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第六章 可愛い婚約者にズキュンさせれれっぱなしの俺
第七十五話 ドレスのオーダー7 投資の話に花咲く可愛い婚約者はまさに毒花令嬢
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大股で肩を揺らして歩く感じの悪い針子の女に連れられて、来た廊下を戻る。
廊下の途中にある明らかに安っぽい装飾の扉を開くと、そこは作業台だけでスペースが埋まってしまうような部屋だった。
「マダムの部屋と比べると随分と狭いのね」
思ったことはそのまま口に出てしまうネリーネに針子の女は嫌な顔をする。
「金持ちのお嬢様が来るような場所じゃないでしょうけど、私みたいななんの後ろ盾のない針子は、この部屋をあてがってくれただけでも感謝しなくちゃいけないんだ」
「あらそう。それで、新しいお店はもっと広い部屋を用意できるの?」
ネリーネは嫌味なんて気にも止めずに興味津々で戸棚に整理された糸や布を眺めている。
「はっ。新しい店なんて用意できるわけないさ」
「じゃあ、まずは貴女の店の計画から伺わないといけないわね」
「はぁ? 何を言っているの?」
「だって、貴女の大々的な独立に花を添えるために、貴女のリュクレールでの最後の仕事としてわたくしのドレスを依頼するのよ? 独立したらこのリュクレールに引けを取らない服飾店にしましょうね。 店の場所はどこがいいの? この大通りかしら? そもそもターゲットはリュクレールと同じような流行物好きな目立ちたがり屋の貴族達にするの? それなら北の大通りが大々的に整備されると噂されてますから、そちらの方がいいわね。今ならまだ北の大通りは手頃な金額で居抜きの物件が見つけられると思うわ。ねぇ! そうしましょうよ! きっと、貴女の店が新しい大通りの目玉になるわ!」
目を輝かせたネリーネは針子の女の手を取り握りしめる。羨ましい。って、そうじゃない。
「は? えっ? はぁっ? あっアンタ何言ってんのよ!」
勢いに気圧された針子の女は握られた手を慌てて振り解くが動揺が隠しきれない。さっきに増して口が悪い。
「あら、他の場所がいい? やっぱりこの大通りがいいの? この通りで開くならターゲットを変えた方がいいわ。残念ながら同じ商売の仕方をしていたらマダムには勝てないわよ」
ネリーネはいつものようにふすふすと鼻息が荒い。目の前の針子が独立するための後援者になるつもりだ。
「あんた本気なの? なんで?」
「なんでって貴女がこの店で一番腕がいい針子だもの。投資に値するわ。そりゃもちろん慈善事業ではありませんから見返りは求めますわよ? そうね。元金の支払いが終わるまでは、私のドレスを優先的に作っていただきたいわ。結婚しますからいつまでも少女のようなドレスではなく、淑女らしいドレスをあつらえなくてはいけませんもの」
「でも、結婚して金持ちのご令嬢じゃなくなるんだろ? それともあたしに、タダで作らせようっていうのか?」
「タダ? フッ。どうしてわたくしがそんな労働者にたかるようなことをするとお思いになって? 結婚すればデスティモナ家の娘ではなくなりますけれど、わたくしは自分が投資で得た資金が十分ありますから、ステファン様なんかに頼らなくても、貴女の才能の対価に見合うだけの金額を払いますわ。それに投資家の面々が集うサロンて貴女の店を紹介する時に、わたくしが貴女の仕立てたドレスを着て貴女の腕の素晴らしさを伝えるためにも必要でしょう」
胸を張り顎を上げて針子の女を見下ろすような尊大な態度で笑うネリーネはまさに毒花令嬢だった。
廊下の途中にある明らかに安っぽい装飾の扉を開くと、そこは作業台だけでスペースが埋まってしまうような部屋だった。
「マダムの部屋と比べると随分と狭いのね」
思ったことはそのまま口に出てしまうネリーネに針子の女は嫌な顔をする。
「金持ちのお嬢様が来るような場所じゃないでしょうけど、私みたいななんの後ろ盾のない針子は、この部屋をあてがってくれただけでも感謝しなくちゃいけないんだ」
「あらそう。それで、新しいお店はもっと広い部屋を用意できるの?」
ネリーネは嫌味なんて気にも止めずに興味津々で戸棚に整理された糸や布を眺めている。
「はっ。新しい店なんて用意できるわけないさ」
「じゃあ、まずは貴女の店の計画から伺わないといけないわね」
「はぁ? 何を言っているの?」
「だって、貴女の大々的な独立に花を添えるために、貴女のリュクレールでの最後の仕事としてわたくしのドレスを依頼するのよ? 独立したらこのリュクレールに引けを取らない服飾店にしましょうね。 店の場所はどこがいいの? この大通りかしら? そもそもターゲットはリュクレールと同じような流行物好きな目立ちたがり屋の貴族達にするの? それなら北の大通りが大々的に整備されると噂されてますから、そちらの方がいいわね。今ならまだ北の大通りは手頃な金額で居抜きの物件が見つけられると思うわ。ねぇ! そうしましょうよ! きっと、貴女の店が新しい大通りの目玉になるわ!」
目を輝かせたネリーネは針子の女の手を取り握りしめる。羨ましい。って、そうじゃない。
「は? えっ? はぁっ? あっアンタ何言ってんのよ!」
勢いに気圧された針子の女は握られた手を慌てて振り解くが動揺が隠しきれない。さっきに増して口が悪い。
「あら、他の場所がいい? やっぱりこの大通りがいいの? この通りで開くならターゲットを変えた方がいいわ。残念ながら同じ商売の仕方をしていたらマダムには勝てないわよ」
ネリーネはいつものようにふすふすと鼻息が荒い。目の前の針子が独立するための後援者になるつもりだ。
「あんた本気なの? なんで?」
「なんでって貴女がこの店で一番腕がいい針子だもの。投資に値するわ。そりゃもちろん慈善事業ではありませんから見返りは求めますわよ? そうね。元金の支払いが終わるまでは、私のドレスを優先的に作っていただきたいわ。結婚しますからいつまでも少女のようなドレスではなく、淑女らしいドレスをあつらえなくてはいけませんもの」
「でも、結婚して金持ちのご令嬢じゃなくなるんだろ? それともあたしに、タダで作らせようっていうのか?」
「タダ? フッ。どうしてわたくしがそんな労働者にたかるようなことをするとお思いになって? 結婚すればデスティモナ家の娘ではなくなりますけれど、わたくしは自分が投資で得た資金が十分ありますから、ステファン様なんかに頼らなくても、貴女の才能の対価に見合うだけの金額を払いますわ。それに投資家の面々が集うサロンて貴女の店を紹介する時に、わたくしが貴女の仕立てたドレスを着て貴女の腕の素晴らしさを伝えるためにも必要でしょう」
胸を張り顎を上げて針子の女を見下ろすような尊大な態度で笑うネリーネはまさに毒花令嬢だった。
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