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石神姉妹との食事
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4月下旬の土曜日。
俺は朝から食材の下ごしらえを始めていた。
今日は普段は作らない「牛すね肉のコンソメ」を作ろうとしている。
朝食後に肉屋に行き、挽き立ての牛のすね肉の挽肉を受け取る。
もちろん注文してあった。
この「牛すね肉のコンソメ」は、肉の新鮮度が最も重要だ。
急いで家に帰り、2ミリ厚のタマネギ、3ミリ厚のセロリとニンジン、ニンニクなどを加えて肉と一緒に鍋で卵白と共に練り込む。
水で戻したシイタケと昆布の汁とローリエや黒コショウなどを徐々に加えながら練り込む。
鍋に少しずつ水を足しながら、強火でS字を描くようにかき混ぜて行く。
沸騰が始まったら火加減を調節し、そのまま1時間煮込む。
俺はその段階で自分の昼食を作った。
簡単に蕎麦を茹でて買って来た天ぷらと一緒に食べた。
あとはステーキなどだから、安心だ。
スープの鍋が透き通って来る。
いい感じだ。
塩コショウで味を調整していく。
綿ネルでスープを濾す。
味見をして、俺の顔に自然と笑みが浮かんだ。
シャリアピンステーキの準備。
200gの牛肉を叩き薄くし、包丁の背で更に叩く。
タマネギのシャリアピン・ソースに漬けて冷蔵庫に入れる。
豚肉200gを下味をつけて、これも冷蔵庫に。
ご飯の準備もいい。
5時に石神姉妹が来る。
サラダも用意した。
付け合わせも大丈夫だ。
今は4時。
俺は一休みし、コーヒーを淹れた。
チャイムが鳴り、俺はオートロックを開けて石神姉妹を家に入れた。
「「こんにちはー!」」
笑顔で二人が入って来る。
色違いのルーズネックのセーターと膝上のベージュの混シルクのキュロットスカート。
それに白の薄手の革のジャケットを羽織っている。
相変わらずお洒落だ。
薄く化粧をしていて、物凄く美しい。
「今日はありがとうね!」
「楽しみにして来た!」
俺はリヴィングに案内し、テーブルに座ってもらった。
「四人掛けなんて久しぶり!」
「家庭的だね!」
「お二人の家は何人掛けなんですか?」
「14人かな」
「はぁ」
でかいテーブルのようだ。
「ダニエルで特注だって」
「思い出深いテーブルだよね」
「へぇー」
石神姉妹が石神氏に引き取られたことは知っている。
親友だった夫婦の子どもを、四人とも引き取ったそうだ。
俺はそのことだけで、石神氏を尊敬している。
「その前のね、テーブルもとってあるんだ」
「その前?」
「そう、タカさんに引き取られる前に使ってた4人掛けのテーブル。まあ、それを6人で座ってたんだけどね」
「もう使わないけどね。安いものだし。でもタカさんが絶対にとっておけって」
「思い出があるものなんだからって。うちはあんまし捨てない家だよね」
「タカさんの部屋って、なんか葉っぱとかもあるしね」
「最初のタンポン取っとけって言われた時は退いたね!」
「タカさん、寄越せって言ったもんね!」
「「ギャハハハハハ!」」
「アハハハハ」
取り敢えず一緒に笑った。
意味が分からない。
俺はステーキを焼く準備をした。
石神姉妹が見ている。
「あ! シャリアピンステーキだぁ!」
「あれ大好き!」
喜んでくれて良かった。
別なコンロでニース風カツレツも揚げる。
「なに! 二種類あるの!」
「磯良、頑張るじゃん!」
「ステーキはしょっちゅう食べてるとは思ったんだけど。やっぱり好きなのかなって」
「「うん!」」
俺はステーキと付け合わせを皿に盛って運んだ。
すぐに二人が立ち上がって手伝ってくれる。
「一番美味しいタイミングで食べよう!」
ルーがそう言い、俺も嬉しくなった。
カツレツも皿に乗せてキャベツをよそった。
ご飯を茶碗に入れ、スープカップに温めたコンソメスープを注いだ。
「うわ! これコンソメじゃん!」
「タカさんも滅多に作ってくれないよね!」
三人で食べ始めた。
「このコンソメ! フォン・ド・ボー?」
「ええ、牛のすね肉です」
「へぇー! 凄い美味しいよ!」
「良かったです」
「コンソメって、贅沢だよね」
「そうですね。今回もすね肉を2キロ使いました」
「「やったぁー!」」
何をやったのかは分からない。
二人はどの料理も美味しいと言ってくれた。
ご飯は最大の8合炊いたが、予想通り全て無くなった。
だが、それを予想していたかのように肉を食べ、スープを飲んで行った。
ご飯が無くなると同時に、他の料理も無くなった。
「あー、美味しかった!」
「磯良、ありがとう!」
「いいえ。喜んでもらえたら嬉しいです」
俺はデザートにシャーベットを出した。
コーヒーも淹れる。
石神姉妹が立ち上がって、頭を下げて来た。
「今日は本当にありがとう」
「私たちのために、こんなにしてくれて嬉しい」
俺は戸惑った。
こんなに丁寧に礼を言われるとは思わなかった。
「座って下さい! 素人のガキが作ったものですから」
「違うの。磯良が心を込めて私たちのために作ってくれたことが嬉しいの」
「本当に嬉しい。私たちがどれだけ嬉しいのかは、ちょっと分からないだろうけどね」
「そんな! お二人には命も助けてもらいましたし。こんなものでお礼なんて」
二人がニコニコして座った。
「私たちがやったのは、私たちにとっては簡単なことなの」
「心を込めて、なんてものじゃないから」
「まあ、お二人はお強いですからね」
「うん。だけど、磯良は私たちに心を込めてやってくれた」
「それがね、本当に嬉しい」
「そうですか」
何となくは分かる。
「私たちって、ちょっとだけ変わってるじゃん」
「ちょっとじゃない気も」
「アハハハハハ!」
「でもね、だから普通は受け入れられないんだ」
「お姉ちゃんもそうだったけどね。普通は私たち家族だけ」
「あとは院長先生夫妻と栞ちゃんと六花ちゃんと響子ちゃんと鷹さんと御堂さんたちと蓮花さんたちと聖と早乙女さんたちとロックハート家と斬さんと千両さんとこと……」
「多いじゃないですか!」
二人が爆笑した。
「タカさんのお陰だよ。私たちだけじゃ、本当に少ない」
「学校でも浮いてるでしょ?」
「それはお二人が凄すぎるからで」
「凄くないよ」
「タカさんが凄いから、私たちも追いかけているだけ」
「それは……」
石神姉妹が笑っている。
「全部タカさんの上司と部下と恋人と親友と舎弟。私たちの友達じゃないの」
「でも、磯良は私たちを直接受け入れてくれた」
「あの……」
受け入れた覚えは無いが。
でも、言われるとそうなのだと分かった。
「「だから嬉しいの!」」
俺も笑った。
「そうですか。でも、御二人は変わってるかもしれないけど、魅力的ですよ?」
「あのさ」
「はい」
「悪いけど、私たちってタカさんのものだから」
「はい?」
「磯良、彼女は他を当たってくれる?」
「そういうことじゃ!」
石神姉妹が大笑いした。
からかわれたということか。
「胡蝶ってカワイイじゃん」
「もうヤってる?」
「それはないですよ」
「なんだー」
「オッパイも大きいじゃん!」
「なんですか、それ」
「向こうもその気なのにね」
「なに、我慢してるの?」
「やめて下さい!」
俺たちは楽しく話した。
石神姉妹は石神家でのいろいろなぶっ飛び事件を話してくれた。
俺は大笑いした。
「子どもの頃にね。タカさんが借りたフェラーリをぶっ壊したの」
「あれ、死ぬかと思ったよねー」
「タカさんの大事な絵を踏み潰してね」
「怖くなって家出しちゃった」
「ハーがバキュームカーを壊して全身にさ」
「うちのネコのロボがドミノやると踊るの! カワイイんだー!」
俺は笑いっぱなしだった。
石神家が如何に楽しく幸せなのかと分かった。
夜遅くまで三人で話した。
石神姉妹がそろそろ帰ると言った。
「磯良、タカさんに会いなよ」
最後にルーがそう言った。
「もうあんたは繋がっている。タカさんは磯良を本当の戦場からは離しておきたいと思ってるけど」
「でも、一度会っておいた方がいい」
俺は迷った。
裏社会で伝説の石神高虎に会ってみたい気持ちはあった。
「吉原龍子」
「え?」
「私たちは、あの人で繋がっている」
俺の決意は決まった。
俺は朝から食材の下ごしらえを始めていた。
今日は普段は作らない「牛すね肉のコンソメ」を作ろうとしている。
朝食後に肉屋に行き、挽き立ての牛のすね肉の挽肉を受け取る。
もちろん注文してあった。
この「牛すね肉のコンソメ」は、肉の新鮮度が最も重要だ。
急いで家に帰り、2ミリ厚のタマネギ、3ミリ厚のセロリとニンジン、ニンニクなどを加えて肉と一緒に鍋で卵白と共に練り込む。
水で戻したシイタケと昆布の汁とローリエや黒コショウなどを徐々に加えながら練り込む。
鍋に少しずつ水を足しながら、強火でS字を描くようにかき混ぜて行く。
沸騰が始まったら火加減を調節し、そのまま1時間煮込む。
俺はその段階で自分の昼食を作った。
簡単に蕎麦を茹でて買って来た天ぷらと一緒に食べた。
あとはステーキなどだから、安心だ。
スープの鍋が透き通って来る。
いい感じだ。
塩コショウで味を調整していく。
綿ネルでスープを濾す。
味見をして、俺の顔に自然と笑みが浮かんだ。
シャリアピンステーキの準備。
200gの牛肉を叩き薄くし、包丁の背で更に叩く。
タマネギのシャリアピン・ソースに漬けて冷蔵庫に入れる。
豚肉200gを下味をつけて、これも冷蔵庫に。
ご飯の準備もいい。
5時に石神姉妹が来る。
サラダも用意した。
付け合わせも大丈夫だ。
今は4時。
俺は一休みし、コーヒーを淹れた。
チャイムが鳴り、俺はオートロックを開けて石神姉妹を家に入れた。
「「こんにちはー!」」
笑顔で二人が入って来る。
色違いのルーズネックのセーターと膝上のベージュの混シルクのキュロットスカート。
それに白の薄手の革のジャケットを羽織っている。
相変わらずお洒落だ。
薄く化粧をしていて、物凄く美しい。
「今日はありがとうね!」
「楽しみにして来た!」
俺はリヴィングに案内し、テーブルに座ってもらった。
「四人掛けなんて久しぶり!」
「家庭的だね!」
「お二人の家は何人掛けなんですか?」
「14人かな」
「はぁ」
でかいテーブルのようだ。
「ダニエルで特注だって」
「思い出深いテーブルだよね」
「へぇー」
石神姉妹が石神氏に引き取られたことは知っている。
親友だった夫婦の子どもを、四人とも引き取ったそうだ。
俺はそのことだけで、石神氏を尊敬している。
「その前のね、テーブルもとってあるんだ」
「その前?」
「そう、タカさんに引き取られる前に使ってた4人掛けのテーブル。まあ、それを6人で座ってたんだけどね」
「もう使わないけどね。安いものだし。でもタカさんが絶対にとっておけって」
「思い出があるものなんだからって。うちはあんまし捨てない家だよね」
「タカさんの部屋って、なんか葉っぱとかもあるしね」
「最初のタンポン取っとけって言われた時は退いたね!」
「タカさん、寄越せって言ったもんね!」
「「ギャハハハハハ!」」
「アハハハハ」
取り敢えず一緒に笑った。
意味が分からない。
俺はステーキを焼く準備をした。
石神姉妹が見ている。
「あ! シャリアピンステーキだぁ!」
「あれ大好き!」
喜んでくれて良かった。
別なコンロでニース風カツレツも揚げる。
「なに! 二種類あるの!」
「磯良、頑張るじゃん!」
「ステーキはしょっちゅう食べてるとは思ったんだけど。やっぱり好きなのかなって」
「「うん!」」
俺はステーキと付け合わせを皿に盛って運んだ。
すぐに二人が立ち上がって手伝ってくれる。
「一番美味しいタイミングで食べよう!」
ルーがそう言い、俺も嬉しくなった。
カツレツも皿に乗せてキャベツをよそった。
ご飯を茶碗に入れ、スープカップに温めたコンソメスープを注いだ。
「うわ! これコンソメじゃん!」
「タカさんも滅多に作ってくれないよね!」
三人で食べ始めた。
「このコンソメ! フォン・ド・ボー?」
「ええ、牛のすね肉です」
「へぇー! 凄い美味しいよ!」
「良かったです」
「コンソメって、贅沢だよね」
「そうですね。今回もすね肉を2キロ使いました」
「「やったぁー!」」
何をやったのかは分からない。
二人はどの料理も美味しいと言ってくれた。
ご飯は最大の8合炊いたが、予想通り全て無くなった。
だが、それを予想していたかのように肉を食べ、スープを飲んで行った。
ご飯が無くなると同時に、他の料理も無くなった。
「あー、美味しかった!」
「磯良、ありがとう!」
「いいえ。喜んでもらえたら嬉しいです」
俺はデザートにシャーベットを出した。
コーヒーも淹れる。
石神姉妹が立ち上がって、頭を下げて来た。
「今日は本当にありがとう」
「私たちのために、こんなにしてくれて嬉しい」
俺は戸惑った。
こんなに丁寧に礼を言われるとは思わなかった。
「座って下さい! 素人のガキが作ったものですから」
「違うの。磯良が心を込めて私たちのために作ってくれたことが嬉しいの」
「本当に嬉しい。私たちがどれだけ嬉しいのかは、ちょっと分からないだろうけどね」
「そんな! お二人には命も助けてもらいましたし。こんなものでお礼なんて」
二人がニコニコして座った。
「私たちがやったのは、私たちにとっては簡単なことなの」
「心を込めて、なんてものじゃないから」
「まあ、お二人はお強いですからね」
「うん。だけど、磯良は私たちに心を込めてやってくれた」
「それがね、本当に嬉しい」
「そうですか」
何となくは分かる。
「私たちって、ちょっとだけ変わってるじゃん」
「ちょっとじゃない気も」
「アハハハハハ!」
「でもね、だから普通は受け入れられないんだ」
「お姉ちゃんもそうだったけどね。普通は私たち家族だけ」
「あとは院長先生夫妻と栞ちゃんと六花ちゃんと響子ちゃんと鷹さんと御堂さんたちと蓮花さんたちと聖と早乙女さんたちとロックハート家と斬さんと千両さんとこと……」
「多いじゃないですか!」
二人が爆笑した。
「タカさんのお陰だよ。私たちだけじゃ、本当に少ない」
「学校でも浮いてるでしょ?」
「それはお二人が凄すぎるからで」
「凄くないよ」
「タカさんが凄いから、私たちも追いかけているだけ」
「それは……」
石神姉妹が笑っている。
「全部タカさんの上司と部下と恋人と親友と舎弟。私たちの友達じゃないの」
「でも、磯良は私たちを直接受け入れてくれた」
「あの……」
受け入れた覚えは無いが。
でも、言われるとそうなのだと分かった。
「「だから嬉しいの!」」
俺も笑った。
「そうですか。でも、御二人は変わってるかもしれないけど、魅力的ですよ?」
「あのさ」
「はい」
「悪いけど、私たちってタカさんのものだから」
「はい?」
「磯良、彼女は他を当たってくれる?」
「そういうことじゃ!」
石神姉妹が大笑いした。
からかわれたということか。
「胡蝶ってカワイイじゃん」
「もうヤってる?」
「それはないですよ」
「なんだー」
「オッパイも大きいじゃん!」
「なんですか、それ」
「向こうもその気なのにね」
「なに、我慢してるの?」
「やめて下さい!」
俺たちは楽しく話した。
石神姉妹は石神家でのいろいろなぶっ飛び事件を話してくれた。
俺は大笑いした。
「子どもの頃にね。タカさんが借りたフェラーリをぶっ壊したの」
「あれ、死ぬかと思ったよねー」
「タカさんの大事な絵を踏み潰してね」
「怖くなって家出しちゃった」
「ハーがバキュームカーを壊して全身にさ」
「うちのネコのロボがドミノやると踊るの! カワイイんだー!」
俺は笑いっぱなしだった。
石神家が如何に楽しく幸せなのかと分かった。
夜遅くまで三人で話した。
石神姉妹がそろそろ帰ると言った。
「磯良、タカさんに会いなよ」
最後にルーがそう言った。
「もうあんたは繋がっている。タカさんは磯良を本当の戦場からは離しておきたいと思ってるけど」
「でも、一度会っておいた方がいい」
俺は迷った。
裏社会で伝説の石神高虎に会ってみたい気持ちはあった。
「吉原龍子」
「え?」
「私たちは、あの人で繋がっている」
俺の決意は決まった。
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