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第二章 俺が毒花令嬢とお見合いなんて!
第三話 青天の霹靂3 クソジジイの御用件
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クソジジイを見つめながら俺は落ち着いて話す為に深呼吸をした。
「……宰相まで勤め上げられた情報通の閣下なら、事実をご存じなのでは? 王太子殿下直々に私の能力を評価頂き、王太子殿下付きの官吏として手元に欲しいとお声がけいただいたのです。忙しくなかなか休暇が取れなかったのも、こき使われていたわけではなく、私にしかできない仕事が立て込んでいただけであります」
「まぁ、そういうことにしといてやろうか。でないと紹介してやった私の立つ瀬がないからな」
煽るようにわざとらしく尊大に応じる老紳士の態度に、思う壺だと分かっていながらも苛立つ気持ちがおさまらない。
「お言葉ですが閣下。確かに王宮の官吏登用の際は配属にお口添えいただいた様ですが、私はもとより学生時代から、王立学園において入学から卒業まで常に首位の成績を残しその成績から国の定める特待生として認められ、すわ将来は上級官僚かと期待をされておりました。王宮官吏への登用試験においても実力の下、首席で合格しております」
「おぉ。そうだったかなぁ」
「さようです。王太子殿下付きになる予定なのも、王国内でも珍しい多言語話者としての能力を高く買っていただき抜擢いただいたからでございます」
「そりゃすごい。で王太子付きになるから婚約者を紹介されたのか?」
「いえ、聡明で可憐な女官見習いだと思って声をかけたのが、実は王太子殿下のご婚約者様であったというだけでございます。その縁で王太子殿下とお話しする機会があり、ご婚約者様の聡明さを見抜いた私は王太子殿下からは慧眼の主だとお褒めの言葉をいただいております。その際私が多言語話者である事をお知りいただき……」
「結局ちょっかいだしたってことだろ?」
そう言ってニヤニヤと笑われ自重していたにも関わらず結局余計なことを口走ってしまったことに気がついた時にはもう後の祭りだった。
「……ちょっかいは出しておりませんし、王太子殿下の不興もかっておりません」
誰に対してもすぐに言い返してしまう自分の悪い癖を呪いたい。
「まぁ、ちょっかいだしても、男爵家末子のステファンじゃ家督も継げないし、王太子の婚約者になるような侯爵家のお姫様は相手にしてもらえないもんな」
「で、す、か、ら、出しておりません。閣下にご推薦いただいた配属先から異動することになった事をお伝えしていなかった件については丁重にお詫び申し上げます。ですが、私は閣下の顔に泥を塗る様な事にはしておりませんのでご安心ください。わざわざ屋敷まで呼び出しての御用件はお小言でしょうか? それでは終わった様ですので失礼させていただきます」
これ以上この場に居ては言わなくてもいい事を口走ってしまう事を悟り俺は席を立つ。
「まぁ、待てステファン。今日呼び出したのは悪い話じゃない。お前に爵位をくれてやる。ほら、いい話だろ?」
腹黒そうな笑顔に嫌な予感がした。
「爵位ですか……?」
上位貴族達は自分達で管理しきれないほど多くの領地を保有している。自分で管理しきれない土地は、管理者としての権限を親族や腹心の部下に与える事で忠誠を誓わせたりするのに活用されている。
その際に貴族院に申請して爵位を与えられることもある。
「えっと……閣下がお持ちのどこかの領地で私を管理者にしてくださるのでしょうか」
「いいや。俺の養子になって、マグナレイ侯爵家を継げ」
そう言うと目の前にいる老紳士──ジョシュア・マグナレイ侯爵はニヤリと笑った。
「……宰相まで勤め上げられた情報通の閣下なら、事実をご存じなのでは? 王太子殿下直々に私の能力を評価頂き、王太子殿下付きの官吏として手元に欲しいとお声がけいただいたのです。忙しくなかなか休暇が取れなかったのも、こき使われていたわけではなく、私にしかできない仕事が立て込んでいただけであります」
「まぁ、そういうことにしといてやろうか。でないと紹介してやった私の立つ瀬がないからな」
煽るようにわざとらしく尊大に応じる老紳士の態度に、思う壺だと分かっていながらも苛立つ気持ちがおさまらない。
「お言葉ですが閣下。確かに王宮の官吏登用の際は配属にお口添えいただいた様ですが、私はもとより学生時代から、王立学園において入学から卒業まで常に首位の成績を残しその成績から国の定める特待生として認められ、すわ将来は上級官僚かと期待をされておりました。王宮官吏への登用試験においても実力の下、首席で合格しております」
「おぉ。そうだったかなぁ」
「さようです。王太子殿下付きになる予定なのも、王国内でも珍しい多言語話者としての能力を高く買っていただき抜擢いただいたからでございます」
「そりゃすごい。で王太子付きになるから婚約者を紹介されたのか?」
「いえ、聡明で可憐な女官見習いだと思って声をかけたのが、実は王太子殿下のご婚約者様であったというだけでございます。その縁で王太子殿下とお話しする機会があり、ご婚約者様の聡明さを見抜いた私は王太子殿下からは慧眼の主だとお褒めの言葉をいただいております。その際私が多言語話者である事をお知りいただき……」
「結局ちょっかいだしたってことだろ?」
そう言ってニヤニヤと笑われ自重していたにも関わらず結局余計なことを口走ってしまったことに気がついた時にはもう後の祭りだった。
「……ちょっかいは出しておりませんし、王太子殿下の不興もかっておりません」
誰に対してもすぐに言い返してしまう自分の悪い癖を呪いたい。
「まぁ、ちょっかいだしても、男爵家末子のステファンじゃ家督も継げないし、王太子の婚約者になるような侯爵家のお姫様は相手にしてもらえないもんな」
「で、す、か、ら、出しておりません。閣下にご推薦いただいた配属先から異動することになった事をお伝えしていなかった件については丁重にお詫び申し上げます。ですが、私は閣下の顔に泥を塗る様な事にはしておりませんのでご安心ください。わざわざ屋敷まで呼び出しての御用件はお小言でしょうか? それでは終わった様ですので失礼させていただきます」
これ以上この場に居ては言わなくてもいい事を口走ってしまう事を悟り俺は席を立つ。
「まぁ、待てステファン。今日呼び出したのは悪い話じゃない。お前に爵位をくれてやる。ほら、いい話だろ?」
腹黒そうな笑顔に嫌な予感がした。
「爵位ですか……?」
上位貴族達は自分達で管理しきれないほど多くの領地を保有している。自分で管理しきれない土地は、管理者としての権限を親族や腹心の部下に与える事で忠誠を誓わせたりするのに活用されている。
その際に貴族院に申請して爵位を与えられることもある。
「えっと……閣下がお持ちのどこかの領地で私を管理者にしてくださるのでしょうか」
「いいや。俺の養子になって、マグナレイ侯爵家を継げ」
そう言うと目の前にいる老紳士──ジョシュア・マグナレイ侯爵はニヤリと笑った。
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