上 下
8 / 16
第1章

純白のノート

しおりを挟む




 昼休み終了のチャイムが鳴るまで、残り30分————。
 食事を終えたうららと至は机の上に広げられたノートをまじまじと見つめていた。


「⋯⋯⋯⋯白い、ですね」
「⋯⋯⋯⋯白い、ね」

(あー!! 不味い、すっかり忘れてたっ!)

 うららは心の中で頭を抱えた。冷や汗が止まらず、手のひらにはじわりと汗が滲む。
 しかし、至はそんなうららの心情などお構い無しにペラペラとノートを捲っていく。


「あっ⋯⋯⋯⋯」

 不意に至が声を上げた。
 その視線の先にはネコのキャラクターの落書き。授業中、暇を持て余したうらら画伯によるものだ。

(や、やめてっ! これ以上見ないでぇーーッ!!)

 不真面目な自身の醜態を好きな人に余すことなく暴かれたうららは、羞恥心で消えたくなった。

(あーもうっ! 今すぐ逃げ出したいっ⋯⋯! 何でちゃんとノート取らなかったんだよ、今までのあたしはっ!!)


 うららは目先の欲にとらわれるばかりに失念していたのだ。
 自分が碌に授業に出席せず、したとしてもその時間を全てを睡眠かスマートフォンのパズルゲームに充てている為、板書など一切していないという事を————。


「え、えーっとォ⋯⋯間違って新品のノート持って来ちゃったみたい⋯⋯かも??」
「⋯⋯⋯⋯そうですか、新品のノートを⋯⋯。それなら仕方ないですね」
「⋯⋯⋯⋯うん」

(絶対ダメな奴だと思われた⋯⋯! どうしよう⋯⋯⋯⋯っ)

 うららが悶えていると、「それで、何処が分からないんですか?」という穏やかな至の声が降って来る。
 顔を上げれば机に放り出された古典の教科書をパラパラと捲り、ちょうど今日の授業でやったページを開いた至と目が合った。

「⋯⋯⋯⋯!」

 目が合った瞬間、うららの胸はドクンと大きく高鳴る。頬は熱を持って火照り、チークが要らないほどに赤く染まっていた。

「常春さん、どうしました?」

 いつまで経っても返事の無いうららを不思議に思った至は首を傾げる。
 ハッと正気に戻ったうららはにっこりと笑顔で答えた。

「うーん⋯⋯全部っ!!」
「全部、ですか⋯⋯ふふっ、これは随分と骨が折れそうだ」

(一見、地味な顔つきだけど至センセーの顔って意外と整ってるんだなあ⋯⋯。なんで今まで気付けなかったんだろう。2年と13日も無駄にした! 悔しいっ⋯⋯!!)

 うららの言葉に控えめな笑みを見せ、それでも優しく教えてくれようとする至。
 そんな彼にうららは更に夢中になるのであった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...