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第五章 毒花令嬢は俺の可愛い婚約者
第五十五話 満ち足りた日々14 毒花令嬢の婚約者に丁度いい俺
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「ネリーネ様はステファン様のことを大切にお想いになられているのね」
ミアが淹れなおしたハーブティーを飲みネリーネは落ち着きを取り戻す。王太子殿下の婚約者様も一緒にハーブティーを飲みながら再びネリーネと話し始めた。
女性は恋の話が好きだと聞いたことがあるが、本人が目の前にいるのにそんな話題を振るなんて……
いや。あのお坊ちゃんの妹だ。わざと話を振っている可能性もある。
ネリーネがなんと答えるか聞きたいような……いや。聞きたくない。
あぁ。でも、やっぱり聞きたい。もっともっと近くで……
二人の話を気にしていないそぶりをして、手元の書類を持って立ち上がる。
俺は書棚にこの書類を仕舞いに行くだけだ。
偶然、書棚が応接スペースの近くにあるだけだ。
「もちろんお慕いしておりますわ」
書棚に向かい書類整理をしているふりをしながら背中越しにネリーネの言葉を聞き、心の中で勝ち名乗りをあげる。
「でも殿下みたいに本物の王子様を見たら心を動かされたりしませんか? それとも僕はどうですか? ネリーネ様みたいに魅力的な女性に好かれたら僕は嬉しいなぁ」
ネリーネに粉をかけるお坊ちゃんに殺意を覚える。お前はこないだ自分の婚約者は美少女だとかなんとか言っていただろう。どういうつもりでそんなこと聞いてるんだ。
振り返るとニヤニヤしているクソガキと目が合った。
「王太子様は将来この国を統べる方ですから敬慕の念を抱いておりますが、磁器人形みたいに整いすぎていて何をお考えかわからなくて怖いからそれ以上の気持ちは抱けませんわ。あと、エリオット様は裏がありそうで気が許せませんので好きになる事はございません」
クソガキの質問に対してネリーネは姿勢を正してキッパリと言い切った。
お坊ちゃんは声を上げて笑い、王太子殿下の婚約者様は吹き出しそうになるのをこらえている。王太子殿下の顔は怖くて見ることができない。
国内有数の権力者になる人物相手でも臆せずに自分の思ったことを言ってしまうネリーネに、こちらはヒヤッとした。
「わたくしはステファン様くらいが丁度いいのですわ」
ネリーネはフンと鼻を鳴らして拳を膝に置いた。
「は? 丁度いい?」
カチンとくる言い回しにうっかり声を上げてしまった。
「そうよ。夜会の時にお召しになっていたような正装で毎日エスコートされていたら、胸をときめかせすぎて幾つ心臓があってもたりないわ。普段は服や髪型に無頓着で野暮なステファン様が丁度いいのよ。先日みたいにわたくしの為にロマンチックな贈り物をくださったりなんて頻繁にされたら宝物が増えすぎて肌身離さず身につけたいのに付ける場所がなくなるわ。いつもの気が利かないステファン様が丁度いいの。それに今日みたいに真剣な表情でお仕事されてる姿を毎日みたら見惚れてしまって何も手がつかなくなるわ。いつもみたいに仕事に疲れ果てたステファン様が丁度いいわ。それに──」
「ネリーネ嬢わかった! ……わかったから、勘弁してくれ」
周囲のニヤニヤした顔に居た堪れない気持ちになる。真っ赤になっただろう顔で俺はそう言うのがやっとだった。
ミアが淹れなおしたハーブティーを飲みネリーネは落ち着きを取り戻す。王太子殿下の婚約者様も一緒にハーブティーを飲みながら再びネリーネと話し始めた。
女性は恋の話が好きだと聞いたことがあるが、本人が目の前にいるのにそんな話題を振るなんて……
いや。あのお坊ちゃんの妹だ。わざと話を振っている可能性もある。
ネリーネがなんと答えるか聞きたいような……いや。聞きたくない。
あぁ。でも、やっぱり聞きたい。もっともっと近くで……
二人の話を気にしていないそぶりをして、手元の書類を持って立ち上がる。
俺は書棚にこの書類を仕舞いに行くだけだ。
偶然、書棚が応接スペースの近くにあるだけだ。
「もちろんお慕いしておりますわ」
書棚に向かい書類整理をしているふりをしながら背中越しにネリーネの言葉を聞き、心の中で勝ち名乗りをあげる。
「でも殿下みたいに本物の王子様を見たら心を動かされたりしませんか? それとも僕はどうですか? ネリーネ様みたいに魅力的な女性に好かれたら僕は嬉しいなぁ」
ネリーネに粉をかけるお坊ちゃんに殺意を覚える。お前はこないだ自分の婚約者は美少女だとかなんとか言っていただろう。どういうつもりでそんなこと聞いてるんだ。
振り返るとニヤニヤしているクソガキと目が合った。
「王太子様は将来この国を統べる方ですから敬慕の念を抱いておりますが、磁器人形みたいに整いすぎていて何をお考えかわからなくて怖いからそれ以上の気持ちは抱けませんわ。あと、エリオット様は裏がありそうで気が許せませんので好きになる事はございません」
クソガキの質問に対してネリーネは姿勢を正してキッパリと言い切った。
お坊ちゃんは声を上げて笑い、王太子殿下の婚約者様は吹き出しそうになるのをこらえている。王太子殿下の顔は怖くて見ることができない。
国内有数の権力者になる人物相手でも臆せずに自分の思ったことを言ってしまうネリーネに、こちらはヒヤッとした。
「わたくしはステファン様くらいが丁度いいのですわ」
ネリーネはフンと鼻を鳴らして拳を膝に置いた。
「は? 丁度いい?」
カチンとくる言い回しにうっかり声を上げてしまった。
「そうよ。夜会の時にお召しになっていたような正装で毎日エスコートされていたら、胸をときめかせすぎて幾つ心臓があってもたりないわ。普段は服や髪型に無頓着で野暮なステファン様が丁度いいのよ。先日みたいにわたくしの為にロマンチックな贈り物をくださったりなんて頻繁にされたら宝物が増えすぎて肌身離さず身につけたいのに付ける場所がなくなるわ。いつもの気が利かないステファン様が丁度いいの。それに今日みたいに真剣な表情でお仕事されてる姿を毎日みたら見惚れてしまって何も手がつかなくなるわ。いつもみたいに仕事に疲れ果てたステファン様が丁度いいわ。それに──」
「ネリーネ嬢わかった! ……わかったから、勘弁してくれ」
周囲のニヤニヤした顔に居た堪れない気持ちになる。真っ赤になっただろう顔で俺はそう言うのがやっとだった。
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