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第一部 第二章
26 エレナ王立学園で過ごす
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悪口は言い慣れてるけど、反論され慣れていないだろうご令嬢方はわたしの突然の行動に思い切り目を見開く。
「どういうおつもりか伺っておりますけど、聞こえませんでした?」
「いやですわ、言葉の通り、魔法が使える女性だという意味しかございませんわ。エレナ様に差別意識があるから違う意味に聞こえるんではございませんこと?」
うわ。ムカつく!
「エレナ様! わたしのことなんて無理に庇わなくても大丈夫です! 皆さまも悪気があったわけではないってことですよね?」
「スピカさんは黙っていらして! わたしはこちらの皆さまに尋ねているのです! 特待生ということは国にとって必要な人材として求められているというのに、そんなスピカさんに悪口言うなんて国への反逆です!」
わたしがそう叫ぶと、何か言おうとしたご令嬢達がぐっと押し黙り顔を歪める。
「それに、スピカさんはわたしの大切な友人ですっ! そのスピカさんを侮辱するというのは、未来の王妃を挑発したとみなしますから、覚悟なさいませっ!」
わたしはそう言って荷物をまとめると、逃げる様にお兄様が待っているだろう中庭に向かう。
……やっちゃった。
ついカッとなって啖呵を切ってしまった。
悪口を言ってたあっちも悪役令嬢みたいだけど、殿下の婚約者という権力を笠に着たわたしの上から目線な発言もまるっきり悪役令嬢みたいだ。
悪役令嬢みたいにならない様にと思っているのに……
「エレナ様」
スピカさんの声に振り返る。
追いかけてきてくれたのね。
「ありがとうございます」
そう言ってわたしの手をぎゅっと握る。
「そんなお礼を言われることなんてしていないわ。偉そうに啖呵を切って逃げただけだもの」
「エレナ様が友人って言ってくださったこと、ほんとうに嬉しいです」
「え? あ、そっち?」
スピカさんは頷くと気まずそうな顔でわたしを見つめる。
「そして、すみません」
深々とストロベリーブロンドのあたまをさげた。ツインテールが勢いよく揺れる。
「なに? 急にあやまって」
「さっきエレナ様に魔法をかけてしまいました」
「えっ! 魔法? どういうこと?」
「あの場をおさめるために、エレナ様とあの人たちに魔法をかけたんです」
「魔法? スピカさんの? えっ? 魔法かけられたなんて気がつかなかったわ!」
お医者様に治癒していただいた時は魔力の流れを感じて、魔法にかけられたことがよくわかった。
さっきは何も感じなかった。
スピカさんに何か魔法をかけられたとは思えない。
「みんな……何も喋れなくなる予定だったんです」
「どういう事?」
「さっきわたしが叫んだ時に、エレナ様もお嬢様方も嘘がつけないように、言葉に魔力を込めました」
なんか言われてみればスピカさんがそんな事叫んでいた気がする。
「わたしの魔法は『一定時間だけ発言を制限させる事』が出来るんです。自分の心と乖離した事……いわゆる嘘を言おうとすると言葉がなかなか出て来ずに、無理に発言しようとすると頭に激痛が走ります。だから……本心しか話せないのでみんな何も喋れずに沈黙が訪れるって思ったんです」
「それで、あの人たちは心にもないことを言っていたから、黙ってしまったのね」
凄い!
魔法って治癒魔法とか火や水の力みたいのじゃないのね。
なんか魔法ってより呪いみたいな感じか!
そういえば光魔法と闇魔法に体系が分かれるって聞いたし、スピカさんは闇魔法が使えるって事ね。
可愛らしい見た目から勝手に光魔法だと思い込んでいたから、思っていたイメージと違ってびっくりしたけど、スピカさんの事を国が囲いたい理由もわかった。
間諜をあぶり出したりするのに便利だ。
「本当にスピカさんって凄いのね。あ、ねぇわたしにまだ魔法はかかってるの? 何か嘘ついてみてもいい? どれくらい頭が痛くなるのか試してみたいんだけど」
「もうかかってませんよ」
「あら、そうなの? 残念」
「……エレナ様。わたし、将来は王妃様専属の近衛騎士になります!」
わたしは、泣き笑いのスピカさんに急に抱きしめられた。
「どういうおつもりか伺っておりますけど、聞こえませんでした?」
「いやですわ、言葉の通り、魔法が使える女性だという意味しかございませんわ。エレナ様に差別意識があるから違う意味に聞こえるんではございませんこと?」
うわ。ムカつく!
「エレナ様! わたしのことなんて無理に庇わなくても大丈夫です! 皆さまも悪気があったわけではないってことですよね?」
「スピカさんは黙っていらして! わたしはこちらの皆さまに尋ねているのです! 特待生ということは国にとって必要な人材として求められているというのに、そんなスピカさんに悪口言うなんて国への反逆です!」
わたしがそう叫ぶと、何か言おうとしたご令嬢達がぐっと押し黙り顔を歪める。
「それに、スピカさんはわたしの大切な友人ですっ! そのスピカさんを侮辱するというのは、未来の王妃を挑発したとみなしますから、覚悟なさいませっ!」
わたしはそう言って荷物をまとめると、逃げる様にお兄様が待っているだろう中庭に向かう。
……やっちゃった。
ついカッとなって啖呵を切ってしまった。
悪口を言ってたあっちも悪役令嬢みたいだけど、殿下の婚約者という権力を笠に着たわたしの上から目線な発言もまるっきり悪役令嬢みたいだ。
悪役令嬢みたいにならない様にと思っているのに……
「エレナ様」
スピカさんの声に振り返る。
追いかけてきてくれたのね。
「ありがとうございます」
そう言ってわたしの手をぎゅっと握る。
「そんなお礼を言われることなんてしていないわ。偉そうに啖呵を切って逃げただけだもの」
「エレナ様が友人って言ってくださったこと、ほんとうに嬉しいです」
「え? あ、そっち?」
スピカさんは頷くと気まずそうな顔でわたしを見つめる。
「そして、すみません」
深々とストロベリーブロンドのあたまをさげた。ツインテールが勢いよく揺れる。
「なに? 急にあやまって」
「さっきエレナ様に魔法をかけてしまいました」
「えっ! 魔法? どういうこと?」
「あの場をおさめるために、エレナ様とあの人たちに魔法をかけたんです」
「魔法? スピカさんの? えっ? 魔法かけられたなんて気がつかなかったわ!」
お医者様に治癒していただいた時は魔力の流れを感じて、魔法にかけられたことがよくわかった。
さっきは何も感じなかった。
スピカさんに何か魔法をかけられたとは思えない。
「みんな……何も喋れなくなる予定だったんです」
「どういう事?」
「さっきわたしが叫んだ時に、エレナ様もお嬢様方も嘘がつけないように、言葉に魔力を込めました」
なんか言われてみればスピカさんがそんな事叫んでいた気がする。
「わたしの魔法は『一定時間だけ発言を制限させる事』が出来るんです。自分の心と乖離した事……いわゆる嘘を言おうとすると言葉がなかなか出て来ずに、無理に発言しようとすると頭に激痛が走ります。だから……本心しか話せないのでみんな何も喋れずに沈黙が訪れるって思ったんです」
「それで、あの人たちは心にもないことを言っていたから、黙ってしまったのね」
凄い!
魔法って治癒魔法とか火や水の力みたいのじゃないのね。
なんか魔法ってより呪いみたいな感じか!
そういえば光魔法と闇魔法に体系が分かれるって聞いたし、スピカさんは闇魔法が使えるって事ね。
可愛らしい見た目から勝手に光魔法だと思い込んでいたから、思っていたイメージと違ってびっくりしたけど、スピカさんの事を国が囲いたい理由もわかった。
間諜をあぶり出したりするのに便利だ。
「本当にスピカさんって凄いのね。あ、ねぇわたしにまだ魔法はかかってるの? 何か嘘ついてみてもいい? どれくらい頭が痛くなるのか試してみたいんだけど」
「もうかかってませんよ」
「あら、そうなの? 残念」
「……エレナ様。わたし、将来は王妃様専属の近衛騎士になります!」
わたしは、泣き笑いのスピカさんに急に抱きしめられた。
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