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最終章
第九十九話 大団円3 結婚式の花嫁はダイヤモンドリリーの花の精
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晴れ渡る青空のもと、俺とネリーネの結婚式はつつがなく行われた。
いや。つつがなくは言い過ぎか。
礼拝堂の中で俺の結婚相手がネリーネだと発表された時のマグナレイ一族たちの反発は相当のものだった。
暴言が飛び交い耳を塞ぎたくなるような騒ぎに、デスティモナ伯爵家とハロルドの妻の実家の面々は不快をあらわにする。
だというのに、伯爵家の他の親族たちはネリーネに対して暴言を吐かれているのを薄ら笑っていた。
祭壇から降りて暴言を吐いたやつと嘲笑したやつを一人残らず殴りかかってやりたいところだが、返り討ちにされるだけだ。
以前モーガンに殴られた鳩尾をさすりながら、唇を噛み締めた。
暴言と嘲笑が渦巻く礼拝堂。
それを一瞬にして黙らせたのは、礼拝堂に現れた純白の婚礼衣装に身を包んだネリーネだった。
祭司様に手を取られ、薄桃色に輝く百合に似た花のブーケを持ち祭壇に向かう通路を歩く。
その姿はまるで絵本から飛び出した花の精のようだった。
もちろん毒花の妖精ではない。
毒花のような無駄にけばけばしい装いはしていない。
ここにいるのは金剛石の百合の妖精だ。
いつもと同じような化粧で出てくるつもりだったのを、ミアやマグナレイ侯爵家で雇い直したネリーネと親しかったデスティモナ家のメイドたちが「結婚式で感極まって泣いてしまったら化粧直しが大変だから」と必死に説得し成功していた。
ネリーネの本来の清楚な可憐さを生かした薄化粧は、一緒に街を歩き、芝居を見に行ったあの美少女が現実の存在だったことを証明する。
化粧だけじゃない。
ネリーネが出資した新進気鋭の服飾店が製作した、本人の体型を一番美しく見せるためのドレスは、可憐なだけではないネリーネの女性らしい豊満な体つきを引き立てていた。
緊張して足元ばかり見ていたネリーネが祭司様に促されて顔を上げる。祭壇に立つ俺を見つけたネリーネは頬を赤らめ、目を輝かせた。
可愛い! 可愛い! 可愛い!
胸を撃ち抜かれたのは俺だけじゃない。
ネリーネが近くを通るとあまりの美しさに皆息をのみ、誰も何も言えなくなっていた。
結婚式が終わり披露パーティーが始まる。
俺が子供の頃からモーガンばかりチヤホヤして、ついさっきまでネリーネを悪く言っていたはずのジジイどもが「我らが聡明なる若き当主様と美しき奥方様に幸多からんことを」なんて俺たちに媚を売る。
罵詈雑言を聞き慣れて悪口は真に受けるネリーネも、家族以外に褒められることに慣れていない。褒めてくれるのは家族しかいないと思い込んでいる。
ジジイたちの掌返しの褒め言葉に「わたくしのこと家族と認めてくださったのね。嬉しいわ!」だなんて嬉しそうに微笑み、手を握ったりするものだから一気に骨抜きにされていた。
一族の相手だけじゃなく、俺とネリーネはマグナレイ侯爵家やデスティモナ伯爵家と付き合いのある領主たちの相手もしなくてはいけなかった。
社交界で男たちに相手にされなかったネリーネは、男性との会話があまり得意ではない。嫌味を真に受けて言い返してしまう。
足の引っ張りあいばかりの夜会と違い、今日この場にいるのは一瞬でネリーネの美しさに骨抜きにされた親族や余裕のある領主たちでネリーネに嫌味をいう必要がない者たちしかいなかった。
領主たちと挨拶をすませば、余計な媚を売らず、一緒に挨拶に来た夫人と領地の事業についての話に花を咲かせ、視察を兼ねたお茶会の約束をとりつけていた。
その姿は周りに慎ましやかで聡明な印象を与え、俺たちの結婚はこの場にいるもの達全員に祝福された。
いや。つつがなくは言い過ぎか。
礼拝堂の中で俺の結婚相手がネリーネだと発表された時のマグナレイ一族たちの反発は相当のものだった。
暴言が飛び交い耳を塞ぎたくなるような騒ぎに、デスティモナ伯爵家とハロルドの妻の実家の面々は不快をあらわにする。
だというのに、伯爵家の他の親族たちはネリーネに対して暴言を吐かれているのを薄ら笑っていた。
祭壇から降りて暴言を吐いたやつと嘲笑したやつを一人残らず殴りかかってやりたいところだが、返り討ちにされるだけだ。
以前モーガンに殴られた鳩尾をさすりながら、唇を噛み締めた。
暴言と嘲笑が渦巻く礼拝堂。
それを一瞬にして黙らせたのは、礼拝堂に現れた純白の婚礼衣装に身を包んだネリーネだった。
祭司様に手を取られ、薄桃色に輝く百合に似た花のブーケを持ち祭壇に向かう通路を歩く。
その姿はまるで絵本から飛び出した花の精のようだった。
もちろん毒花の妖精ではない。
毒花のような無駄にけばけばしい装いはしていない。
ここにいるのは金剛石の百合の妖精だ。
いつもと同じような化粧で出てくるつもりだったのを、ミアやマグナレイ侯爵家で雇い直したネリーネと親しかったデスティモナ家のメイドたちが「結婚式で感極まって泣いてしまったら化粧直しが大変だから」と必死に説得し成功していた。
ネリーネの本来の清楚な可憐さを生かした薄化粧は、一緒に街を歩き、芝居を見に行ったあの美少女が現実の存在だったことを証明する。
化粧だけじゃない。
ネリーネが出資した新進気鋭の服飾店が製作した、本人の体型を一番美しく見せるためのドレスは、可憐なだけではないネリーネの女性らしい豊満な体つきを引き立てていた。
緊張して足元ばかり見ていたネリーネが祭司様に促されて顔を上げる。祭壇に立つ俺を見つけたネリーネは頬を赤らめ、目を輝かせた。
可愛い! 可愛い! 可愛い!
胸を撃ち抜かれたのは俺だけじゃない。
ネリーネが近くを通るとあまりの美しさに皆息をのみ、誰も何も言えなくなっていた。
結婚式が終わり披露パーティーが始まる。
俺が子供の頃からモーガンばかりチヤホヤして、ついさっきまでネリーネを悪く言っていたはずのジジイどもが「我らが聡明なる若き当主様と美しき奥方様に幸多からんことを」なんて俺たちに媚を売る。
罵詈雑言を聞き慣れて悪口は真に受けるネリーネも、家族以外に褒められることに慣れていない。褒めてくれるのは家族しかいないと思い込んでいる。
ジジイたちの掌返しの褒め言葉に「わたくしのこと家族と認めてくださったのね。嬉しいわ!」だなんて嬉しそうに微笑み、手を握ったりするものだから一気に骨抜きにされていた。
一族の相手だけじゃなく、俺とネリーネはマグナレイ侯爵家やデスティモナ伯爵家と付き合いのある領主たちの相手もしなくてはいけなかった。
社交界で男たちに相手にされなかったネリーネは、男性との会話があまり得意ではない。嫌味を真に受けて言い返してしまう。
足の引っ張りあいばかりの夜会と違い、今日この場にいるのは一瞬でネリーネの美しさに骨抜きにされた親族や余裕のある領主たちでネリーネに嫌味をいう必要がない者たちしかいなかった。
領主たちと挨拶をすませば、余計な媚を売らず、一緒に挨拶に来た夫人と領地の事業についての話に花を咲かせ、視察を兼ねたお茶会の約束をとりつけていた。
その姿は周りに慎ましやかで聡明な印象を与え、俺たちの結婚はこの場にいるもの達全員に祝福された。
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