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第五章 毒花令嬢は俺の可愛い婚約者
第五十三話 満ち足りた日々12 毒花令嬢が可愛いのを知っているのは俺だけだ
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たゆん。たゆん。
視界の端で真っ白な谷間が二つ揺れる。
普段男ばかりの職場で、女官見習いの地味なお仕着せに身を包んだ王太子殿下の婚約者と真紅のドレスに身を包んだネリーネ嬢が来客用のソファに座り意気投合していた。
少女達の発する華やかな雰囲気に、俺の口元はだらしなく緩む。
先日ブローチを渡すついでに、王太子殿下の婚約者様からネリーネ嬢に事業の話をしたいと打診を受けている話を伝えると、デスティモナ伯爵とトワイン侯爵の計らいでこの日の面談が準備された。
トワイン侯爵領に建設する予定の、川の流れを動力にした編立工場への投資話はとっくにまとまっているのに、まだドレスの話で盛り上がっている。
デスティモナ家御用達の服飾店は頼まれたらなんでも作る様な拝金主義の店なのだろう。誰から見ても派手すぎて悪目立ちする装いは、王宮に参じるからとネリーネ嬢の気合が入りまくり、今まで見た中で一番贅を尽くすだけ尽くして目が潰れるほど眩しい。
そんな贅を尽くしたドレスに顔を近づけてじっくり観察した王太子殿下の婚約者様はその無駄に華美な刺繍やレースをうっとりと褒め称え、ネリーネ嬢を質問攻めにしていた。
「ネリーネ様のドレスの刺繍は本当に見事な手仕事だわ。この一着を作るのに何人の針子が関わったのかしら。さすが国内でも有数の資金力があるデスティモナ家ね。こんなに優秀な針子を何人も抱えた服飾店とお付き合いされているなんて」
「あら新市街のメゾン・ド・リュクレールに依頼したものですわ。ご存知ではございませんの? 王都で最高峰のオートクチュール専門の服飾店といえばリュクレールですから、名門トワイン侯爵家のエレナ様ならご存知かと思っておりましたわ」
「まぁ! リュクレールのドレスなのね! 名前は聞いたことがあるわ。でも残念ながら我が家は昔から、自分達に使うお金があるなら領民に使うのが信念なもので、オートクチュールの服飾店とはあまり縁がなくて行ったことがないの」
名前で呼び合い、きゃらきゃらとした笑い声をあげて服飾店の話題に花が咲いている。
「すごい嫌味の応酬だな」
「あんな笑いながら……やっぱり王太子殿下の婚約者様も貴族女性だったんだな」
「え?」
俺の席に近づいて耳打ちしてきたケインとニールスの発言に俺は驚く。
嫌味? どこが?
いつも通りネリーネ嬢は思った事を口に出しているだけだ。
それを証拠に二人ともあんなに嬉しそうに楽しく笑っているじゃないか。
「……ネリーネ嬢は素直な少女だぞ。嫌味でもなんでもなく思った事を言っているだけだ。それに王太子殿下の婚約者様も楽しそうじゃないか」
「本当に重症だな」
そう言ったケインはニールスと顔を見合わせて苦笑いをしている。
腑には落ちないが、まぁ、いい。ネリーネ嬢の可愛いさは俺だけがわかればいいのだから。
俺は優越感に浸りながら二人を眺めた。
視界の端で真っ白な谷間が二つ揺れる。
普段男ばかりの職場で、女官見習いの地味なお仕着せに身を包んだ王太子殿下の婚約者と真紅のドレスに身を包んだネリーネ嬢が来客用のソファに座り意気投合していた。
少女達の発する華やかな雰囲気に、俺の口元はだらしなく緩む。
先日ブローチを渡すついでに、王太子殿下の婚約者様からネリーネ嬢に事業の話をしたいと打診を受けている話を伝えると、デスティモナ伯爵とトワイン侯爵の計らいでこの日の面談が準備された。
トワイン侯爵領に建設する予定の、川の流れを動力にした編立工場への投資話はとっくにまとまっているのに、まだドレスの話で盛り上がっている。
デスティモナ家御用達の服飾店は頼まれたらなんでも作る様な拝金主義の店なのだろう。誰から見ても派手すぎて悪目立ちする装いは、王宮に参じるからとネリーネ嬢の気合が入りまくり、今まで見た中で一番贅を尽くすだけ尽くして目が潰れるほど眩しい。
そんな贅を尽くしたドレスに顔を近づけてじっくり観察した王太子殿下の婚約者様はその無駄に華美な刺繍やレースをうっとりと褒め称え、ネリーネ嬢を質問攻めにしていた。
「ネリーネ様のドレスの刺繍は本当に見事な手仕事だわ。この一着を作るのに何人の針子が関わったのかしら。さすが国内でも有数の資金力があるデスティモナ家ね。こんなに優秀な針子を何人も抱えた服飾店とお付き合いされているなんて」
「あら新市街のメゾン・ド・リュクレールに依頼したものですわ。ご存知ではございませんの? 王都で最高峰のオートクチュール専門の服飾店といえばリュクレールですから、名門トワイン侯爵家のエレナ様ならご存知かと思っておりましたわ」
「まぁ! リュクレールのドレスなのね! 名前は聞いたことがあるわ。でも残念ながら我が家は昔から、自分達に使うお金があるなら領民に使うのが信念なもので、オートクチュールの服飾店とはあまり縁がなくて行ったことがないの」
名前で呼び合い、きゃらきゃらとした笑い声をあげて服飾店の話題に花が咲いている。
「すごい嫌味の応酬だな」
「あんな笑いながら……やっぱり王太子殿下の婚約者様も貴族女性だったんだな」
「え?」
俺の席に近づいて耳打ちしてきたケインとニールスの発言に俺は驚く。
嫌味? どこが?
いつも通りネリーネ嬢は思った事を口に出しているだけだ。
それを証拠に二人ともあんなに嬉しそうに楽しく笑っているじゃないか。
「……ネリーネ嬢は素直な少女だぞ。嫌味でもなんでもなく思った事を言っているだけだ。それに王太子殿下の婚約者様も楽しそうじゃないか」
「本当に重症だな」
そう言ったケインはニールスと顔を見合わせて苦笑いをしている。
腑には落ちないが、まぁ、いい。ネリーネ嬢の可愛いさは俺だけがわかればいいのだから。
俺は優越感に浸りながら二人を眺めた。
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