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第六章 可愛い婚約者にズキュンさせれれっぱなしの俺
第七十七話 ドレスのオーダー9 仕立てたいのは俺の婚約者が自分で好きだと思う格好
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「まずは、わたくしの婚礼用に貴女が考えている、依頼主に合った新しいドレスとやらを仕立てていただかないといけないわね」
ネリーネは腰掛けている安普請な椅子で偉そうに踏ん反りかえる。
「とはいいましても、今回はわたくしじゃなくてステファン様が払ってくださるから、大それたドレスは作れませんけど」
「悪かったな。どうせ、しがない労働者だよ」
「あら。そんなこと一言も言っておりませんでしょう?」
「じゃあ、何だって言うんだ」
「だってステファン様が支払ってくださるってことはわたくしへの贈り物なのでしょう? それならわたくしはステファン様が喜ぶ格好をしたいもの、ステファン様にどんなドレスがいいか考えていただきたいわ。ただ、そうすると、ステファン様のセンスにお任せする事になって、彼女が作りたい新しいドレスになりようがないでしょう」
えっ……ネリーネを俺が喜ぶ格好にしていい?
とんでもなく不埒な考えが一瞬にして頭を埋め尽くす。
違う! ダメだ! 今は婚礼用のドレスの話だ!
「いや、その……自分の好きにすればいい」
真剣なネリーネの眼差しに、自分の下心を見透かされた気がして慌てて視線を逸らした俺は、冷静を装ってそう伝えた。
「えっ……? あっ……考えて下さらないのね。そっ、そうですわよね。ドレスを贈ってくださるなんて伺ったから、つい浮かれてしまいましたわ。そうですわよね。お忙しい貴方に私のためのドレスを考えて欲しいなんて……」
顔をしわくちゃにして涙を堪えるネリーネに、自分が、また間違えた返答をしてしまった事に気がつく。
「ちっちが……違うんだ。その、俺と結婚するんだから、今後は誰かの好みに縛られる事なく、貴女の好きな格好をすればいい」
潤んだ瞳が期待で輝きを増して、真っ直ぐ俺を見つめる。
あぁっ。可愛いなぁ! クソッ。抱きしめたい。
「俺はネリーネ自身が着たいと思うドレスを着て欲しい」
「……わたくしが着たいと思うドレスを贈ってくださいますの?」
「あぁ」
俺の返事に感極まったネリーネはいつものように小さな愛らしい手を胸元で握りしめて、ふす。と鼻息を荒くする。
「本当に?」
上目遣いで俺に尋ねる。頷いてやるとネリーネは満面の笑みを浮かべる。
可愛い。
俺がネリーネの可愛さを噛み締めている間に、気がつけば、好きなドレスを作っていいと聞いたネリーネが嬉々として、針子の女に国内で最高級の絹繻子織に金糸や銀糸を運ばせていた。
針子の女の説明に眩暈がしそうになる。
値段の想像がつかない。
とりあえず、預かった封筒を針子の女に渡して、マグナレイ侯爵家に請求書を送るようにすれば、侯爵家で立て替えくらいしてくれるだろう。クソジジイに分割で返済するので勘弁してもらえないか相談しなくては。
俺は嬉しそうなネリーネを横目に見ながら、頭を悩ませた。
ネリーネは腰掛けている安普請な椅子で偉そうに踏ん反りかえる。
「とはいいましても、今回はわたくしじゃなくてステファン様が払ってくださるから、大それたドレスは作れませんけど」
「悪かったな。どうせ、しがない労働者だよ」
「あら。そんなこと一言も言っておりませんでしょう?」
「じゃあ、何だって言うんだ」
「だってステファン様が支払ってくださるってことはわたくしへの贈り物なのでしょう? それならわたくしはステファン様が喜ぶ格好をしたいもの、ステファン様にどんなドレスがいいか考えていただきたいわ。ただ、そうすると、ステファン様のセンスにお任せする事になって、彼女が作りたい新しいドレスになりようがないでしょう」
えっ……ネリーネを俺が喜ぶ格好にしていい?
とんでもなく不埒な考えが一瞬にして頭を埋め尽くす。
違う! ダメだ! 今は婚礼用のドレスの話だ!
「いや、その……自分の好きにすればいい」
真剣なネリーネの眼差しに、自分の下心を見透かされた気がして慌てて視線を逸らした俺は、冷静を装ってそう伝えた。
「えっ……? あっ……考えて下さらないのね。そっ、そうですわよね。ドレスを贈ってくださるなんて伺ったから、つい浮かれてしまいましたわ。そうですわよね。お忙しい貴方に私のためのドレスを考えて欲しいなんて……」
顔をしわくちゃにして涙を堪えるネリーネに、自分が、また間違えた返答をしてしまった事に気がつく。
「ちっちが……違うんだ。その、俺と結婚するんだから、今後は誰かの好みに縛られる事なく、貴女の好きな格好をすればいい」
潤んだ瞳が期待で輝きを増して、真っ直ぐ俺を見つめる。
あぁっ。可愛いなぁ! クソッ。抱きしめたい。
「俺はネリーネ自身が着たいと思うドレスを着て欲しい」
「……わたくしが着たいと思うドレスを贈ってくださいますの?」
「あぁ」
俺の返事に感極まったネリーネはいつものように小さな愛らしい手を胸元で握りしめて、ふす。と鼻息を荒くする。
「本当に?」
上目遣いで俺に尋ねる。頷いてやるとネリーネは満面の笑みを浮かべる。
可愛い。
俺がネリーネの可愛さを噛み締めている間に、気がつけば、好きなドレスを作っていいと聞いたネリーネが嬉々として、針子の女に国内で最高級の絹繻子織に金糸や銀糸を運ばせていた。
針子の女の説明に眩暈がしそうになる。
値段の想像がつかない。
とりあえず、預かった封筒を針子の女に渡して、マグナレイ侯爵家に請求書を送るようにすれば、侯爵家で立て替えくらいしてくれるだろう。クソジジイに分割で返済するので勘弁してもらえないか相談しなくては。
俺は嬉しそうなネリーネを横目に見ながら、頭を悩ませた。
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