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第一部 第二章
21 エレナ王立学園に通う
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「エレナちゃんは、大好きな殿下をお探しかな? 残念ながら、殿下ならこの時間はいつも執務室に籠ってるよ」
「ちっ……ちがいます。お兄様を探しているんです」
そして何が嫌かってエレナの事を小さな子供扱いするところ。
そりゃ殿下もエレナを子供扱いしてると思うけど、妹として大切にしてくださっている。
オーウェン様は違う。子供扱いして馬鹿にしている。
殿下の婚約者に決まってもわたしを下げる発言ばかりだ。
去年、殿下の誕生日に開かれたパーティー前の茶会を思い出すと、苦い気持ちが込み上げてくる。
オーウェン様は、こともあろうか殿下に向かって「一緒に夜会にも出れないようなお子様と婚約なんておままごと、いつまで続ける気なんだ?」と問い詰めていた。
あの時殿下は、どんな顔で、なんてお答えになったのか、思い出せない。
……思い出せる思い出と、思い出せない思い出に偏りがある。
オーウェン様のムカつく発言は覚えているのに、殿下の反応は思い出せない。
殿下の反応によっては甘い思い出にも苦い思い出にもなる。
殿下に対する思いがわかるような思い出は、まだ思い出せない。
エレナが殿下の事が小さい頃から大好きなのはわかるけど、どういうところが具体的に好きなのか、好きにしたって単純に好きってだけじゃなくてもっと複雑な感情があると思うんだけど……
……きっとエレナが殿下の事が好きであればストーリーに影響はないから、それ以上でもそれ以下でもない。
って事なんだろうな。
早くなんのゲームなのか小説なのかマンガなのかそれさえ思い出せれば、もっと上手く立ち回れるはずなのに。
「ほっぺた膨らませちゃって可愛いねぇ」
これっぽっちも可愛いだなんて思ってない事がよーくわかる、オーウェン様の揶揄うような笑顔にムッとする。
「オーウェン様。未来の王妃に向かって失礼ではありませんこと?」
つい自分の立場を利用した言い方をしてしまい、ハッとする。
まるで悪役令嬢みたい。
シナリオが動き出しているの?
「エレナ!」
お兄様の声が聞こえると、それまでわたしを揉みくちゃにしていたご令嬢達がお兄様に場所を譲っているのが見えた。
「オーウェン様。エレナが何かいたしましたか?」
お兄様のよそゆきな声を聞いて、わたしは落ち着こうとする。
「いや。久しぶりにお会いしたのでご挨拶したに過ぎない。ほら。お探しのお兄ちゃまが直々にお越しですよ。エレナ姫」
オーウェン様はわたしの肩に手を置きニヤリと笑った。
やっぱり苦手だわ!
肩に置かれた手を払い除けオーウェン様を睨みつけたわたしを見て、お兄様は手で顔を覆うと天を見上げた。
***
「エレナ。殿下の婚約者だって事で、ただでさえ皆んなエレナに注目してるのに、どうしてオーウェンと絡むなんて目立つようなことするの」
お兄様は「エレナと過ごすから」とついて回るご令嬢達を笑顔で見送り、わたしに向き直ると呆れ果てたようにそう言った。
「申し訳ありません」
悪役令嬢ばりに目立つようなことしてまずかったな。とは思う。
思うけど、今回はからかってきたオーウェン様の方が圧倒的に悪いと思うんだけど……
「全然反省してないでしょ」
「お兄様には全てお見通しですね」
「まったくもう」
困った様に笑ってお兄様はわたしの手を取る。
「ほら、殿下の部屋に行こう」
殿下の部屋? そういえばさっきオーウェン様もそんな事を言っていた。
考え込むわたしを見て、お兄様は学園内に殿下専用の執務室があることや、そこで殿下の側近のランス様や、お兄様の様に成人したら王室で殿下の側近として勤めることになるだろうと目される御令息たちが昼間や放課後に集まって談笑したりしている事を教えてくれた。
「緊張しなくても大丈夫だよ。今日は人払いしてあるから」
……ひっ人払いしている部屋にわたしのことを連れ込んで、どうするつもりなの⁈
緊張しなくていいなんていわれても、わたしの胸はバクバクが止まらなかった。
「ちっ……ちがいます。お兄様を探しているんです」
そして何が嫌かってエレナの事を小さな子供扱いするところ。
そりゃ殿下もエレナを子供扱いしてると思うけど、妹として大切にしてくださっている。
オーウェン様は違う。子供扱いして馬鹿にしている。
殿下の婚約者に決まってもわたしを下げる発言ばかりだ。
去年、殿下の誕生日に開かれたパーティー前の茶会を思い出すと、苦い気持ちが込み上げてくる。
オーウェン様は、こともあろうか殿下に向かって「一緒に夜会にも出れないようなお子様と婚約なんておままごと、いつまで続ける気なんだ?」と問い詰めていた。
あの時殿下は、どんな顔で、なんてお答えになったのか、思い出せない。
……思い出せる思い出と、思い出せない思い出に偏りがある。
オーウェン様のムカつく発言は覚えているのに、殿下の反応は思い出せない。
殿下の反応によっては甘い思い出にも苦い思い出にもなる。
殿下に対する思いがわかるような思い出は、まだ思い出せない。
エレナが殿下の事が小さい頃から大好きなのはわかるけど、どういうところが具体的に好きなのか、好きにしたって単純に好きってだけじゃなくてもっと複雑な感情があると思うんだけど……
……きっとエレナが殿下の事が好きであればストーリーに影響はないから、それ以上でもそれ以下でもない。
って事なんだろうな。
早くなんのゲームなのか小説なのかマンガなのかそれさえ思い出せれば、もっと上手く立ち回れるはずなのに。
「ほっぺた膨らませちゃって可愛いねぇ」
これっぽっちも可愛いだなんて思ってない事がよーくわかる、オーウェン様の揶揄うような笑顔にムッとする。
「オーウェン様。未来の王妃に向かって失礼ではありませんこと?」
つい自分の立場を利用した言い方をしてしまい、ハッとする。
まるで悪役令嬢みたい。
シナリオが動き出しているの?
「エレナ!」
お兄様の声が聞こえると、それまでわたしを揉みくちゃにしていたご令嬢達がお兄様に場所を譲っているのが見えた。
「オーウェン様。エレナが何かいたしましたか?」
お兄様のよそゆきな声を聞いて、わたしは落ち着こうとする。
「いや。久しぶりにお会いしたのでご挨拶したに過ぎない。ほら。お探しのお兄ちゃまが直々にお越しですよ。エレナ姫」
オーウェン様はわたしの肩に手を置きニヤリと笑った。
やっぱり苦手だわ!
肩に置かれた手を払い除けオーウェン様を睨みつけたわたしを見て、お兄様は手で顔を覆うと天を見上げた。
***
「エレナ。殿下の婚約者だって事で、ただでさえ皆んなエレナに注目してるのに、どうしてオーウェンと絡むなんて目立つようなことするの」
お兄様は「エレナと過ごすから」とついて回るご令嬢達を笑顔で見送り、わたしに向き直ると呆れ果てたようにそう言った。
「申し訳ありません」
悪役令嬢ばりに目立つようなことしてまずかったな。とは思う。
思うけど、今回はからかってきたオーウェン様の方が圧倒的に悪いと思うんだけど……
「全然反省してないでしょ」
「お兄様には全てお見通しですね」
「まったくもう」
困った様に笑ってお兄様はわたしの手を取る。
「ほら、殿下の部屋に行こう」
殿下の部屋? そういえばさっきオーウェン様もそんな事を言っていた。
考え込むわたしを見て、お兄様は学園内に殿下専用の執務室があることや、そこで殿下の側近のランス様や、お兄様の様に成人したら王室で殿下の側近として勤めることになるだろうと目される御令息たちが昼間や放課後に集まって談笑したりしている事を教えてくれた。
「緊張しなくても大丈夫だよ。今日は人払いしてあるから」
……ひっ人払いしている部屋にわたしのことを連れ込んで、どうするつもりなの⁈
緊張しなくていいなんていわれても、わたしの胸はバクバクが止まらなかった。
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