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高島平の戦闘
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「ミート・デビル」で豪華な、なんだろう、「おやつ」(?)を食べた翌日の夕方。
早乙女さんから連絡が来た。
「早乙女さん!」
「磯良、変わりはないか?」
「はい! 仕事ですか?」
「そうなんだ。今から出れるか?」
「もちろんです! 場所は」
「板橋の防災備蓄倉庫だ。あそこにはガスタンクがある」
「なるほど」
俺は準備をしながら電話を続けていた。
「場所が場所だけに、都知事が自衛隊の出動も要請した」
「じゃあ、南原さんたちの」
「ああ、「特防(対特殊生物防衛隊)」が出て来る」
「そうですか」
南原さんたち「特防」とは何度か一緒に動いたことがある。
妖魔との戦闘に特化した部隊で、「カサンドラ」という特殊兵装で戦う。
過酷な訓練をこなしているだけあって、動きはいい。
特殊能力こそないが、十分に妖魔との戦闘が出来る、俺たちを除けば日本で唯一の組織だ。
「今回も共同作戦ですか?」
「いや、「特防」の武器は、あそこでは使いにくい。万一敵が逃げた場合には当てにするが、基本は磯良だ。でも、間違ってもガスタンクには当てないでくれ」
「分かりました」
俺は思ったものだけを「斬る」力がある。
早乙女さんも分かっているから、念のためだろう。
兵器はそうは行かない。
俺はハーレーに跨り、出発した。
高速を走っている間に、早乙女さんから何度か状況を伝える連絡が入った。
インカムで応答し、俺も把握していく。
自衛隊の「特防」は新河岸川の対岸にある野球場に集まったそうだ。
俺の到着前に、周囲に展開するとのことだった。
早乙女さんもそこにいる。
隊長の南原一佐と連携を始めた。
うちの、妖魔収容部隊も間もなく到着する。
俺も高島平で高速を降り、早乙女さんにもうすぐ現着することを知らせた。
その時、殺気を感じた。
俺は高速で飛翔する弾丸を斬りながら、近くの建物の入り口に入る。
撃って来た奴はマンションの屋上からだ。
俺の姿を見失い、もう撃っては来れない。
早乙女さんに襲撃を知らせた。
「大丈夫か、磯良!」
「はい。今、〇〇コーポの一階に入りました。射手からは見えないはずです」
「すぐに向かう!」
その時、数台の車が前に停まった。
窓を開け、銃口が飛び出した。
俺は建物の奥へ移動する。
階段を上がると、激しい銃声が聞こえた。
銃声が移動するので、車から人間が降りたことを感じた。
俺は移動を辞めた。
これ以上動けば、住民に被害が出る可能性が高まる。
俺が逃げた階段に回り込んで来た連中を始末していった。
「磯良ぁー!」
早乙女さんの叫び声が聞こえた。
次の瞬間、巨大な銃声と遅れて爆発音。
早乙女さんが対物ライフルⅯ82で車を撃ったのだろう。
あの人は時々無茶なことをやる。
俺を守るためだろう。
男たちの叫び声が聞こえる。
別なライフルの銃声なので、多分南原さんたちの部隊だ。
わざわざ俺の救出に来てくれた。
数分で戦闘は終わった。
早乙女さんが駈け込んでくる。
やはり、長大なM82を抱えていた。
「磯良! 大丈夫か!」
「はい。お陰で助かりました」
後から見知った顔の自衛官が来た。
「南原さん!」
「よう。君が襲われてるって聞いて、飛んで来たよ」
「すみません」
俺たちは歩いて移動した。
道すがら話す。
「「太陽界」じゃないよなぁ」
南原さんが襲撃者の遺体を見て言った。
「ヤクザのようですね」
「どこのだ?」
「これから調べますよ」
遺体の腕に、刺青が見えている。
改めて野球場に着いた。
早乙女さん、俺、南原一佐、副官の早瀬三佐の四人でブリーフィングする。
「敵は二体だ。カニタイプだ」
「じゃあ、銃弾を跳ね返す可能性があるんですね」
「そうだ。爪でタンクに穴を空けることも出来るだろう」
「引火はどのように?」
「既にキャンプ用のコンロを炊いている。穴を空ければ終わりだ」
「自分たちも死にますよね?」
「それを命令できる奴がいるということだ」
早乙女さんの言葉に、他の三人が戦慄した。
「怪物化して生存本能が極大になった連中を自決させるほどの奴だ。以前にもいた」
「どんな奴です?」
「巨大な黒い犬のような奴だった。数十の妖魔を操って原発施設を襲ってきた」
「それはどのように対処したんですか?」
「その時は強力な補佐がいたんだ。二人な。その二人が全て解決した。犬の怪物もな」
「今回も、近くにいるんでしょうか」
「分からん。でも「便利屋」は何も感じないと言っている。多分、遠隔操作ではなく、「命令」なんだろうな」
それまで黙って聞いていた南原さんが言った。
「早乙女さん。何だか嫌な予感がするよ」
副官の早瀬さんも頷いている。
「そうですね。罠の臭いがしますね」
「俺たちの殲滅か」
「はい。もう遅いかもしれません」
「どうする?」
「自衛隊の方々は離れて下さい」
「そうはいかんさ。兄さんに叱られちゃうよ」
「アハハハハ」
俺には分からないが、三人が笑っていた。
「いざとなったら俺が」
「頼みます」
早乙女さんと俺は、徳丸橋を渡った。
「早乙女さん、俺一人でいいですよ」
「大丈夫だ。あのタイプは近接戦しか出来ない」
「でも」
「俺に任せろ」
「はぁ」
まだ妖魔は視認出来ない。
俺の攻撃が出来ないということだ。
徳丸橋を渡り切った。
俺と早乙女さんは一気に距離を詰める。
その時、金属を破る音が聞こえた。
「モハメドさん!」
早乙女さんが叫んだ。
真ん中のタンクが爆発した。
俺は迫りくる炎と金属の塊を夢中で斬った。
早乙女さんを守り切る自信はあったが、後ろにいる南原さんたちの部隊は無理だ。
左右のタンクに誘爆すれば、自分も危ない。
それが突然「終わった」。
「!」
俺の目の前には大破したガスタンクの破片が散らばっていた。
俺の目の前3メートルにも、大きな破片が落ちている。
焼け焦げた痕も、そこで止まっていた。
激しい風が吹いている。
土ぼこりが舞う中、俺は早乙女さんの無事を確認した。
早乙女さんの首筋に黒い小さな何かが見えた。
土ぼこりに瞬きをしてもう一度見ると、もう見えなくなっていた。
「ありがとうございました」
早乙女さんが小さく呟く声が聞こえた。
三体の妖魔は炎に焦がされて死んでいた。
ガスタンクの周辺50メートルには甚大な被害が出ていた。
しかし、高熱の炎はそこで止まり、その異常な被害状況は妖魔事件の超常現象として片付けられた。
早乙女さんから連絡が来た。
「早乙女さん!」
「磯良、変わりはないか?」
「はい! 仕事ですか?」
「そうなんだ。今から出れるか?」
「もちろんです! 場所は」
「板橋の防災備蓄倉庫だ。あそこにはガスタンクがある」
「なるほど」
俺は準備をしながら電話を続けていた。
「場所が場所だけに、都知事が自衛隊の出動も要請した」
「じゃあ、南原さんたちの」
「ああ、「特防(対特殊生物防衛隊)」が出て来る」
「そうですか」
南原さんたち「特防」とは何度か一緒に動いたことがある。
妖魔との戦闘に特化した部隊で、「カサンドラ」という特殊兵装で戦う。
過酷な訓練をこなしているだけあって、動きはいい。
特殊能力こそないが、十分に妖魔との戦闘が出来る、俺たちを除けば日本で唯一の組織だ。
「今回も共同作戦ですか?」
「いや、「特防」の武器は、あそこでは使いにくい。万一敵が逃げた場合には当てにするが、基本は磯良だ。でも、間違ってもガスタンクには当てないでくれ」
「分かりました」
俺は思ったものだけを「斬る」力がある。
早乙女さんも分かっているから、念のためだろう。
兵器はそうは行かない。
俺はハーレーに跨り、出発した。
高速を走っている間に、早乙女さんから何度か状況を伝える連絡が入った。
インカムで応答し、俺も把握していく。
自衛隊の「特防」は新河岸川の対岸にある野球場に集まったそうだ。
俺の到着前に、周囲に展開するとのことだった。
早乙女さんもそこにいる。
隊長の南原一佐と連携を始めた。
うちの、妖魔収容部隊も間もなく到着する。
俺も高島平で高速を降り、早乙女さんにもうすぐ現着することを知らせた。
その時、殺気を感じた。
俺は高速で飛翔する弾丸を斬りながら、近くの建物の入り口に入る。
撃って来た奴はマンションの屋上からだ。
俺の姿を見失い、もう撃っては来れない。
早乙女さんに襲撃を知らせた。
「大丈夫か、磯良!」
「はい。今、〇〇コーポの一階に入りました。射手からは見えないはずです」
「すぐに向かう!」
その時、数台の車が前に停まった。
窓を開け、銃口が飛び出した。
俺は建物の奥へ移動する。
階段を上がると、激しい銃声が聞こえた。
銃声が移動するので、車から人間が降りたことを感じた。
俺は移動を辞めた。
これ以上動けば、住民に被害が出る可能性が高まる。
俺が逃げた階段に回り込んで来た連中を始末していった。
「磯良ぁー!」
早乙女さんの叫び声が聞こえた。
次の瞬間、巨大な銃声と遅れて爆発音。
早乙女さんが対物ライフルⅯ82で車を撃ったのだろう。
あの人は時々無茶なことをやる。
俺を守るためだろう。
男たちの叫び声が聞こえる。
別なライフルの銃声なので、多分南原さんたちの部隊だ。
わざわざ俺の救出に来てくれた。
数分で戦闘は終わった。
早乙女さんが駈け込んでくる。
やはり、長大なM82を抱えていた。
「磯良! 大丈夫か!」
「はい。お陰で助かりました」
後から見知った顔の自衛官が来た。
「南原さん!」
「よう。君が襲われてるって聞いて、飛んで来たよ」
「すみません」
俺たちは歩いて移動した。
道すがら話す。
「「太陽界」じゃないよなぁ」
南原さんが襲撃者の遺体を見て言った。
「ヤクザのようですね」
「どこのだ?」
「これから調べますよ」
遺体の腕に、刺青が見えている。
改めて野球場に着いた。
早乙女さん、俺、南原一佐、副官の早瀬三佐の四人でブリーフィングする。
「敵は二体だ。カニタイプだ」
「じゃあ、銃弾を跳ね返す可能性があるんですね」
「そうだ。爪でタンクに穴を空けることも出来るだろう」
「引火はどのように?」
「既にキャンプ用のコンロを炊いている。穴を空ければ終わりだ」
「自分たちも死にますよね?」
「それを命令できる奴がいるということだ」
早乙女さんの言葉に、他の三人が戦慄した。
「怪物化して生存本能が極大になった連中を自決させるほどの奴だ。以前にもいた」
「どんな奴です?」
「巨大な黒い犬のような奴だった。数十の妖魔を操って原発施設を襲ってきた」
「それはどのように対処したんですか?」
「その時は強力な補佐がいたんだ。二人な。その二人が全て解決した。犬の怪物もな」
「今回も、近くにいるんでしょうか」
「分からん。でも「便利屋」は何も感じないと言っている。多分、遠隔操作ではなく、「命令」なんだろうな」
それまで黙って聞いていた南原さんが言った。
「早乙女さん。何だか嫌な予感がするよ」
副官の早瀬さんも頷いている。
「そうですね。罠の臭いがしますね」
「俺たちの殲滅か」
「はい。もう遅いかもしれません」
「どうする?」
「自衛隊の方々は離れて下さい」
「そうはいかんさ。兄さんに叱られちゃうよ」
「アハハハハ」
俺には分からないが、三人が笑っていた。
「いざとなったら俺が」
「頼みます」
早乙女さんと俺は、徳丸橋を渡った。
「早乙女さん、俺一人でいいですよ」
「大丈夫だ。あのタイプは近接戦しか出来ない」
「でも」
「俺に任せろ」
「はぁ」
まだ妖魔は視認出来ない。
俺の攻撃が出来ないということだ。
徳丸橋を渡り切った。
俺と早乙女さんは一気に距離を詰める。
その時、金属を破る音が聞こえた。
「モハメドさん!」
早乙女さんが叫んだ。
真ん中のタンクが爆発した。
俺は迫りくる炎と金属の塊を夢中で斬った。
早乙女さんを守り切る自信はあったが、後ろにいる南原さんたちの部隊は無理だ。
左右のタンクに誘爆すれば、自分も危ない。
それが突然「終わった」。
「!」
俺の目の前には大破したガスタンクの破片が散らばっていた。
俺の目の前3メートルにも、大きな破片が落ちている。
焼け焦げた痕も、そこで止まっていた。
激しい風が吹いている。
土ぼこりが舞う中、俺は早乙女さんの無事を確認した。
早乙女さんの首筋に黒い小さな何かが見えた。
土ぼこりに瞬きをしてもう一度見ると、もう見えなくなっていた。
「ありがとうございました」
早乙女さんが小さく呟く声が聞こえた。
三体の妖魔は炎に焦がされて死んでいた。
ガスタンクの周辺50メートルには甚大な被害が出ていた。
しかし、高熱の炎はそこで止まり、その異常な被害状況は妖魔事件の超常現象として片付けられた。
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