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第七章 俺の可愛い婚約者は渡さない!
第八十五話 生まれて初めての反撃1 デスティモナ伯爵邸への呼び出し
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その後、つつがなくハーミング伯爵に挨拶を済ませて夜会を後にする。
帰り際に先ほどの女が遠巻きに睨んでいるのが目に止まった。お坊ちゃんの牽制にすぐ逃げ出したため、大した騒ぎにはなっていない様子だった。
すぐ大騒ぎにしてしまうネリーネよりも、確かにああいう女の方が領主の妻として相応しいのかも知れない。
……あの女が言うように、ネリーネとの結婚にはなにかクソジジイなりの意図があるのだろうか。
俺は馬車の中で移りゆく景色を眺めながら考え込んだ。
***
「旦那様。デスティモナ家からの使者が来ています」
朝早くから執事の声が聞こえて扉が開く。
開いた扉の向こうは、いつもは落ち着き払ったマグナレイ侯爵家別邸には珍しく騒がしい。年齢層の高いこの屋敷では、鶏よりも早起きな使用人が多い。そのため夜が明ける前から緩やかに一日が始まっており、まだのんびりとした時間のはずだ。
普段とは違う雰囲気に俺は慌てて飛び起きた。
「デスティモナ伯爵家の使者が何の用だ」
背中に嫌な汗が流れる。
ネリーネから婚約破棄の申し出だったら……
俺は深呼吸をして、自分に冷静になるように言い聞かせる。
そんなことはないはずだ。
「旦那様に急いでデスティモナ邸まで来てほしいとのことです」
執事の回答に俺は慌てて着替える。最近はデスティモナ邸に行っても顔も出さないネリーネに追い返されてばかりだった。急いで行かなくてはいけない理由はいったいなんなんだ。
階段を一段飛ばしで駆け降り、開け放たれた玄関に向かう。
「ステファン様!」
玄関アプローチではデスティモナ伯爵家の使用人であるダニーが二人乗り馬車の馭者席で待ち構えていた。
いつものやたらと派手で豪華な馬車ではない。機動力を重んじた馬車で駆けつけて来たことからも急用なのがよくわかる。
「とにかく急いで乗ってくれ!」
乱暴にダニーはそう言って俺を座席に座るように促した。
デスティモナ邸に向かう道すがら、なんの話か聞こうと思っていたが、ダニーは凄い剣幕で鞭を振るい馬を走らせており、それどころではない。
そもそも座席と開閉式の幌だけの質素な馬車は、箱馬車と違い馬の速度を普段以上に感じる。壁などの身を守るものもなにもないので振り落とされないようにするので俺も必死だった。
生きた心地がしないままデスティモナ邸に到着すると、普段なら出迎えてくれるはずの使用人は誰も出てこない。
ダニーの後を追い屋敷の階段を駆け上る。向かっている方向から喧騒が聞こえる。肩で息をしながらたどり着いたのは、初めて立ち入った家族専用のフロアだった。
豪奢な装飾の扉の前で見覚えのある男が大きな声を上げる。
「扉を開けろ!」
扉に張り付いたネリーネの侍女であるミアが頭を横に振り固辞していた。
見覚えのある。なんてものじゃない。幼少期からずっと俺を邪険にしてきた、視界にも入れたくない男──モーガンがどうしてここにいるんだ。
帰り際に先ほどの女が遠巻きに睨んでいるのが目に止まった。お坊ちゃんの牽制にすぐ逃げ出したため、大した騒ぎにはなっていない様子だった。
すぐ大騒ぎにしてしまうネリーネよりも、確かにああいう女の方が領主の妻として相応しいのかも知れない。
……あの女が言うように、ネリーネとの結婚にはなにかクソジジイなりの意図があるのだろうか。
俺は馬車の中で移りゆく景色を眺めながら考え込んだ。
***
「旦那様。デスティモナ家からの使者が来ています」
朝早くから執事の声が聞こえて扉が開く。
開いた扉の向こうは、いつもは落ち着き払ったマグナレイ侯爵家別邸には珍しく騒がしい。年齢層の高いこの屋敷では、鶏よりも早起きな使用人が多い。そのため夜が明ける前から緩やかに一日が始まっており、まだのんびりとした時間のはずだ。
普段とは違う雰囲気に俺は慌てて飛び起きた。
「デスティモナ伯爵家の使者が何の用だ」
背中に嫌な汗が流れる。
ネリーネから婚約破棄の申し出だったら……
俺は深呼吸をして、自分に冷静になるように言い聞かせる。
そんなことはないはずだ。
「旦那様に急いでデスティモナ邸まで来てほしいとのことです」
執事の回答に俺は慌てて着替える。最近はデスティモナ邸に行っても顔も出さないネリーネに追い返されてばかりだった。急いで行かなくてはいけない理由はいったいなんなんだ。
階段を一段飛ばしで駆け降り、開け放たれた玄関に向かう。
「ステファン様!」
玄関アプローチではデスティモナ伯爵家の使用人であるダニーが二人乗り馬車の馭者席で待ち構えていた。
いつものやたらと派手で豪華な馬車ではない。機動力を重んじた馬車で駆けつけて来たことからも急用なのがよくわかる。
「とにかく急いで乗ってくれ!」
乱暴にダニーはそう言って俺を座席に座るように促した。
デスティモナ邸に向かう道すがら、なんの話か聞こうと思っていたが、ダニーは凄い剣幕で鞭を振るい馬を走らせており、それどころではない。
そもそも座席と開閉式の幌だけの質素な馬車は、箱馬車と違い馬の速度を普段以上に感じる。壁などの身を守るものもなにもないので振り落とされないようにするので俺も必死だった。
生きた心地がしないままデスティモナ邸に到着すると、普段なら出迎えてくれるはずの使用人は誰も出てこない。
ダニーの後を追い屋敷の階段を駆け上る。向かっている方向から喧騒が聞こえる。肩で息をしながらたどり着いたのは、初めて立ち入った家族専用のフロアだった。
豪奢な装飾の扉の前で見覚えのある男が大きな声を上げる。
「扉を開けろ!」
扉に張り付いたネリーネの侍女であるミアが頭を横に振り固辞していた。
見覚えのある。なんてものじゃない。幼少期からずっと俺を邪険にしてきた、視界にも入れたくない男──モーガンがどうしてここにいるんだ。
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