2 / 12
問題児達のマネージャーに就任!?②
しおりを挟む絶望のどん底にいた私を救ってくれたシオン様に出会ってからというもの、私の人生は一変した。
運命の出会い以降私は、シオン様が出演する歌番組は欠かさず観たりライブに参戦したり、インタビュー記事やグラビアが載る雑誌を買い漁ったりと、夢中になって彼を推した。
しかし、中学生の経済力と言えばたかが知れてる物で、主な収入源は毎月のお小遣いとお年玉だけだ。
これでは満足にシオン様に貢げないと項垂れていると、これ幸いとばかりに母が言った。
“お勉強頑張ったら、お小遣いアップしてあげる ”
私はこの言葉に飛び付き、無我夢中で勉強をした。すると、今までどんなに頑張っても良くて中の下だった成績が見る見ると上がっていったのだった。
そして、シオン様と出会ってから1年——中学3年生にもなると、学年トップ10入りの常連に迄上り詰めていた。
これには母も大喜びで、今まで恋愛感情なんて下らないと笑っていた私も、恋のパワーは凄い物だと実感せざるを得なかった。
——シオン様が私に生きる力をくれる! 今なら、なんだって出来そう!
しかし、向かう所敵なし、絶好調の私を再びどん底まで突き落としたのも、シオン様だった。
中学3年生の冬、彼は突如として芸能界から姿を消した。当時、シオン様は高校3年生、人気も絶頂でこれからという時期だった。
私自身も、高校生になったらたくさんバイトをして、やっと自分のお金でシオン様を応援出来ると意気込んでいたと言うのに。
彼が私の前から消えてからというもの、毎日、ライブのブルーレイを延々と流して、シオン様の載った雑誌の切り抜きで作ったアルバムを見ながら、もうシオン様には会えないのだと泣いて泣いて泣いて、泣きまくった。
そして、涙も枯れ果て、体力も限界に近づいた頃、私は一つの妙案を思い付いたのだった。
——そうだ、もうシオン様に会えないのなら、シオン様のいた芸能事務所に入ろう。
⋯⋯でも、私の平凡なルックスでは芸能人としては絶望的だ⋯⋯。だから、アイドルを支えるマネージャーとして⋯⋯!
どんな手を使ってでも、少しでもシオン様に近づきたい。たとえ、そこに彼がいないとしても——。
✳︎
「——さん、⋯⋯叶さん? どうしたの?」
そう言って、秘書の女性は不思議そうな顔をした。
あれから時は流れ、叶ゆめ、18歳。
大学進学を進める母を押し退け、強引に高校卒業と共に念願であるシオン様の所属していた芸能界プロダクション、BNWに入社した。
しかし、希望に溢れた社会人1日目、何故か私は社長室に呼び出されていた。もちろん、心当たりは全く無い。
「さあ、社長が貴女をお待ちですよ」
おかっぱ頭の彼女は、私の心の準備が整うのを待つ事無く、社長室の扉を開いた。
「⋯⋯失礼します」
ごくり、と生唾を飲み、ふかふかの高級そうな絨毯の上を、一歩また一歩と歩みを進める。
——入社1日目だというのに、社長から呼び出しって⋯⋯! もしかして、知らないうちに何かやらかしたのだろうか⋯⋯。私をここに呼び出したのも、クビを告げる為とか!?
最悪の場合を想像して、ばくばくと鼓動が速くなり、緊張で吐きそうになる。真っ直ぐに前を見ることが出来なくて、俯き気味に歩みを進めた。
そして、顔を上げると想像もしなかった光景に、思わず息を飲んだ。
「!!」
そこには社長だけで無く、デスクに座る彼を挟むようにして両隣に、恐ろしく顔立ちの良い若い男の子2人が立っていた。
そのうちの1人——くるんと癖のある金髪には派手なピンク色のメッシュが入っていて、それと同じくピンク色の瞳の、ちらりと口から覗く八重歯がやんちゃな印象の男の子がニヤリと笑い口を開いた。
「あっれー? 社長、気が利くじゃん!」
そう言って彼は、私の元に駆け寄る。
距離がある時は分からなかったが、彼は私よりも少しだけ身長が低いようで、自然と上目遣い気味になっていた。それが、彼の愛らしい容姿と相まって殊更破壊力を増していた。
「コイツ、オレのご飯でしょ?」
しかし、彼の意味不明な発言に、私の頭ははてなマークでいっぱいになる。
「⋯⋯へ?」
私が状況を飲み込めずに、混乱しているともう1人の男の子が口を開いた。
「カヅキ⋯⋯ダメ。この人、困ってる⋯⋯」
彼は、金髪の男の子とは対照的に、長身でサラサラの黒髪に、透き通るような碧の瞳の無表情な男の子であった。
「あ? チユキには関係ねーだろ」
カヅキと呼ばれた男の子は、チユキと呼ばれた男の子の言葉を聞いて、先程迄の上機嫌な様子から一変し、非常に柄の悪い横暴な態度になる。
しかし、そんなカヅキの豹変ぶりにも、チユキは臆することなく淡々と言い放った。
「⋯⋯カヅキの食いしん坊」
「うるせー! この、ひょろのっぽ野郎がっ!」
カヅキが言い返し、チユキに掴みかかろうとするも、身長差があるため軽くいなされる。そのことが、余計に彼の怒りを増幅させるようであった。
そこで、今まで沈黙を貫いていた社長が漸く口を開く。
社長はというと、季節はもう春だと言うのに、衣替えをし損ねたのだろうか、もこもこのファーが付いたジャケットを着ていた。
それに、面接で見た時の男前な彼とは違い、真っ赤な口紅に紫のアイシャドウという派手な化粧をしており、女性のような出で立ちであった。
「ゆめちゃん、入社おめでとう。今日、ここに呼んだのは貴女にここにいる2人の担当マネージャーをして貰おうと思ったからよ。⋯⋯ちなみに、これは決定事項です。今日からよろしくね」
そう言って、社長はにっこりと微笑んだ。
そんな彼の言葉に、クビにならないと安堵したのも束の間、私は、驚愕から思わず部屋中に響き渡るような声で絶叫したのだった。
「え⋯⋯えええええーーー!?!?」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

4人の王子に囲まれて
*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。
4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって……
4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー!
鈴木結衣(Yui Suzuki)
高1 156cm 39kg
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。
母の再婚によって4人の義兄ができる。
矢神 琉生(Ryusei yagami)
26歳 178cm
結衣の義兄の長男。
面倒見がよく優しい。
近くのクリニックの先生をしている。
矢神 秀(Shu yagami)
24歳 172cm
結衣の義兄の次男。
優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。
結衣と大雅が通うS高の数学教師。
矢神 瑛斗(Eito yagami)
22歳 177cm
結衣の義兄の三男。
優しいけどちょっぴりSな一面も!?
今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。
矢神 大雅(Taiga yagami)
高3 182cm
結衣の義兄の四男。
学校からも目をつけられているヤンキー。
結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。
*注 医療の知識等はございません。
ご了承くださいませ。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」

目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
国宝級イケメンとのキスは最上級に甘いドルチェみたいに、私をとろけさせます
はなたろう
恋愛
人気アイドルの恋愛事情① 国宝級イケメン、人気アイドルとの秘密の恋。長身、イケメン、態度はそっけないけど、優しい恋人。ハイスペ過ぎる彼が、なぜごく普通な私を好きになったのか分からない。ただ、とにかく私を溺愛して、手放す気はないらしい。
甘いキスで溶ける日々のはじまり。
★みなさまの心にいる、推しを思いながら読んでください
◆出会い編あらすじ
毎日同じ、変わらない。都会の片隅にある植物園で働く私。
そこに毎週やってくる、おしゃれで長身の男性。カメラが趣味らい。この日は初めて会話をしたけど、ちょっと変わった人だなーと思っていた。
まさか、その彼が人気アイドル、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバーだとは気づきもしなかった。
毎日同じだと思っていた日常、ついに変わるときがきた。
◆登場人物
佐倉 美咲(25) 公園の管理運営企業に勤める。植物園のスタッフから本社の企画営業部へ異動予定
天見 光季(27) 人気アイドルグループ、dulcis(ドゥルキス)のメンバー。俳優業で活躍中、自然の写真を撮るのが趣味
お読みいただきありがとうございます!
本作品の関連作品もぜひご覧ください。ドゥルキスの最年長、アラタの物語です。こちらはBL要素のあるストーリーですが、ちゃんとアイドルと主人公の女の子くっつきますw
「美容系男子と秘密の診療室。のぞいた日から私の運命が変わりました」
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる