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横須賀 ブラッドバス Ⅱ
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妖魔を満載していた豪華客船は、米軍の横須賀海軍基地から上陸を始めたらしい。
恐らくは、最も火力のある米海軍を最初に叩き、侵攻を拡大したいのだろう。
突如現われた大量の妖魔の攻撃に、米海軍は混乱した。
しかし、俺たちが現着した時には反攻を始めていた。
それでも市街にも流れ込んだ妖魔たちが、一般市民の虐殺を始めている。
既に泊町の建物の多くが半壊し、市民の遺体が散乱している。
楠ヶ浦町にも被害は拡大しているようだった。
「早乙女さん! 上空からの観測では、一旦横須賀学院高校の運動場に着陸し、ハンターを展開することを進言します!」
「よし、採用する。着陸を急いでくれ」
「了解!」
成瀬さんが作戦立案し、早乙女さんが了承した。
俺たちは地図を前に、作戦を説明された。
「磯良と早霧で米海軍基地に突入してくれ」
「米海軍からの邪魔はありませんかね」
「通達は間に合わない。こちらから「アドヴェロス」の突入は連絡するが、恐らくあの混乱では全員には伝わらないだろう。現地で対応してくれ」
「「はい!」」
「十河さんは機内で待機。愛鈴と葛葉は俺と一緒に市街地だ」
「「「はい!」」」
キング・スタリオンが着陸し、俺たちを降ろした後はまたすぐに上昇する。
インカムに成瀬さんの声が入った。
「猿島にアンノウン! これまで知られていないタイプの妖魔です!」
嫌な予感がした。
この時間は観光客はいるかもしれないが、制覇した後の侵攻ルートがない。
海洋を進むタイプだとしても、猿島の攻略よりも、市街地に入った方が遙かに有効だ。
ならば、遠距離攻撃タイプの可能性がある。
これまで、そのような妖魔は存在を確認されていない。
「早乙女さん! 俺に行かせて下さい!」
俺が要請した。
一拍置いて、早乙女さんから了承の指示があった。
「成瀬! 磯良を乗せて猿島へ向かえ!」
「はい!」
キング・スタリオンがまた戻って来て、俺をピックアップする。
「早霧さんの突入を待たせて下さい!」
「分かった!」
早乙女さんはすぐに作戦を変更し、四人で市街地を進みながら米海軍基地を目指すことにした。
猿島に近づくと、先端の砲台近くに見たことも無い、ピラミッドを細長く伸ばしたような身体が見えた。
俺は猿島公園の端にラペリングで降下した。
その時、アンノウンの上端から巨大な光が迸った。
米海軍基地に照射される。
これだけ離れていても何かが爆発する轟音が聞こえ、一瞬で基地の殆どの建築物が崩壊していた。
「!」
やはり遠距離攻撃タイプだった。
しかも相当強力な攻撃力だ。
俺は駆け寄って斬り裂いて沈黙させた。
体長20メートルの高さがあり、上端に巨大な眼球のようなものがあった。
そこから熱線のようなものを発射したようだ。
俺はキング・スタリオンに回収され、すぐに早乙女さんたちと合流した。
アンノウンの攻撃の前に、基地から妖魔たちは出ていたようだった。
米海軍基地では、生存者はほとんどいないだろう。
俺たちは5人で展開しながら進んだ。
愛鈴さんは全身の60%を妖魔化し、小型の妖魔を次々に狩って行く。
葛葉さんの能力は「爆裂拳」だ。
拳が触れたものを爆破することが出来る。
中型の妖魔にも有効なので、オーガタイプも一撃で撃破出来る。
奥に進むにつれ、惨状がきつくなってきた。
「「快楽破壊(lust Murder)」タイプだな」
妖魔の攻撃のパターンだが、通常の戦略タイプは目的の拠点破壊などを行なうものだ。
それに対して快楽破壊タイプは、妖魔の欲望を解放させるもので、作戦目標よりも残虐な殺人を優先させる。
人間に恐怖心を植え付けるためのものだと言われるが、この大規模な侵攻でそのタイプが使われることはこれまで無かった。
「既に数が揃ったということですかね」
俺が早乙女さんに聞いた。
侵攻作戦に必要な軍団の数が揃ったので、このような非効率的な心理作戦を実行できるのかということだ。
「分からん。まだその結論は早計だよ」
「はい」
しかし、北からこれだけ準備された侵攻作戦が、破壊目標を持たないというのはおかしい。
米海軍基地が目標だったとすれば、先ほどの遠距離攻撃タイプが出張ればいいだけだ。
俺たちの前では、引き裂かれ蹂躙された市民の遺体が転がっている。
道路は歩道も含めて血まみれで、人体の一部や内臓が溢れていた。
ビルの入り口から川のように血が流れ出している場所もある。
俺たちは目の前のビルに登って妖魔を片付けながら進んだ。
先に行くほど被害は濃厚で、遅々として進まなかった。
「前方1時方向! レベル5のキング・オーガです!」
GPSとレーダーで監視している成瀬さんから通信が入った。
全員で身構える。
「アンノウンの飛行体接近! 2体です!」
「それは構うな! 味方だ!」
早乙女さんが叫んだ。
同時に、ビルの陰からオーガの集団とキング・オーガと思われる巨体のオーガが現われた。
愛鈴さんと早霧さんが突入する。
しかし、キング・オーガから放たれた電撃が、愛鈴さんを襲った。
吹っ飛ばされる。
早霧さんが即座に愛鈴さんを抱えて戻って来た。
「あれは不味いぜ」
「俺が出ますよ」
「待て! 左方向からバジリスクタイプだ。磯良はそっちを迎撃しろ!」
「でも、それじゃ目の前の」
「行け!」
「はい!」
早乙女さんの迷いの無い指示に従った。
オーガの集団に眩い光が撃ち込まれた。
確認したかったが、自分の任務に走った。
バジリスクタイプは、既に有毒ガスを拡げていた。
俺は即座に斬り裂いたが、残ったガスは手が出ない。
「後ろへ下がって!」
女性が叫んでいた。
「おい!」
襟を掴まれ、後ろへ放り投げられた。
50mも飛ばされる。
前方に俺を投げた女性の背中が見えた。
タイガーストライプのバトルスーツ。
長いストレートの髪。
その女性は両手を前に掲げた。
突然前方に激しい電光が迸り、竜巻が起きた。
その竜巻からも電光が出て、次第に白く光って行く。
俺は地面にぶつかり、そのまま抵抗せずに転がった。
怪我はない。
女性が駆け寄って来た。
一瞬で目の前にいた。
「磯良、大丈夫?」
「ルーさん!」
石神姉妹のルーだった。
「ごめんね。あいつのガスを吸うと厄介だからさ。無茶したかな」
「いいえ、助かりました」
「ガスをプラズマの高温で焼成したから。もう無害なはずよ」
「え!」
「あたしらが来たら、もう安心して。ハーが今もオーガをぶっちめて他のカスを漁ってるから」
「はぁ」
俺は出された手を握り、立たされた。
「あんたもヤルんでしょ? さあ、急ごう」
「はい」
早乙女さんと合流した。
「ルーちゃん、ありがとう」
「いいえ。でも、相当拡がっちゃいましたね」
「うん。掃討戦はちょっと大変かな」
「掃討戦?」
早霧さんが驚いた。
まだ10%も斃していない。
しかし、そうしている間にも次々と轟音が響き、それがどんどん移動して行く。
「あ! 私もタカさんに褒められるんだからぁー!」
ルーが叫んだ。
「ほら、磯良! あんたも早く!」
「は、はい!」
早乙女さんが笑って行けと言っていた。
ルーが拳を両側に一閃させた。
ビルが一直線に倒壊する。
「そこが防衛線ね! 突破してきたらよろしくぅー!」
早乙女さんたちに叫んだ。
早乙女さんは手を振って応えている。
ルーと一緒に走った。
「あれが「花岡」ですか」
「まーねー。さあ、あんたはどっちに行く?」
「じゃあ、左に」
「私は前ね! ハーは右だから。ああ、ハーはすぐに折り返して来るよ」
「分かりました」
物凄い速度で殲滅して来るということなのだろう。
俺は左の妖魔を斬っていった。
スーパー・トロールがいた。
俺は頭頂から斬り刻み、1メートルほどのブロックにして崩した。
あれが倒れるだけで甚大な被害になるためだ。
周辺に強烈な悪臭が漂う。
成瀬さんから通信が入った。
「横須賀米海軍基地に妖魔反応! 相当大きい! 注意を!」
既に米海軍基地は崩壊したはずだ。
そこにどうして妖魔が?
それにあの遠距離攻撃タイプの強烈な熱線を浴びているはずだった。
俺は左翼の妖魔の殲滅を急いだ。
恐らくは、最も火力のある米海軍を最初に叩き、侵攻を拡大したいのだろう。
突如現われた大量の妖魔の攻撃に、米海軍は混乱した。
しかし、俺たちが現着した時には反攻を始めていた。
それでも市街にも流れ込んだ妖魔たちが、一般市民の虐殺を始めている。
既に泊町の建物の多くが半壊し、市民の遺体が散乱している。
楠ヶ浦町にも被害は拡大しているようだった。
「早乙女さん! 上空からの観測では、一旦横須賀学院高校の運動場に着陸し、ハンターを展開することを進言します!」
「よし、採用する。着陸を急いでくれ」
「了解!」
成瀬さんが作戦立案し、早乙女さんが了承した。
俺たちは地図を前に、作戦を説明された。
「磯良と早霧で米海軍基地に突入してくれ」
「米海軍からの邪魔はありませんかね」
「通達は間に合わない。こちらから「アドヴェロス」の突入は連絡するが、恐らくあの混乱では全員には伝わらないだろう。現地で対応してくれ」
「「はい!」」
「十河さんは機内で待機。愛鈴と葛葉は俺と一緒に市街地だ」
「「「はい!」」」
キング・スタリオンが着陸し、俺たちを降ろした後はまたすぐに上昇する。
インカムに成瀬さんの声が入った。
「猿島にアンノウン! これまで知られていないタイプの妖魔です!」
嫌な予感がした。
この時間は観光客はいるかもしれないが、制覇した後の侵攻ルートがない。
海洋を進むタイプだとしても、猿島の攻略よりも、市街地に入った方が遙かに有効だ。
ならば、遠距離攻撃タイプの可能性がある。
これまで、そのような妖魔は存在を確認されていない。
「早乙女さん! 俺に行かせて下さい!」
俺が要請した。
一拍置いて、早乙女さんから了承の指示があった。
「成瀬! 磯良を乗せて猿島へ向かえ!」
「はい!」
キング・スタリオンがまた戻って来て、俺をピックアップする。
「早霧さんの突入を待たせて下さい!」
「分かった!」
早乙女さんはすぐに作戦を変更し、四人で市街地を進みながら米海軍基地を目指すことにした。
猿島に近づくと、先端の砲台近くに見たことも無い、ピラミッドを細長く伸ばしたような身体が見えた。
俺は猿島公園の端にラペリングで降下した。
その時、アンノウンの上端から巨大な光が迸った。
米海軍基地に照射される。
これだけ離れていても何かが爆発する轟音が聞こえ、一瞬で基地の殆どの建築物が崩壊していた。
「!」
やはり遠距離攻撃タイプだった。
しかも相当強力な攻撃力だ。
俺は駆け寄って斬り裂いて沈黙させた。
体長20メートルの高さがあり、上端に巨大な眼球のようなものがあった。
そこから熱線のようなものを発射したようだ。
俺はキング・スタリオンに回収され、すぐに早乙女さんたちと合流した。
アンノウンの攻撃の前に、基地から妖魔たちは出ていたようだった。
米海軍基地では、生存者はほとんどいないだろう。
俺たちは5人で展開しながら進んだ。
愛鈴さんは全身の60%を妖魔化し、小型の妖魔を次々に狩って行く。
葛葉さんの能力は「爆裂拳」だ。
拳が触れたものを爆破することが出来る。
中型の妖魔にも有効なので、オーガタイプも一撃で撃破出来る。
奥に進むにつれ、惨状がきつくなってきた。
「「快楽破壊(lust Murder)」タイプだな」
妖魔の攻撃のパターンだが、通常の戦略タイプは目的の拠点破壊などを行なうものだ。
それに対して快楽破壊タイプは、妖魔の欲望を解放させるもので、作戦目標よりも残虐な殺人を優先させる。
人間に恐怖心を植え付けるためのものだと言われるが、この大規模な侵攻でそのタイプが使われることはこれまで無かった。
「既に数が揃ったということですかね」
俺が早乙女さんに聞いた。
侵攻作戦に必要な軍団の数が揃ったので、このような非効率的な心理作戦を実行できるのかということだ。
「分からん。まだその結論は早計だよ」
「はい」
しかし、北からこれだけ準備された侵攻作戦が、破壊目標を持たないというのはおかしい。
米海軍基地が目標だったとすれば、先ほどの遠距離攻撃タイプが出張ればいいだけだ。
俺たちの前では、引き裂かれ蹂躙された市民の遺体が転がっている。
道路は歩道も含めて血まみれで、人体の一部や内臓が溢れていた。
ビルの入り口から川のように血が流れ出している場所もある。
俺たちは目の前のビルに登って妖魔を片付けながら進んだ。
先に行くほど被害は濃厚で、遅々として進まなかった。
「前方1時方向! レベル5のキング・オーガです!」
GPSとレーダーで監視している成瀬さんから通信が入った。
全員で身構える。
「アンノウンの飛行体接近! 2体です!」
「それは構うな! 味方だ!」
早乙女さんが叫んだ。
同時に、ビルの陰からオーガの集団とキング・オーガと思われる巨体のオーガが現われた。
愛鈴さんと早霧さんが突入する。
しかし、キング・オーガから放たれた電撃が、愛鈴さんを襲った。
吹っ飛ばされる。
早霧さんが即座に愛鈴さんを抱えて戻って来た。
「あれは不味いぜ」
「俺が出ますよ」
「待て! 左方向からバジリスクタイプだ。磯良はそっちを迎撃しろ!」
「でも、それじゃ目の前の」
「行け!」
「はい!」
早乙女さんの迷いの無い指示に従った。
オーガの集団に眩い光が撃ち込まれた。
確認したかったが、自分の任務に走った。
バジリスクタイプは、既に有毒ガスを拡げていた。
俺は即座に斬り裂いたが、残ったガスは手が出ない。
「後ろへ下がって!」
女性が叫んでいた。
「おい!」
襟を掴まれ、後ろへ放り投げられた。
50mも飛ばされる。
前方に俺を投げた女性の背中が見えた。
タイガーストライプのバトルスーツ。
長いストレートの髪。
その女性は両手を前に掲げた。
突然前方に激しい電光が迸り、竜巻が起きた。
その竜巻からも電光が出て、次第に白く光って行く。
俺は地面にぶつかり、そのまま抵抗せずに転がった。
怪我はない。
女性が駆け寄って来た。
一瞬で目の前にいた。
「磯良、大丈夫?」
「ルーさん!」
石神姉妹のルーだった。
「ごめんね。あいつのガスを吸うと厄介だからさ。無茶したかな」
「いいえ、助かりました」
「ガスをプラズマの高温で焼成したから。もう無害なはずよ」
「え!」
「あたしらが来たら、もう安心して。ハーが今もオーガをぶっちめて他のカスを漁ってるから」
「はぁ」
俺は出された手を握り、立たされた。
「あんたもヤルんでしょ? さあ、急ごう」
「はい」
早乙女さんと合流した。
「ルーちゃん、ありがとう」
「いいえ。でも、相当拡がっちゃいましたね」
「うん。掃討戦はちょっと大変かな」
「掃討戦?」
早霧さんが驚いた。
まだ10%も斃していない。
しかし、そうしている間にも次々と轟音が響き、それがどんどん移動して行く。
「あ! 私もタカさんに褒められるんだからぁー!」
ルーが叫んだ。
「ほら、磯良! あんたも早く!」
「は、はい!」
早乙女さんが笑って行けと言っていた。
ルーが拳を両側に一閃させた。
ビルが一直線に倒壊する。
「そこが防衛線ね! 突破してきたらよろしくぅー!」
早乙女さんたちに叫んだ。
早乙女さんは手を振って応えている。
ルーと一緒に走った。
「あれが「花岡」ですか」
「まーねー。さあ、あんたはどっちに行く?」
「じゃあ、左に」
「私は前ね! ハーは右だから。ああ、ハーはすぐに折り返して来るよ」
「分かりました」
物凄い速度で殲滅して来るということなのだろう。
俺は左の妖魔を斬っていった。
スーパー・トロールがいた。
俺は頭頂から斬り刻み、1メートルほどのブロックにして崩した。
あれが倒れるだけで甚大な被害になるためだ。
周辺に強烈な悪臭が漂う。
成瀬さんから通信が入った。
「横須賀米海軍基地に妖魔反応! 相当大きい! 注意を!」
既に米海軍基地は崩壊したはずだ。
そこにどうして妖魔が?
それにあの遠距離攻撃タイプの強烈な熱線を浴びているはずだった。
俺は左翼の妖魔の殲滅を急いだ。
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第七章 リュービ会長編
第八章 最終章
作者のtwitterアカウント↓
https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09
※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。
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