【完結】友人が異世界転生してきた悪妃だとか言い出したんだけど

江崎美彩

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「皇帝陛下の愛を試したくて、国中の宝石を独占したいとわがままを言ってそれを咎めるような家臣たちを宮殿から追い出したり、いろんな男をたぶらかしては私のテクニックで夢中にさせて陛下を嫉妬させようとしたり、後宮の女達をいたぶったりしたわ。国を傾けた悪帝と悪妃として斬首刑の咎を受けて……気がついたら、私がずっと馬鹿にしていたような冴えない男に生まれ変わっていたの。天罰ね……」

 おいおい。
 オマエの十八年間は天罰に感じるほどひどくないと思うぞ……

 まぁ、中学生以降のオマエしか知らないけど。

「ちゃんとこの世界で生きた十八年間の記憶もあるのよ……あるからこそ、皇帝陛下に愛された美しき傾国の悪妃の記憶と混濁していて気持ちの整理がつかないの。私が前世のような振る舞いをしたらおかしいし、でも冴えない男として振る舞うのは私のプライドが許せない……」

 コイツはオレのこと揶揄ってるのか……
 それとも創作活動に没頭しすぎて虚構フェイク現実リアルを侵食し始めたのだろうか……

 オレはとりあえず氷がすっかり溶けて無くなった麦茶を一気に飲み干す。

 ゴン

 勉強机にコップを少し乱暴に置いて注意を引く。

「……いきなりオマエの振る舞いが傾国の美女になっても周りも混乱するし、かと言ってオマエも傾国の美女の記憶をなかったものにするのも辛いだろ? とりあえずさ、オレの前では気にせず傾国の美女として好きに振る舞えばいいよ」

 揶揄ってるならそのうち飽きるだろうし、虚構と現実の区別がつかなくなってるとしてもそう長くは続かないだろう……付き合ってやるか。



 そう思ってそんな事を言ってしまったのを、今は猛烈に後悔している。

 オレの言葉に目を輝かせて、急に抱きついてきた。

「うわぁ」

 驚いて声を上げた口を塞ぎ、オレの口の内に生ぬるい舌が入ってくる。
 
 え? 待てよ。
 俺のファーストキス……!

「んっ……んっ……」

 白くて細い腕を俺の首に巻きつけて、甘い声をわざと出すのは煽っているのだろうか。

「……っ!!」

 口内を蠢く舌で上顎をなぞられると、ゾクゾクとした刺激が身体を駆け巡る。

 オレが感じ始めているのを察したのか舌同士を乱暴に絡められてしまい、どんどん呼吸が苦しくなる。

 余裕のない俺の顔を蕩けるような眼差しで見つめていたと思ったら、急に舌の動きが止まり唇が離れる。
 わざと口を半開きにして舌の先に唾液の糸が繋がっているのを見せプツリと切れる。唇についた唾液を赤い舌が舐めとる。

 オレの首に巻きついていた腕は離されて、いつのまにか俺の制服のズボンはくつろげられていた。

 オレの方がガタイがいい分、押し返せば逃げられたはずだ……

 それなのにオレは、コイツが次に何をするのか期待して逃げ出さずにとどまってしまった。
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