖がでてしまっただけで……
何故それがお兄様にバレてしまったのかが分からない。
「なっ。なんで殿下にお渡しする分があると思ってるの?」
「だって、毎年殿下に贈るハンカチと同じ意匠のスカーフタイだのリボンタイだの、セットで作るだけ作るくせに『あまりたくさんお送りしてもご迷惑だわ』なんて白々しい言い訳して、手元に残して眺めてうっとりしてるじゃない。どうせカフスボタンだって眺めるつもりで作ったでしょ」
お兄様によってエレナの秘事が明かされる。
……エレナ……愛が重いよ。
オタクと同じ方向性だよ。
それにしてもお兄様の思ったことをすぐ口にするところは良いところだと思っていたけど、デリカシーのかけらもない。
やっぱり短所だとおもう。
ベンチに座る殿下は、突然明かされた内容に困惑したのか顔を下に向けて眉間を摘んでいる。
「ほら、出して」
お兄様にせっつかれてポケットから、いつでも眺められる様にと小さな袋に入れたカフスボタンをおずおずと出す。
「じゃあ僕ジェームズ商会の息子と契約の話しに行ってくるから、殿下はエレナから受け取ってちゃんとそのカフスボタンつけといて下さいね!」
そういうとお兄様はこちらを振り返りもせずに飛び出して行ってしまった。
ダスティン様は顔を真っ青にして名を叫ぶと、倒れたコーデリア様を軽々と抱き上げて医務室に向かった。
騒がしかった四阿は静寂に包まれている。
これはきっと医務室で目を覚まして、ダスティン様にお姫様抱っこで運ばれたことをお医者様に告げられて、その事実にまたコーデリア様が失神するパターンだと思う。
なのにダスティン様が取り乱してコーデリア様のこと呼び捨てにしてた、なんてときめきシーンは本人は気を失っていて知らない。
進展しそうでしない恋は少女漫画で見る分にはいいけど、目の前で見ると焦ったい。
……もしかして、わたしが転生したのはヒロインはコーデリア様でお相手はダスティン様の少女漫画の物語で、わたしと殿下はモブなんじゃないかしら。
って、都合のいい説を考えてはみたけれど、コーデリア様がヒロインな話だって見覚えはない。
「ねぇ。エレナあのカフスボタンって誰が作ったの? まさかエレナ?」
一人で考え込んでいたらお兄様に声をかけられる。
エレナとして生活をしていると、エレナが刺繍やレース編みみたいな手芸が大好きで得意にしている事を思い出した。
刺繍も編み物も針を持てば勝手に手が動いていく。
それでも流石に金属加工を伴うリメイクはさすがにやり方は分からない。
「お兄様が街に出てはいけないって言うから、スピカさんからアクセサリーを扱うジェームズ商会の御子息が王立学園にいると教えてもって、紹介していただいたの。ジェームズ商会お抱えの工房に、カフスボタンのリメイクを依頼しました」
「よかった。まだ金属細工には手を出さないか」
ホッとした様子のお兄様を見上げる。
リメイク依頼をしたカフスボタンは、想像以上に素敵な出来上がりで、満足したわたしはダスティン様に御守り代わりだなんて適当なことを言ってお渡しした。
もちろんただのカフスボタンで、加護を感じるかはダスティン様次第だったのだけど、凄い効果が現れる結果となった。
「あっ!」
お兄様が何かに気がついた様子でわたしを見る。
「エレナ! カフスボタンいま持ってるなら、殿下に渡して!」
「え⁈」
「いま持ってないの? 屋敷?」
お兄様は当然の様にエレナが自分の分……というか、殿下の分のカフスボタンも用意していると信じている。
いや、まぁ作ってもらったけど。
でもそれは渡すためじゃなくて、このカフスボタンを殿下がつけるところを想像してニヤニヤしたいという、推しが身につけてそうな物を手元に置きたい恵玲奈の悪い癖がでてしまっただけで……
何故それがお兄様にバレてしまったのかが分からない。
「なっ。なんで殿下にお渡しする分があると思ってるの?」
「だって、毎年殿下に贈るハンカチと同じ意匠のスカーフタイだのリボンタイだの、セットで作るだけ作るくせに『あまりたくさんお送りしてもご迷惑だわ』なんて白々しい言い訳して、手元に残して眺めてうっとりしてるじゃない。どうせカフスボタンだって眺めるつもりで作ったでしょ」
お兄様によってエレナの秘事が明かされる。
……エレナ……愛が重いよ。
オタクと同じ方向性だよ。
それにしてもお兄様の思ったことをすぐ口にするところは良いところだと思っていたけど、デリカシーのかけらもない。
やっぱり短所だとおもう。
ベンチに座る殿下は、突然明かされた内容に困惑したのか顔を下に向けて眉間を摘んでいる。
「ほら、出して」
お兄様にせっつかれてポケットから、いつでも眺められる様にと小さな袋に入れたカフスボタンをおずおずと出す。
「じゃあ僕ジェームズ商会の息子と契約の話しに行ってくるから、殿下はエレナから受け取ってちゃんとそのカフスボタンつけといて下さいね!」
そういうとお兄様はこちらを振り返りもせずに飛び出して行ってしまった。
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